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彼女はくノ一! 第六話 (117)

第六話 春、到来! 出会いと別れは、嵐の如く!!(117)

 梢の中で、あの時、「最強」の荒神とかなりギリギリのせめぎ合いを演じていた楓と、今、隣で炬燵に入って、両掌で包み込むようにして湯呑みを抱えている楓とが、なかなか結びつかない。
 時間してみれば、五分にも満たない短さであっただろう。
 それでも、人は、一族は、あれほど鋭い動きを出来るものなのか……と、瞠目した時間だった。これは別に梢だけの感想というわけではなく、その証拠に、直後、現象も舎人も顔色を無くしていた。彼我の差を思い知らされた形の現象などは、あの後、「ふざけるな!」などと八つ当たり気味に悪態をつきさえ、していた。
 息一つ見出さずあれほどの働きを演じて見せた荒神も凄いが……その荒神には今ひとつ、及ばないものの、荒神の動きに負けまいと奮戦した楓の動きも……梢の知る限りにおいて、完全に、他の一族の水準を凌駕している。
 「最強の弟子」とは、この土地に来る前より、聞いていた。しかし、その「最強」と「最強の弟子」との本領を目撃したのは、ここに移ってきたからであり……実際に目撃してみれば、梢の想像を遙かに超越していた。
 その時の「最強の弟子」と、今、のほほんとした表情で炬燵にあたっている楓とが……梢の中で、なかなか結びつかないのだった。
「……何か?」
 気づかないうちに楓に視線を固定していたのか、楓が、梢に向かって首を傾げて見せる。
 害意や悪意がかけらも覗かない、邪気のない微笑みを、やんわりと浮かべていた。
「いえ、別に……」
 梢は、何故か、慌てて視線を逸らす。
 こうしている、普段の楓は……いっそ、あどけない、と形容しても差し支えないような、愛らしい少女にしか見えない。
 楓の外見と実力のギャップに、梢は、頭がクラクラする想いがした。
 楓の普段の態度が擬態だとすればたいしたものだが……梢が今までに観察してきた限りでは、普段の楓は、決して「芝居」ではない。「地」、だ。その程度のことは、佐久間としての能力を使用して「読む」までもなく、梢にも判断出来た。
『……なんという……』
 人たち、なのだろう……と、梢は思う。
 荒神と楓に加え、ここには、もう一人の「最強の弟子」、荒野までもがいる。梢は、荒野の「実力」を見聞する機会には、まだ恵まれていないのだが……荒野の実力のほどは、すでに一族内で定評に近いものを得ている。
 その三人が、一カ所に固まって住んでいる……という事実に、梢は目眩にも似た感慨を覚えた。
 現象や荒野などは、どうも「新種」たちを過剰に意識しすぎているようだが……梢にいわせれば、そうした「新種」よりも、旧来の「一族」たちの方に、よっぽど脅威を感じてしまう。
 それとも、一番身近な「新種」が現象だから、悪い意味での身贔屓で、そう見えているだけなのだろうか?
 いずれにせよ、荒神や楓レベルの体術を目撃した後だと、自分で身につけたものは、せいぜいがとこ、可愛らしい護身術程度だな……と、梢は、そう評価を下す。
 身体能力的にみれば、「佐久間」は、六主家の中でも底辺に近い……という世評は、そんなに間違っていなかった……と、今にしてみれば、そう思える。
 そして、それを実感できただけでも、梢にしてみれば、この土地に来た甲斐があるのであった。

 小一時間ほども「イザベラの朗読→香也、現象の復唱」という学習をした後、少し休憩をとって、香也は、別の教科の勉強に移行する。明日からの期末試験は、別に英語だけが行われるわけでなく、香也の勉強をみている楓としても、複数の科目について対策を行っておきたい。
 それなりの時間、声を出し続けていた香也には、相応に疲労の色が見えていたが、楓に手心を加えるつもりはない。試験期間もこの一週間だけだし、香也の試験結果は、楓や孫子が今までにやってきた努力がどこまで実ったのか、という指標にもなる。香也の方は、相変わらず、楓や孫子の熱意に煽られ、引きずられている形だったが、今のところは、そんなに積極的にいやがってはいないかった。
 楓と香也がマンツーマンの学習に入ると、梢や現象、イザベラは、楓から使っていない教科書を借りて、その内容を子細に検討しはじめた。この三人の中でイザベラだけが学年が違うわけだが、春の新学期から、同じ学校に通うわけである。その中でどのような授業が行われているのか、興味を持つのは当然といえた。イザベラはどういうつもりでいるのかは不明だったが、梢と現象は、それなりに現地に溶け込みたいと思っている。
 さらに正確にいうと、梢は現象の内面を確認しているわけではないが、現象はそのように自己申告している。
 各種教科書の内容は、梢や現象にとっては大半は既知の事柄であったが、イザベラは、日常会話こそ問題なく行うことができるものの、教科書の中でしかお目にかからないような堅苦しい言い回しや単語の意味が取れないことがあり、梢や現象に何度か訳語を求めたりした。
 昼には、「世話になったし、手が空いているから」という理由で、舎人が中華風のおかゆを手早く作ってみせた。台所にあったあり合わせの乾物と冷凍保存されていたご飯が原料だったが、あつあつのものを食べると素朴なうまみを感じる。一見、ボリュームが足りないように見えて、食後しばらくするとそれなりの満腹感を感じた。
 その昼食が終わると、イザベラは「部屋の片付けがある」とかいって帰っていき、香也と楓は、勉強を再開する。
 食後の片付けを終えた舎人から、
「……お前らは、どうする?」
 と問われ、梢と現象は顔を見合わせ、少し話した結果、「帰る」ということになった。
 今更という気もするが、これ以上ここにいても、香也や楓の邪魔にしかならないような気がする。
「ま、居残りの双子も、飢えていないのか心配ではあるしな……」
 そういって舎人も、「帰る」案に賛同する。
 まだ雨が降っているので……と、車で送ることを申し出てくれた真理の提案を丁重に断って、この三人も帰って行った。
 これで、昨夜、来訪した人たちのうち、残っているのはジュリエッタのみになったわけだが、そのジュリエッタは相変わらず、居間の隅で布団にくるまって気持ちよさそうな寝息を立てていて、いっこうに目を醒ます気配を見せなかった。
 そうしている限り、とりたてて邪魔になるわけでもないから、誰も起こそうとはしない。
 昼食からしばらくして、真理が車で買い物に出かけ、この家には、寝っ転がったままのジュリエッタを除けば、実質、香也と楓しかいないことになった。


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