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「髪長姫は最後に笑う。」 第六章(391)

第六章 「血と技」(391)

 期末試験二日目も、特に異変が起こるということもなく、無事終了。部活などの課外活動が禁止されていることなども昨日と同じで、結果として、午前中のうちに全校生徒が一斉に学校を追い出されることになる。
 そうなると、当然……。
『……まあ、こういうことになるよな……』
 例によって、昇降口のところで沙織と茅が合流していて、立ったまま試験の問題用紙に赤ペンで解答を書き加えている。二人とも、その場でさらさらと遅滞なくペンを走らせている様は……。
『わかっては、いても……』
 異様、だよな……というのが、荒野の偽らざる感想である。むしろ、そんな二人に対し、とりたてて奇異の念を抱いた様子もなく挨拶していく(茅と沙織は、これまた当然のように、一人一人に対し、軽く手を振ったり声をかけたりして、律儀に挨拶を返している)生徒たちの方が、異常といえば異常な筈で……。
 ようするに、ここ数日の放課後の活動で、茅と沙織が一緒にいる、ということ、それに、この二人の人並みはずれた知的な能力とが、校内に知れ渡っているわけであり……つまり、「デフォルト」として認識されているらしかった。
 ……慣れって、怖い……と、荒野は思う。
「荒野」
 模範解答を書き加えた後の問題用紙を写メに撮ってから、茅は荒野に手を差し出す。
「今日の分の、試験」
「はいはい」
 荒野は、
『飯島……。
 本当に、今朝、茅の機嫌、良かったのか?』
 などと思いつつ、鞄の中から「今日の分」を茅に差し出す。
「今日の試験、どうだった?」
 挨拶もそこそこに、沙織が荒野に声をかけてくる。
「あー。
 まあまあ、いけたと思います。
 おかげさまで……」
 昨日のこともあるから、沙織が荒野の成績を気にするのは、よく理解することができた。それに、沙織にいった通り、当初予想していた以上の点数は、取れたと思う。昨日、勉強した範囲から出題されたパターンが、思いの外多かった。
 そのことを沙織に告げてから、荒野は、
「先輩。
 結構、ヤマ、教えてくれたでしょ?」
 と確認する。
「ヤマっていうか……」
 沙織に、柔らかく、微笑む。
「……先生方も、毎年、同じことを繰り返し教えているわけだから、出題傾向が偏ってくるのは、仕方がないでしょ?」
 といった後、続けて、
「それに、思う、ってだけじゃ、駄目。
 ちゃんと自己採点して、点を取れなかったところをはっきりさせて復習して、次につなげないと……」
 と、諭されてしまった。

「茅、昼の買い物とか必要か?」
「夕べのカレーが残っているから、いらないの」
「……またカレーか……」
「いいじゃない。
 昨日のカレーおいしかったし、カレーって一晩くらい置いた方がおいしくなるし……」
「おいしいのはいいんですけど……あんまり続くのもなぁ……」
「夕食の分は、また双子に買ってきてもらうの」
「……すっかり茅のぱしりになっているな、あの二人……」
「あの子たち、わたしと同じ年齢なんですってね……」
「学校も、先輩と同じです。
 春から、先輩と同級ってことになりますね、あの二人……」
 だらだらとそんな会話をしながら、三人でマンションへと歩いていく。
 こうしていると……。
『……あー……。
 おれ、普通の学生みてー……』
 と、荒野は思った。
 だが、その「普通」も、あまり長くは続かないのであった。

「……あ、あの……」
「ハーイ」
 マンションに帰っていくらもしないうちに、静流とシルヴィとが荒野を訪ねてきた。
「……珍しい組み合わせだ……」
 つぶやきながら、荒野はとりあえず、室内に招き入れる。この二人が、何の用事もなく荒野を訪ねるわけが、ないのだった。
「……あー。
 お客さんが来ているけど、いいかな?」
 今日は、のっけから沙織目当ての源吉がマンション内に侵入していて、荒野たち三人を出迎えてくれたりしたのだが……少なくともシルヴィは、沙織と源吉とに面識があるし、事情も知っているので、大きな支障はない筈だった。
「……えー……と……」
 荒野は頭を掻きながら、静流を、源吉と沙織に紹介する。
 源吉は、「そうですか。野呂の……」と感慨深げにつぶやいて、静流の顔をまじまじと見つめる。
 学校に出入りしているシルヴィと沙織は、すでに面識があった。
 また、沙織の方が一方的にではあるが、「商店街で新しいお店をはじめた人」として、静流のことを知ってもいた。静流はそのハンディキャップもあって、それなりに目立つ存在であるらしい。
「……それで、二人して、なんの用?
 他に聞かれたくない用事なら、隣りの部屋に……」
「……べ、別に、秘密にすることでは、な、ないのです……」
 静流は、平坦な声で荒野に告げる。
「ジュ、ジュリエッタさんのこと、ですが……す、少し、お行儀が悪い時があるので、お、お灸を据えてもいいかな、と、お、お伺いに……」
「……こっちも、同じようなもんなんだけどねー……」
 そういうシルヴィの声は、ため息混じりだった。
「……チャイナな二人と赤毛の相性が悪くってさー。
 どうしたもんかと……」
「愚痴かよっ!」
 荒野は反射的に大声で叫びそうになるところを、慌てて自重して、若干、声を小さくした。
「しかも、どっちも姉崎がらみだし!」
「……ど、同居もしているわけですし、も、もう少し、じょ、常識的に振る舞ってくださらないと、せ、世間体というものが……」
 そんな荒野に構わず、とうとつとした口調で、静流が先を続ける。
 荒野は、慌てて、
「……ええと……。
 ジュリエッタさんのことでしたっけ?
 やるのは構いませんけど、静流さんだけで大丈夫ですか?
 なんなら、おれか楓あたりが手伝いますけど……」
 などと応じる。
「……ほ、他の方の手を借りても、ジュ、ジュリエッタさんに、舐められるだけなのです。
 わ、わたしがやらないと、い、意味がないのです……」
 珍しく、静流は「やる気」になっているらしい。
 まあ……静流がここまで「やる気」になっている以上、止める筋合いもないか……と思い、荒野は、
「安全のため、おれも立ち会います。どちらかが危なくなったら、即座に止めますから……」
 とだけ、いうんい止めた。
「そ、それはいいんですけど……できれば、他の方も、で、できるだけ、大勢……集めて欲しいのです……」

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