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2007-10

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彼女はくノ一! 第六話(105)

第六話 春、到来! 出会いと別れは、嵐の如く!!(105)

 手玉にとる……というのは、きっと、こういう状態のことをいうんだろうな……と、ジュリエッタ、ユイ・リィ、ホン・ファの三人の動きを見ながら、香也は心中でそう評した。
 ジュリエッタの周辺をぐるぐると巡って隙を伺うユイ・リィ、ホン・ファに比べ、ジュリエッタ自身はあまり動いていない印象を受ける。しかし、ユイ・リィ、ホン・ファが何事かを仕掛けると、ジュリエッタはそれを見越したかのような動きで、確実に反応、迎撃した。
 ……後ろに目がついているかのように、ジュリエッタは、四角から繰り出される二人の攻撃にも確実に対応、完全に機先を制して自分に向けられた攻撃が、ヒットする前に力を逸らす。
 ユイ・リィ、ホン・ファも馬鹿ではない。
 二人がかりでも連携も考慮し、フェイントも織り交ぜ、足を使って目まぐるしくジュリエッタの周囲を旋回、別方向からの同時攻撃なども再度試みているようだが、そのたびに、ジュリエッタに完全に防御される。
 香也の動態視力では、もちろん、三人が激突する際の詳細を詳しく知ることはできないのだが、無音のまま高速でぐるぐるとジュリエッタの周囲を巡っては、ジュリエッタにはじき返され、吹き飛ばされる様子は確認できる。
 ジュリエッタに弾かれた二人は、三人の周囲で待ちかまえている荒野、楓、舎人が体を受け止めて、派手な転倒と周囲への被害を未然に防いでいた。
 荒野たちは、どうやら、この家への被害を防ぐために、ジュリエッタ、ホン・ファ、ユイ・リィらの周りを囲い、待機しているらしい。
 ホン・ファ、ユイ・リィは、かなりの頻度でジュリエッタに弾き飛ばされたり転倒したりするので、外縁を守る荒野や三人の動きは、それなりにせわしないものとなっている。
 その甲斐、あってか、ホン・ファとユイ・リィの派手な動きにも関わらず、一連の運動は、ジュリエッタを中心とした、半径二メートルの範囲を超えることはなく、当然、家具などへの被害も皆無だった。
 炬燵などは、香也が居間に戻った時点で、壁際に押しつけられており、真理や羽生などは湯呑みを傾け、時折、声援やら歓声などをあげながら、一連の動きをのんびりと観戦している。二人とも、荒野や楓が家や家具に被害が出ないよう、見張っているのを知っているので、安心して興味のままに見物に徹することが出来るのだろう。
 憮然と呆然が複雑に混合した表情を浮かべているのは、佐久間現象だった。
 香也がそっと現象の顔に視線をやると、
「……気にしないでいいの。
 現象は、自分が到底及ばない領域の技を見せつけられて、不機嫌になっているだけ……」
 香也の表情から疑問を読みとった茅が、現象の心理を代弁して香也に説明してくれる。
 その声は、当然、現象の耳にも入ったので、現象の顔は、ますます不機嫌そうになったが、現象は特に反論するということもなく、への字型に結んだ口元に、さらに力がこもる。
 現象も、茅を相手にして反論したりする気はないようだった。
 ……この二人、いつの間に、こんなに親しく会話するようになったんだろう……と、香也は思ったが、やはり余計なことを何もいわずに絵を描くことに専念する。
 香也は、夜ごとにテン、ガク、ノリの三人が外出することは知っていたが、どこに行っているのかまでは知らされていなかったし、当然、茅も三人娘と一緒に、毎晩のように現象たちが住む家に通っていることも、知らなかった。
 そんなことをいいながらも、茅と現象は、三人の動きについて、時折、小声で意見を交換したりしていた。孫子も、二人の会話に自分の見解を挟んだりしている。
 香也は無言で手を動かしながら、すぐ横で行われている茅、現象、孫子たちの会話にも耳を傾けている。香也は、茅たちの会話のすべてを理解できるわけではなかったし、ジュリエッタ、ホン・ファ、ユイ・リィの動きをすべて見切れるわけでもなかったが、香也の知識と語彙で理解できる範囲内で会話を耳にし、香也の動態視力で見切れる範囲内で見切るだけでも、香也にとっては十分に刺激的な情報だった。
 香也のそれまでの人生では、このようなことを見聞する機会に恵まれなかったのだから、当然といえば当然だったのだが。

