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彼女はくノ一! 第六話 (136)

第六話 春、到来! 出会いと別れは、嵐の如く!!(136)

「……それで、人混みに紛れて近づいた楓おねーちゃんが、ぱっとジュリさんの胸元に飛び込んでて……それで、どがどがどがどがって、ジュリさんがずっぱーんってふっとんでいって……」
「そーか、そーか……」
 ガクが、無邪気に昼間の楓の奮闘ぶりを説明し、羽生がそれとなく相づちをうっている平和な夕食の光景だった。
 もっともガクは、風呂場での一件を意識しないために、無理に明るく振る舞っている……という側面もあるようだが。
 何せ、今も、孫子は機嫌悪そうにむっつりと黙り込んでいる。対して、楓の方は、思い出し笑いをしそうになって、慌てて顔を引き締めている……ということを繰り返している。
 ガクにしてみれば、二人の対比がひたすら怖かった。風呂場での件があるだけに。
 だからガクは、無邪気を装って、必死に明るくはしゃいでいる。この場だけでも雰囲気をよくしようとしている。
『……どうしゃちゃったの、ガク?』
『お風呂で、なんかあったみたい』
 ガクの様子をいぶかしがって、ノリとテンとが、小声で囁き合っている。
 そうした異様な雰囲気に気づいているのかいないのか、普段通りの真理と、真理に輪をかかけてマイペースな香也。
「……それ、なんか面白そうだな。
 夕べの二刀流のおねーさんと楓ちゃんの決闘」
「映像は、徳川さんが、例によって撮影していると思うけど……。
 まだ未処理未編集だから、量的に膨大で、今見るのはかえって大変だと思う……」
「そんなにいっぱい撮影しているのか?」
「時間的にはほんの数分の出来事だったけど、あの工場、今では遠隔操作のカメラだらけだからね。
 いろいろな角度から、こう」
「そうかそうか。
 でも、速度的に写っているの? あの二人だと……」
「そう。
 シャッタースピード的にもつらいんだけどねぇ……。
 今のあそこのカメラ、全部、高感度に対応しているものに変わっているんだけど、それで、もまともに撮影すると残像しか残らないから、専用ソフトのでバッチ処理して……」
「専用、って……」
「うん。ニーズがありすぎるから、ざっと組んでみた。
 静止画と残像を照合して人間の目にも見やすくてわからりやすい動画に直すやつ。
 二十分くらいでインスタントに作ってみたんだけでど、結構使えるんだよねぇ……」
「さらっと凄いこというな、この子は……。
 いろいろと……」
 羽生は少し複雑な顔をしたが、すぐに蓮華で水餃子をすくう。
「ん。
 真理さんの水餃子、最高だな。いつものことながら……。
 こう、皮がつるっともちっとしていて……」
「今日は誰もいなかったから、こーちゃんがこねてくれたんですよ、皮……」
 真理が何気なく答えると、香也と真理を除いた全員の間に、静かな衝撃が走る。
「……こーちゃんもやっぱり男のよねー。
 こう、生地をこねるの、わたしがやるよりよっぽどしっかりと……」
「……香也様の……」
「……おにーちゃんの……」
 もはや真理の言葉に耳を傾ける者もなく、ほぼ全員が、手元の取り皿に取った水餃子を見つめている。
 香也と羽生だけが、黙々と食事を続けていた。
「……いっぱいつくったから、どんどん食べてね……」
 雰囲気の変化に気づいているのかいないのか、真理が快活な口調でいいながら、土鍋の中に新しい餃子をどさどさと入れはじめる。
「……具もね、この間、舎人さんにいろいろ教わったんで、いろいろと変化をつけてみたのよ……。
 ……って、なに?
 いきなり。
 みんな、そんな、急がなくても……まだ、いっぱいあるから……」
 真理のせりふは、後半、狼狽で声が震えてしまっている。
 そんな真理には構わず、楓、孫子、テン、ガク、ノリたちは、次々にと水餃子を自分の口に放り込んでいく。
 もっとも、水餃子は早食いできるような食材ではないし、真理がたったいま鍋に放り込んだ分は、まだ煮えてもいない。
 それでも、はふはふいいながら、少女たちは熱くて食べにくい水餃子を喉の奥に押し込み続ける。
「真理さん。
 餃子、まだ台所にありますよね?」
 すっ、と、羽生が立ち上がる。
「……え。ええ。
 作りおきにしようと思っていたのが、まだ……」
「取ってきますよ。
 この分だと、今出しているのも、すぐになくなっちゃいそうだから……」
「……んー……」
 マイペースで十分な量を摂った香也が、箸を置いた。
「……ごちそうさま……」
 香也そういうとごく自然な動作で立ち上がり、居間を後にする。
「こーちゃん。
 ご飯終わったんなら、先にお風呂はいっちゃいな……」
「……んー……」
 羽生が声をかけると、香也は、例によって生返事を返す。
「じゃあ、先に入る……」
 この二人は、なんだかんだいって多少は騒がしい同居人たちとの生活に適応しているのであった。

「……ふぅ……」
 風呂から上がった香也が居間を覗くと、同居人の少女たちはすでに食事を終えていたようだった。その割には、まだ解散もせずに、炬燵の天版の上に額を寄せあうようにしてなにやら話し合っている。
「あれ、明日っからのこーちゃん当番の、順番決めているんだって。
 ……あみだくじで」
 香也が何かをいう前に、羽生が解説してくれる。
「……いやー。
 もてもてだなー、こーちゃん。
 真理さん公認だし、よりどりもどりだし……」
 その口調にどこか抑揚がないのは、この状況を好んで受け入れているわけではないからだった。
 それから、香也の首をがっと腕で引き寄せ、香也の耳元に小声でつぶやく。
「……こういうこというのもなんだけどさ……。
 こういう微妙なのって、そんな長続きしないと思うからさ……。
 みんないい子なんだから、なるべく早く誰かにひとりに絞るよーに……」
 香也は、風呂上がりだというのに若干、血の気が引いた顔でこくこくと頷く。
 香也とて、現在の状況が永遠に続くとは思っていない。たまたま少女たちがお互いに牽制しあっているので、奇妙に均衡がとれている形になっているわけだが……。
 こんな微妙な均衡は、何か、ちょっとした刺激でもあれば、簡単に崩れてしまうだろう。
 例えば逆に……今、羽生に、「今の状態をいつまでも保つように」などといわれたとしたら、香也は簡単に絶望していたことだろう。
 香也も羽生も、今の状況については、せいぜい「しぶしぶ認めている」といったところであり……決して、いい状況だとは思っていない……という認識は、共通して持っていた。

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