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「髪長姫は最後に笑う。」 第六章(408)

第六章 「血と技」(408)

「でも……大丈夫なんですか?
 そんなに大がかりに動員しちゃって……」
 荒野は、半ば警戒している。
 いくら、自発的な協力、とはいっても……限度というものがある。静流が話すような広範囲に及ぶ捜索、となると……参加する人数も、必要となる費用も……それなりに、膨大になるはずだ。
 それを、厚意でで……の一言で済まされると思えるほど、荒野は世間知らずでもなかった。
「そ、それが……その……」
 静流は、そっと顔をそらした。
「……み、みなさんが……ですね……。
 昨夜、ず、ずいぶん、盛り上がっちゃって、ですね……。
 な、なんか……わ、若のお役にたって……野呂を盛り上げよう、とか……だ、誰かがお、とおうさまにまで連絡しちゃって……と、とうさま、ノリノリで、資金提供まで約束してくれて……」
「……本家の……静也さんか……」
 静流の父、当代野呂の当主である静也とは、荒野も面識がある。ひとことでいうと、軽率な人だった。術者としては一流だが冷静な判断能力が期待できない……ということで、本家直系でありながらも野呂の組織経営からはずされている、という噂も聞いている。
 つまり、おとなしい性格の静流とは正反対に、お調子者で騒がしい人だった。
 おおかた……若い者に電話かなにかでたきつけられて、ノリノリで協力を約束してしまったのに違いない。
「……おれ……二宮との勢力争いの、口実にされていますね……」
 荒野は、吐息をつく。
 この狭い地域に数十人単位の野呂系と二宮系がつめこまれていて、しかも具体的な仕事をなにも与えられずに無為の日々を送っている、という現状を考えれば、そうした示威行動が発生するのも不思議ではない。人間とは常に味方と敵を区別する社会的な生物であり、一族もかろうじてその人間の範疇に入っている。
「す、すいません……」
 静流が、荒野に軽く頭をさげた。
「静流さんがあやまることは、ないですよ」
 荒野は、苦笑いを浮かべた。
「こちらが助かるのは、確かなわけですし。
 それに、今の状況だと、遅いか早いか別として、こういうことはいずれ起こったと思いますし……」
「そ、それはそうなんですが……。
 そ、それとは、別に……とさまに、からかわれまして……」
 静流は、顔を伏せている。
「その……わ、若とのことを……」
「ああ……」
 荒野は、視線を上にそらす。
「そっか……。
 そういうことにも、なるんだな……」
 野呂の協力的な対応は、静流を通じて、野呂と加納とのパイプを太くする……という、「投資」の意味合いもあるのだろ。荒野としては、それくらい打算的な方が、かえって安心できるくらいなのだが……それとは別に、茅の視線が痛い。
「……か、茅様のお邪魔を、これ以上、するつもりはないので……」
 静流はおどおどした口調で、茅に軽く頭を下げた。
「わ、わたしは、こんな身ですから……せめて、強い子を残すことしかくらいでしか、の、野呂に貢献できないので……」
 自分のサングラスを指先でこつこつ叩きながら、静流はそんなことをいう。
「お、お目こぼしいただければ……」
「いいの」
 茅は、短く答える。
「荒野を独占するつもりはないの。
 荒野とそうなっているのは、静流だけではないし……」
 気のせいか、口調がいつもより少し硬い。
「まあ……おれ、種馬なわけだし……」
 荒野は、場の雰囲気を柔らかくしようとして、わざと軽薄な口調を演じる。
「……今の時点では、ほかに売り物がない若造だし……」
「ご、ご謙遜を……」
 静流は、きっぱりとした口調で応じた。
「わ、若は……荒神様を除けば、おそらく……」
「その、強さってやつなんだけどさぁ……」
 荒野は、かすかに眉をひそめた。
「……今時、あまり価値はないんじゃないかなぁ……。
 単純な破壊力なら、生身が機械にかなうわけはないんだし……一族の中だけで、序列を競ってもあんまり意味がないってぇか……」
 そうした序列にあまり興味を持っていない。いや、もてない……というのは、荒野の本音でもある。体はできあがっていたにしろ、幼少時から修羅場に放り込まれてきた荒野には、「破壊行動や暴力で解決できること」の限界を、むなしさを、間近にみてきていた。肌で知っている、といってもいい。
 だから荒野は、「強さ」には、あまり価値をおいていない。
「……わ、若は、それでもいいと思うのですが……」
 静流は、優しい口調でいった。
「そ、それでも……。
 一族は、昔から……そういう物差しで、動いているのです……」
 荒野一人が否定しても……一族のありようが変わる、ということはないだろう……と、静流の口調が語っている。
「まあ……そうなんですけれどね……」
 静流にしてみれば……一族の現状に対して、公然と不服を漏らす荒野の態度が、子供じみてみえるのかもしれないな……と思いつつ、荒野は苦笑いを深くする。
「おれみたいな半端者が、こうして祭り上げられているってことが……すごい、皮肉だな……って思って……」
 荒野の思想や行動は、どちらかといえば旧来の一族のあり方には批判的である。にもかかわらず……いや、だからこそ、かえってこの土地に人が集まってきている、という現在の状況。
 皮肉で、逆説的だよな……とは、荒野は常々思っている。
「わ、若は、そのように、ご自分のことも客観的にみることができますから……」
 ……そういう人は、道を踏み外すこともできないのです……と、静流は続ける。 
 静流のその言葉は、まるで予言か呪言であるかのように、荒野の胸中にこだました。

「荒野には荒野の都合や事情があるように……」
 静流が帰って二人きりになると、茅は荒野にそんなことをいいはじめる。
「……大人たちには大人たちなりの、都合や事情があるの」
「……それくらいのことは、わかっているけどさ……」
 荒野は、少し憮然とした表情になっていたのかもしれない。
 普通の社会生活を営みはじめてからまだ日の浅い茅よりは、荒野の方が世間知も、それだけある……と、荒野は考えている。
「荒野は、表面的には理解はしているけど、まだ実感できていないの」
 茅の追求は、思いのほか、厳しかった。
「例えば、荒神のこととか……荒野は、自分の印象や想像だけが、すべてだと思っているの。
 荒野は、他の人より多くのことを見てきたし、今、より広い部分を見渡せる位置にもたっているけど……そこから見えるものばかりがすべて、というわけではないと思うの」



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