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彼女はくノ一! 第五話 (172)

第五話 混戦! 乱戦! バレンタイン!!(172)

「……カニだって? まかせろ! カニ料理の精髄をみせてやる!」
 とかいって、三島百合香が駆け込んでくる。
 香也が帰宅して、一緒にいた樋口明日樹も誘われる。
 玉木玉美、徳川篤朗、徳川浅黄が、タクシーに同乗して来る来る。
 少し遅れて、自転車で孫子とテンが帰宅する。
 バイトから、羽生譲が帰って来る……。
 最後に、飯島舞花、栗田精一を伴って、荒野がくる。
 四人組は次々とやってくる初対面な人々に忙しく挨拶をしている気配がしたが、三島とともに台所にこもっていた楓には、詳しい様子は伺えない。

 いつもの通り、といえばその通りだが、これだけの人数が揃うと、がやがやと話し声が賑やかすぎて、いっそ煩いほどだ。
 台所に立っている楓に聞こえる範囲では、孫子がしきり「事業が……」といっている。玉木と羽生が、「商店街の空店舗を……」とか、話し合っている。徳川とテン、ガク、茅は、専門用語を交えてなにやら難しい話をしている。集合とか無限とか収束とかパターン認識とかの単語が乱れて飛んでいる。おそらく、プログラムのこと、というよりは、なにやら抽象数学方面の議論なのではないか……と、楓は推測する。荒野は、意外に声を発しない。時折、四人組に声をかけられて、それに答えるぐらいだった。香也は、居間にはいるようだが、全然声が聞こえない。ひょっとしたら例によってスケッチブックを広げているのかも知れないし、ぼーっと他のみんなを眺めているだけかもしれない……。
「……ねぇ……」
 楓と一緒に三島の手伝いをしてた樋口明日樹が、声を潜めて楓に声をかけてきた。
「あの人たち……やっぱり加納君関係の?」
「……ええ。そう、聞いています」
 明日樹にすれば……荒野や自分は、平穏な日常の割り込んで来た異分子だ。明日樹が、楓や荒野のことを目の敵にしている、ということはないが……それどころか、いろいろと親切にされている、とは思うが……時折、明日樹は、何かの拍子に、自分たちに対する警戒心を露にする。
 そして、そのような時、明日樹が確認をしてくるのは……比較的話しかけ易い、楓であることが多い。
「……そう……」
 明日樹は、頷いた。
 どこか、達観したような表情だった。
「あの……加納様は、もっと大勢の人達が、こっちに来るようなこと、いってましたけど……」
 いおうかいうまいか、少し迷ったが……結局、楓は、明日樹にそう告げた。
 隠し立てしてもいずれ知れることだし、だとすれば、できるだけショックを和らげるように、したほうがいい……。
「……なんで? こんな、何にもない所に?」
 明日樹は、軽く眉を顰める。
 不服……というよりは、「不審」なのだろう。
「加納様と、それに、茅様や、テンちゃんたちがいるからです」
 楓は、一気にそういいきる。
「一族の人達にとっても……今の状況は、かなり珍しくて、興味深いようで……手が空いている人達が、こぞって見物に来る、みたいな流れになっちゃって……」
「……って、ことは……何十人も、来るの?」
「現在、リストアップされている人達だけで、百名前後と聞いています……」
 楓は、荒野に聞かされた情報をそのまま告げた。
 それを聞いた明日樹は、数秒凍りついて、太いため息をついた。
 ちょうど、居間から、荒野が新参の四人に向かって「問題を起こすな」と注意している声が、聞こえて来る。
「まあ……いいけど……。
 あの分では、加納君が、悪い人はどうにかするんだろうし……」
 楓も……これからやってくる一族の関係者全てが、善良だったり扱い易い者ばかり……という幻想は、抱いていない。
「……ええ。
 悪い人が来たら……わたしたちが、責任をもってなんとかします……」
 ただし……荒野も、そうなのであろうが……周囲の住人に迷惑をかけるような者がやってきた場合は、体を張ってでも、それを止めるつもりだった。
「……そう……なんだよね……」
 楓の言葉に、樋口明日樹は、頷く。
「楓ちゃんにせよ、加納君にせよ……そういう人だとは、分かっているんだけど……」
 ……だけど……本当にそれだけ、で……事故や不祥事が、全て、避けられるものなのだろうか……と、いう続きの言葉は、樋口明日樹は、口には出さなかった。

「……しゃぶしゃぶに、テンプラに、もちろん、茹でカニ! さらに、茶わん蒸し、酒蒸しに、みそ汁!
 ……他にもいろいろあるぞ!
 遠慮なく食え、ガキども……」
 三島百合香の号令が響き渡ると、「いただきまーす!」の声ととともに、争奪戦がはじまる。
 しばらくは、みな、無言で食事を続けた。
 ……カニは、ヒトを無口にする。
「……そういや、センセ。こういう人達が、今後、どっかどっか来るんだってな……」
 しばらくして、三島にそう声をかけたのは、羽生だった。さすがに年長者だけあって、他の大半の連中よりもがっついていない。
「その話は、少しだけ荒野に聞いたけど……」
 三島は、自分の椀を啜る合間に、答えた。
「荒野の話しによると、一族といってもピンキリだからなぁ……。
 大半は、無害なやじ馬連中だと聞いているぞ……」
「……大半は、そうなんだけど……」
 荒野は、もぞもぞと身じろぎをした。
「……若干……扱いが難しい要注意人物とか……それよりもっと、遥かに危ないのも、混ざっている……。
 なんか、現場に出せない連中を片っ端からこっちに送って来たような具合で……」
「……危ないの、だって?」
 三島が、椀を置いて顔を上げた。
「もっと具体的に話しておけ……今のうちに……」
 荒野は、うつむいて、ため息をついた。
 あまり進んで話したくはない……というのが、態度から、まるわかりだった。
「危ないの……というのは、病的なサディストだったり、もっとひどいのだと、殺人狂だったり……。
 一族には、その手の人材も需要があるから活用している訳ですが……その中で、負傷して、現場に出れなくなったようなのも……このリストには、何人か、含まれています……」
 気は進まないながらも、早めにいっておいた方がいい、と判断したのか……荒野は、淡々と説明する。
「……とはいっても、このリストの中の、ほんの数名、なんですが……」
 荒野はそういって、ぱらぱらとプリントアウトの束をぱらぱらと捲ってみせた。
「……そんな剣呑なの、ほんの数名も混ざってりゃあ、十分だろ……。
 ん?」
 三島の視線が、冷たい。
「……加納……あなた……」
 孫子は、やれやれといった様子で肩をすくめた。
「上層部に……度量を試されていますわね……」
「たぶん、な……」
 荒野も、力無く、頷く。
「あぶないやつら、といったところで……今の手持ちの戦力で、押さえられないほどでもないし……。
 むしろ、おれが、そういう癖の強い人材を使いこなせるのか、どうか……じじいどもが、高みの見物を決め込んでいるんだろう……」




[つづき]
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