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彼女はくノ一! 第五話 (71)

第五話 混戦! 乱戦! バレンタイン!!(71)

 茅の構想を堺がレポート用紙に書き留め、必要な機能を持っていそうなソフトを、実習室のパソコンを使い、楓は検索しはじめた。
 楓は当初、Linuxベースのビジネス用途のソフトを英語圏のサイトから探そうとしていたが、それを見ていた他のパソコン部員たちから、「せめて、日本語化パッチが実装されているものを……」と押し止どめられる。
 このソフトを利用することが想定されるユーザーは、楓のような英語に不自由しない者ばかりではなく、それどころか自分たちのような低年齢層とその逆のお年寄りたちまが、かなりの割合を占める。インターフェースが分かりやすくなければ、意味がない……といった意味のことを、楓の回りに集まった部員たちは必死になって説明した。
 そして、自分たちも実習室のパソコンに向かい、使えそうなソフトを探しはじめる。
 普段、そうしたビジネス用途のソフトには縁がない生徒たちがほとんどだったので、どこのサイトを探せばいいのかよく分からず、みんなで「ああでもない、こうでもない」と議論する時間が長かったが、誰かが「この、グループウェアというのが、似たような機能を持っているんじゃないのか?」といいだし、試しに楓がそのソフトの仕様書ページに目を走らせてみる。
 楓は、
「……カスタマイズは、必要なようですけれど……一から組み上げるよりは、ずっと簡単になりそうです……」
 といい、フリーで配布されているそのソフトのソースをダウンロードしはじめた。
「……これ、UNIXベースだね……」
 いつの間にか楓のそばに来ていた堺が、楓が見ていた仕様書のページに目を走らせながら、そういう。
 堺と話し込んでいた茅は、いつのまにか部屋の隅に移動して、電話をかけていた。多分、徳川篤朗と、必要な交渉を行っているのだろう。
「インターフェース部分に触れるユーザーには、中身のことはどうでもいいと思いますけど……」
 楓は、首を傾げる。
 楓自身は、サーバとかネットワーク関係の技術情報を中心に知識をたたき込まれているので、UNIXベースのほうが扱いも、手をいれるのも、楽だったりする。
「……いや、そういう意味じゃなくて……中身、いじれるのが松島さんだけ、ということになると……長期間に渡るオペレーション面で、少し不安かなぁ、って……。
 メンテナンスとかのことを考えると……」
 堺は、頭を掻きながら、そういう。
 そして、片手を上げて、実習室内にいる部員たちに声をかけた。
「えーと……。
 この中で、そっち方面の知識を、身につけたい人、ちょっと集まって!
 このあたりの知識を身につけておくと、将来、食いっぱぐれがないよ!」
 堺が声をかけると、ぞろぞろと室内に残っていた部員たちの大半が集まって来た。
「……ということで、松島さん。
 即戦力、っていうのは無理だけど……ぼくらちに、初歩的なことから教えてもらえるかな?
 時間がなければ、推薦図書や参考になるサイトのリストを作ってくれるだけでも、いいんだけど……」
 堺の要請にこたえて、楓が参考になりそうなサイトのアドレスや書名のリストを、学校のパソコンにタイピングし始める。
 早速、それをみていた部員たちが、楓の推奨するアドレスにアクセスしはじめる。技術書は彼らの小遣いで購入するには少し高価すぎるため、後で市立図書館などを利用することを考えていた。
「……ここの本の内容を読めば、基本的なことは解るの?」
 いつの間にか電話を終えて楓のそばに寄って来た茅が、楓の背中に声をかけた。
「……ええ……。
 大体、基本的なことは……」
 楓が答えると、
「じゃあ、茅が買うの。
 読んだ後、全部、パソコン部に寄付する……」
 そういって茅は、実習室のパソコンに取り付き、普段利用しているネット書店に自分のIDとパスワードを使ってログインし、楓があげた技術書を片っ端から検索して買い物カゴにいれ、さっさと決済まで済ませてしまった。
「……ちょうど、コンピュータ回りの知識も、体系的に学びたいと思っていた所なの……」
 茅がそういうと、呆気にとられて一連の動作を見守っていたパソコン部員たちが、ようやく茅の一連の行動の意味を理解し、反応しはじめる。
「……あれだけの、全部、いっぺんに……」
「おれ、一回で何万円分も本買う現場、初めてみた……」
「でもでも、あれ、全部寄付してくれるって……これ、パソコン部にとっては、画期的なことなんじゃないか?」
「……ああ。うち、予算少ないからな……」
「やる気がある部員にとっては……凄く、都合がいい展開だよな……」

「無駄遣いしなければ、好きなものを買っていいと荒野にいわれているの……」
 茅の表情は、相変わらず読みにくい。
「茅が読んで、その後、ここにいる人達で共有する。
 そこで得た知識で、いろいろな人達を助ける……無駄は、どこにもないの……」
 楓は、茅が「一度見聞きしたものを忘れない」という体質であることをしっているため、「茅が読む」ということは、その本の内容をすべて記憶する、ということに等しい……ということも、理解している。しかし、他の部員たちは、そうではない。
 そうした茅の特殊な体質を前提とした場合……たしかに、無駄は、ないのだが……しかし、茅のことをよく知らない部員たちは、単純に「気前がいい篤志家」としか、解釈できない。
「加納さんのじいさん……大地主だって噂、本当だったんだな……」
 とか、呟きあっている。
「……それじゃあ……加納さんの厚意を無駄にしないためにも……」
 堺雅史と、そんな風に茅と楓を遠巻きにしている部員たちに声をかけると、部員たちにどこか毒気を抜かれたような表情で頷いて、それぞれのパソコンに向かい合った。

 最初のうち、楓はダウンロードしたファイルを解答して、カスタマイズしたり、いろいろといじくり回していたが、そのうち楓が紹介したサイトで自習をしていた部員たちから質問されるようになり、それがあまりにも頻繁にくるようになったので、外の部員よりは知識と経験がある堺と一緒になって質問に答えたりアドバイスをしたり、といったインストラクターめいた仕事に精を出すようになった。

 最終下校時刻三十分前に、別れて放送部との打ち合わせにいっていた部員たちも実習室に帰ってきて合流し、お互いの成果について確認しあって、その日は解散、ということになった。
 放送部の「不法投棄ゴミ」関連については、速報性と、携帯の写真を気軽にアップできること、それに、学校外へのアピールの一助、という効果も考えて、フリーで共同使用できるブログと、学校が管理するサーバスペースに置く通常のwebページの二本立てで行う、ということに決まったらしい。
 生徒が自主的に行う調査ではあったが、先々のことも考えて、教師たちにも「学校のサーバを使ってこういうことをやりますよ」という通達を行い、今日はとっておいた方がいい、という意見もでて、、この教員への根回しは放送部が分担することになった。
 普段、問題を起こすことが多い放送部は、他の生徒よりも教員たちの内情に詳しいから、これはこれで適任かもしれない……と、楓も思う。
 放送部による教員への工作と、周辺地域で、現在、ゴミ溜まりになっている場所のチェックは、明日から本格的にはじまる。
 ブログのアカウン取得とデザインなどの初期設定、それに、webページの作成……などのパソコン部の分担は、斉藤遙が中心となり、明日から行う、という……。
「あ。
 明日はわたし、放課後用事が入っているんで、こっちにはでられません……」
 楓は、その場にいたみんなに、そういった。
 明日は、木曜日。
 荒野と約束した、美容院に髪を切りにいく日、だった。

[つづき]
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