「……いい湯じゃったぁ……」
 借り物のパジャマを身につけ、まだ湿っている髪をタオルで拭いながら、イザベラが居間に入ってくる。
 彼女だけ早風呂なのか、一緒に入浴しに出て行った人たちは一緒ではなかった。
「……やっぱり、うまいもんじゃな……」
 香也の背中に身を乗り出すようにしてかがみ込み、イザベラは、香也の手元を覗き込む。
 孫子が警戒心を露わにした表情で、無言のままイザベラの顔を軽く睨むと、イザベラは苦笑いを浮かべながら香也から少し体を離した。
「……一般人で、ここまで目がついていければ、たいしたもんじゃ……」
 香也との距離を少し開けたイザベラが、香也の手元を指さしながら、そんなことをいう。
「……んー……」
 香也は、手を止めず、顔も上げずに、反射的に答えている。
「……あの二人の動きは、大きいから……」
 この時の香也は、「誰かと会話している」という意識も持っていない。
 香也の意識は半ば以上、描きかけの絵に集中しており、そう問いかけたのが誰なのかもろくに意識していないのだった。
「……フェイントもあるから、当然、動きも大きくなるのじゃろうのぉ……。
 あの二人だと、並の相手なら、最小限の動きでしとめられる筈なんじゃが……」
 イザベラは、香也の言葉に、したり顔で頷く。
「……このひと……」
 香也は、スケッチブックの紙面、ジュリエッタが描かれた部分を、こつこつと叩く。
「……ほとんど同じ場所にたっていて、くるくる回ったり、手を動かしているだけ。
 この人が、主導権を握っていると思う……」
 最小限の動きでホン・ファとユイ・リィの相手をしているジュリエッタの動きは、香也の動態視力でも、動きが追いやすい。
 その場からあまり動かずにくるくると旋回するジュリエッタの動きは、香也の目には、優雅なダンスか何かのように見えた。つまり、香也の目から見ても、ジュリエッタの動きに無駄がないのであろうことは、予測がついた。
「……二人も相当なもんじゃが、ぞれ以上にジュリエッタが抜きんでいるんじゃの……」
 イザベラも、香也の見解を裏付ける発言をする。
「……あの二人の師匠と互角だったわけじゃから、二人がかりで敵わなくても、不思議はないのじゃがのぉ……」
 



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「髪長姫は最後に笑う。」 第六章(363)

第六章 「血と技」(363)

 ホン・ファとユイ・リィはジュリエッタの左右にやや間合いを空けて展開、次の瞬間には、まるで図ったかのようなタイミングで、両側から同時にジュリエッタに突進する。
 が、ジュリエッタの方は、二人の二方向同時に特に緊張した様子もなく、けらけら笑いながら、両腕を軽く廻した。それだけで、ホン・ファとユイ・リィは突進する勢いを殺され、体勢を崩して体を泳がせる。たたらを踏む。
 その背中にジュリエッタが軽く掌をあてて押してやると、二人は、ほぼ同時にあっさりと畳の上に転がった。
「わ」
 軽く声をあげて、ユイ・リィが前転してくる進路上にいた現象が、慌てて腰をあげて数歩、後退した。
 慌てて飛びのきながら、現象は、魔法を見ているような気分になった。
 ジュリエッタは、まるで力を入れているようには見えなかったし、動き自体も、ユイ・リィやホン・ファの俊敏さに比較すると、かなり緩慢に見えるほどなのだが……。
 それでも現実に、片手のひと振りで、あっけなく二人を翻弄している。

「このっ!」
 素早く身を起こしたユイ・リィが、短く鋭い怒声を発し、猛然とジュリエッタに撃ちかかる。
 二撃、三撃……と、続いてジュリエッタに手に攻撃をいなされたところで、軽く軸足を掬われ、ころん、と、再度、あっさりと転倒した。
「ほい」
 そこに待ちかまえていた舎人が、ユイ・リィの背中に手を当てて、助け起こす。
 舎人は背中から両脇に手をまわしてユイ・リィの体を軽々と持ち上げて起きあがらせた後、
「まっ。
 気が済むまで試してみるんだな…」
 といって、ユイ・リィの背中を軽く押す。
 ユイ・リィが再度ジュリエッタに向かい、突進するのにあわせるように、ユイ・リィと同様にジュリエッタに攻撃を仕掛けていたホン・ファが、ジュリエッタに適当にいなされて弾きとばされた。
 ユイ・リィよりも年長なだけあって、ホン・ファの場合、多少、長い時間、粘ることができたが、それでも、一撃もジュリエッタに攻撃を当てることなく、撃退されている。
 ジュリエッタに不意をつかれて弾きとばされたホン・ファは、そこで待ちかまえていた荒野に受け止められて転倒を免れ、次の瞬間には自分で跳ね起きて体勢を立て直し、ジュリエッタの方へと突進する。

