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「髪長姫は最後に笑う。」 第六章(380)

第六章 「血と技」(380)

 それなりに緊張感に包まれた中、無事に一時限目の試験を終え、休み時間に入ると、何故か茅が荒野の教室を訪れてきた。
「どうした?」
 廊下から自分に呼びかける声に振り向き、そこに茅の姿を認めた荒野は、少なからず驚き、慌てて廊下にまで出て茅に声をかける。
 荒野以外の生徒たちも、試験中に訪問してきた下級生の姿を物珍し気にみている。荒野自身もそうだが、今では茅もかなり、「校内での有名人」ということになっている。茅とは学年が違う、ということもあり、普段、学校にいる時に行き来して会う、といいうこともほとんどなかったので、それなりに注目を浴びるのも不思議ではない。
「二年の試験問題を、見せて欲しいの」
 突然の来訪を訝しむ荒野に、茅はそう説明する。
「すぐに、模範解答を製作してサーバにアップするから……」
 荒野が反応するのよりも早く、それとなく様子を伺っていた周囲の野次馬連中から「おおっ」と小さなざわめきが起こる。
 そういうことか……と納得しながら、荒野は慌てて自分の席にとって返し、今し方机の中につっこんだばかりの問題用紙をとって廊下に戻る。
 荒野から問題用紙を受け取った茅は、ポケットから赤のフェルトペンを取りだし、廊下の壁面に用紙を押さえつけ、その場で問題用紙を一瞥すると、そのまま直接、答えを書き込んでいく。大雑把な走り書きに近い乱雑な動きだったが……。
「……あってるよ……」
「あっ。
 そこ、そうだったのかっ!」
 いつの間にか、茅や荒野を取り囲んでいた連中が、茅が書き込んでいた「正解」を見ながら、ざわめきはじめる。
 つい今し方、自分たちが一時限をかけて答えを埋めた問題を、下級生がさらさらと片手間に解いている現場に居合わせた荒野の同級生たちは、この状況の不自然さに驚くよりも、茅が示した解答と自分の解答とをつつき合わせることの方に、より熱意を持っているようだった。
 ものの三分も関わらず上級生の試験をその場で解いてみせた茅は、出来上がった「模範解答」を荒野に両手で掲げさせ、携帯電話に付属しているカメラで撮影、そのままメールで学校のサーバに転送する。
「茅ちゃん。
 これ、三年生の分ね……」
 茅が持参した一年の分の「模範解答画像」も同様にメールで転送していると、いつの間にか佐久間佐織も来ていて、茅に朱の入った一枚の紙を手渡す。これで、茅の分の一年、荒野の分の二年、沙織の分の三年……つまり、全学年分の試験問題と模範解答が揃ったことになる。
 沙織は、荒野への挨拶もそこそこに、すぐに自分の教室へと帰っていく。何しろ、休み時間は短い。ゆっくりと世間話しをするような余裕もないのだった。
 一方の茅はといえば、沙織が持参した三年生の試験問題もすぐさま写メール転送し、
「次の休み時間も来るから」
 と荒野に告げ、佐久間佐織と同様、足早に廊下を去っていった。
 時間の余裕がない、という条件は、一年生の茅も変わりなかった。

 そんなやりとりが休み時間のたびに繰り返され、その日、予定されていた試験をすべて消化する頃になると、
「……やっぱり、加納の妹は、ただ者ではない……」
 という認識が、荒野のクラスメイトの中で自然に共有されていた。
 その認識は、さほど時間をおかず、もっと広い範囲で共有されてしまうのだろうな……と、荒野は漠然と予想したが……そもそも、今までだって茅の異能を隠そうとはしていなかったわけで……今更のように、注意したり警戒したりしても遅いか、という気持ちもある。
 茅が自分の能力を、善用しかしていない……というアピールを欠かさないせいか、今のところ、当初予想していた「一般人の拒否反応」は出ていない。
 いや。
 今の時点では、ただ呆気にとられている段階であり……今後、茅の存在に周囲が慣れはじめると、本格的な排斥が起こりはじめる可能性は、まだまだ充分に残されているのだが……。
 それでも……。
『……希望は、あるよな……』
 荒野は、現状をそのように判断している。
 これは半ば、自分自身に言い聞かせているわけだが……。

 学内の期末試験、二教科分と、偏差値を割り出すための業者テスト二教科分を終えると、その日の予定はすべて終了だった。
 荒野から二年生の問題用紙を貰うために教室にやってきた茅は、当然のことながら、上着を着て鞄を持ち、つまり完璧に帰り支度をしている。試験期間中は部活をはじめとした課外活動は一切禁止されている。
 そのため、茅にしても、いつものように下校時刻ぎりぎりまで居残ることは出来ず、自然と、「一緒に帰ろう」ということになった。
「なんなら、一緒にどうです?」
 荒野は、今までの休み時間と同様、三年生の試験問題を渡しに来ていた佐久間佐織に、そう声をかける。沙織も、茅と同じように、帰り支度をしていた。
「いろいろとお世話になってますし、よかったら軽くメシくらいご馳走しますけど。うちで……」
 なんだかんだで、主に茅経由で、沙織にいろいろと負担をかけているようだった。沙織は、さして苦にしている様子もないのだが……だからといって、礼をしなくてもいい、ということもないだろう。
 ちょうど昼食の時間でもあることだし、茅と一緒に、三人で連れ立って歩いていけば、外聞的にもあまり問題がない……と、荒野は考える。
 沙織は、確認するようにちらりと茅に視線をやると、茅は、
「二人分を用意するのも、三人分を用意するのも、変わらないの」
 と頷く。
「そう。
 じゃあ、せっかくだし、寄らせて貰おうかな?」
 沙織は、自然な微笑みを浮かべてそう答えた。

「……なにをやっているんだ、おま……」
 荒野は、昇降口で静かに揉み合っていた三人に、そう声をかける。
 実のところ、「お前ら」と声に出しかけてあわてて飲み込み、
「……君たち……」
 と、慌てて訂正する。
 困惑顔の狩野香也の左右に松島楓と才賀孫子がとりついて、静かに火花を散らしているようだった。
 なんか……聞かなくとも、だいたいの事情は容易に察せられる光景であり、面子でもあった。


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