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「髪長姫は最後に笑う。」 第六章(395)

第六章 「血と技」(395)

 沙織は他人の内面を推測するのが好きだった。たいていのことは分析・記憶・解析……なのの「理解」ができる沙織にとって、身近でかつ「理解しづらい」ものだったからだ。
 それでも、「人間の行動原理」というものは、一般にいわれているほどバリエーションがあるわけではない。人間も動物の一種であり、いくつかの欲望にとって支配されている。
 それは、食欲や性欲など、動物的な情動であったり、知性を前提とする社会的な承認要求だったりするわけだが……ようは、数種類の欲望ベクトルの総和として一人の行動が決定されるわけであり……その基本原則さえ理解してしまえば、多くの人が驚くほど単純な原理で自分の行動を決定してしまっている……と、沙織は、自分の経験から、そう結論している。
 日常生活を送るのに必要なのはそうした単純さであり、事実、比較的大勢の人たちが、「複雑な内面」を持たずに、普通に生活を送っている。
 そして、沙織が興味を引かれるのは、そうした「大多数の普通の人々」ではなく、どちらかといえば少数派に属する「多少なりとも複雑な内面」を持ってしまった人たち、だった。
 沙織の経験によれば、その「複雑な内面」の持ち主は、割合にすれば数十人のうち数人……つまり、だいたい一クラスに一人か二人にくらいの割合であり、普通に学生生活を送っていたのでは、あまり多くの「サンプル」に巡り会うことはできない……というのが、沙織が生徒会長に立候補した本当の動機であった。生徒会長という地位を確保すれば、接することのできる生徒の数は、飛躍的に増える。多くの生徒たちの興味を持ってかぎ動き回っていても、周囲に奇異に思われることもない。
『……茅ちゃんと荒野君のおかげで……』
 そうした面倒なサンプル探しも、今後はかなりお手軽になりそうな気がした。
 沙織が茅に声をかけた時は、そうした「サンプル探し」的な興味からではなかったが、現在、そしてこれからは、なんだかんだで観察対象サンプルには事欠かないようだった。
『……こんなにそばに……』
 面白そうなサンプルが、いたなんて……と、沙織は、紅茶のカップを掌で包みながら、目の前でノートと格闘している香也をみた。
『……案外、見落としているものね……』
 沙織は、こうして引き合わされる前から「概要」としては香也のことを知っていた。まず、一学期中、あまりに出席率が悪い一年生として教師たちが話題にしているのを、職員室に出入りしていた時に耳にし、その一年生の出席状況が、その後、美術部の二年生にひっぱられる形で劇的に改善した時の様子も、伝聞ではあるが、リアルタイムに接している。
 その前後、こっそり美術部に様子をこっそりと見に行ったりもしているのだが……不登校気味の一年生をひっぱってきた樋口明日樹も、今、目の前にいる狩野香也も、その当時の沙織には、さして気が引かれる相手には思えなかった。
 いいかえれば、多少変わっているにせよ、「ごく普通の人々」の一人にしか見えず、観察対象としては、あまり魅力的には見えなかった、ということなのだが……。
『……実際に、話してみると……』
 いろいろなところが、見えてくる。
 狩野香也は、まず、絵を描くことに強いモチベーションを感じている。しかし、「描きたい絵がある」から、絵を描いているわけではない。
 では、何のために?
 狩野香也は、素直である。従順すぎる、と、言い直してもいい。沙織の知る限り、香也は、他人の頼みやお願いを、断った試しがない。現在も、こうして周囲にいわれるままに、それまではろくに手をつけなかった勉強に、いそしんでいる。
 今まで他人とつき合う機会が限られていたらしいこと、それに、「絵が描ける」というスキルがあるために、かえって目立っていない特性だと思うのだが……香也には、
よくも悪くも、ある種の社会性が欠如してるように見える。
 よほどのことがない限り、他人の頼みを断らない。反発をすることもない。だいたいにおいて、イエスマン。他人との摩擦を回避する、という点では平和的な人物像になるわけだが……ここまで、本人の主体性がない、という例も……沙織にとっては、珍しい。
 要するに、沙織が観察した限りにおいて、香也は……絵を描こうとする心性以外には、あまりにも特徴がなさ過ぎなさすぎる、という意味で、あまりにも希薄なパーソナリティの持ち主だった。
 このような希薄な人格が、どのように、形成されたのか……形成されることが、可能だったのか……沙織には、なかなか想像できない。
 ようするに……香也からは、他の人からはごく普通に観測できる「欲望」という要素がほとんど感じられず、ほぼ唯一の嗜好である絵にしても……よくよく聞いてみると、はっきりとした目的があって描いているわけではない……ということになる。
 一種の強迫観念的なものであれば、まだしも理解しやすいのだが……香也は、こうして絵から遠ざけられていても、特に苦痛としている様子はない。だから、そうした病的な執着に尽き動かされているわけでは、なさそうだ……。
 今、この子に……「絵を描くのが好きなのか?」と聞いたら、いったいなんと答えるのだろう?
 おそらく、しばらく考え込んだ末、「よくわからない」とでも、答えるのではないか?
 少なくとも、「絵を描くのが、好きだから」と即答することだけは、ないのではないか……。
 あくまで沙織の予測にすぎないのだが……何故か、そんな反応をする香也が、沙織にはありありと想像することができた。
 香也が絵を描く……という光景があまりにも見慣れたものになっているため、周囲の人々は、疑問にも思わないようだが……。
「香也が絵を描く理由」は、香也自身も含めて、確かなことは誰も知らない……知ろうとは、していないのではないか……。
『……そう考えると……』
 この子は……狩野香也は、面白い。
 そういって悪ければ、興味深い観察対象だ……と、佐久間沙織は結論した。


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