 同時に二人の相手をしている形のジュリエッタは、最初の立ち位置からほとんど動くことなく、二人の攻撃をかいくぐり、 気まぐれに二人の体を押し返して対応していた。
 何がおかしいのかしきりに笑い声をあげながら、平然とした様子を保っている。
 対する二人、ユイ・リィとホン・ファは、ジュリエッタによって畳の上に転がされる度にムキになっているようで、動きに鋭さが増しているように見受けられた。
 ……少なくとも、佐久間現象の目には、そう見えた。
「……をい……」
 現象には、二人の少女の猛攻と、それを軽々と受け流しているジュリエッタの軽やかな動きは、信じられないほど俊敏なものに見えた。
 現象とて、ここ数日、毎朝のように一族の者の動きを見、場合によっては、実地に組み合って体験もしている。
 だから……一族の水準、というものは、現象もそれなりに理解していたつもりだったが……。
 一方的にジュリエッタにあしらわれているように見えるホン・ファとユイ・リィの動きでさえ、現象の目には、並の一族の動きよりは、だいぶん、洗練されているように見えた。
 直線的な手足の速さ、ということでいえば、二人のよりも機敏に動ける野呂の者は、いくらでもいるだろう。
 しかし、二人の体術は、手足の捌き方一つ一つに無駄がなく……流麗と表現しても、過言ではない。現象が知る限り、この二人以上に効率的に動けるものは、一族の中でも上位のわずか数パーセント程度だろう……と、現象は、思う。
 現象自身、昼間にかなり強烈な一撃を貰っているので、二人の少女の実力については、過小評価できなかった。

 そんな二人の「きれいな」動きをゆらゆらとかわし、中断させているのが、中心に起立している笑い上戸の酔っぱらい、ジュリエッタだった。
 ジュリエッタは、一撃一撃が必殺の勢いを持つ二人の攻撃を、一見していかにもやる気がなさそうな挙動でかわし、場合によっては軽く足を払って造作もなく二人を床に転がしている。ジュリエッタの動きは、一見すると、ひどく緩慢にみえる。「あんなんで、なんで二人のシャープな動きを阻害できているのだろうか?」と疑問に思うくらいに緩慢な印象を受けるのだが……現に、ユイ・リィとホン・ファの攻撃は、一度としてジュリエッタに届いていない。
「……先読み、なのか?」
 現象は、今までに見た三人の動きを頭の中で再生、解析し、ごく短時間でそのように結論する。
「先読みと、本能」
 現象と同じく、完璧な記憶力を持つ茅が、現象の意見にぽつりと同意した。
「ジュリエッタのは、半分、本能。
 攻撃の先読み以外にも、死角からの攻撃を察知している動きが混ざっているの。
 ジュリエッタの感覚は鋭敏で、勘もいいの。加えて、この状況を心から楽しんでいる」
 現象は、茅の言葉を頭の中で反芻しつつ、目の前で展開されている光景を検証し、呟く。
「天然……。
 野生動物か、あいつは……」
 ジュリエッタは、踊っているかのような、優美にも見える動きで、確実に二人の少女の攻撃をブロックし、受け流している。
 その表情を確認すると、確かに、茅のいうとおり、「楽しんでいる」ようにも見えた。
「伝説が正しければ、新免宮本武蔵は、片手に一刀づつ持って振り回す膂力の持ち主。流派として、後継者に恵まれなかったのも、武蔵自身が破格の先天的身体能力の持ち主だったから」
 規格外の武蔵に、同じくらい規格外の弟子が存在しなかったから、その技も正しく後生に伝わっていない……といった意味のことを、茅はいっている。
「先天的な資質に加えて、長い時間をかけて身体に染みつかせた体術もある……」
 茅は、ジュリエッタに関して、そう続けた。




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彼女はくノ一! 第六話(104)

第六話 春、到来! 出会いと別れは、嵐の如く!!(104)

「……ふぅ……」
 香也は個人宅の浴場にあるものにしては広大な湯船の中で手足を伸ばしながら、満足そうな吐息をついた。
 確かに、乱入の心配もなく、こうして入浴を楽しみ、寛ぐことができる、ということは、いいことなのだが……。
『……どうしたんだろうな、これは……』
 先ほど射精したばかりだというのに、お湯の中で、香也の分身は、起立していた。別段、香也が性的な意味で興奮している、というわけではない。
 先ほど、炬燵の中で楓の手によって出された後、確かに一度は萎んで非臨戦態勢に移行したのだが……服を脱いでお湯につかり、孫子の股間に押しつけられ、中にまで侵入していた自分の指先をしげしげと見つめながら、その時の感触を思い返したりしているうちに、またむくむくと力を取り戻しはじめた。
 香也にしてみれば、これまでの何度か経験も、たいていはどさぐさ紛れであり、冷静にそういう感触を確認する機会には恵まれなかったとなぁ……などと他人事のように思っているうちに、股間がそうなってしまった感じで、本人のつもりとしては、特にえっちな興味とかで思い返したつもりもないのだが……。
『……自分も……』
 所詮、若い男だな……と、香也は思う。
 ああいったことには、それなりに興味も意欲もある。
 しかし、同時に、本能に従って、求められるまま、惰性にながされ続けては、いい結果にはならない……とも、理性は告げている。
 自分で望む前に、競うようにして複数の異性から求められる……という現在、自分を取り巻く状況は、何も考えなければ、「理想的」といってもいいのだろうが……この手の関係で、一対多数、という数の不均衡は、社会的な通念からも逸脱しているし……それ以上に、こんなことを長く続ければ、香也自身の心身が持たない。
 事実、短期間のうちに、同居人の少女たちや樋口明日樹と関係を持つようになってからこっち、香也は、それ以前にはそれなりの頻度で行ってきた自慰行為を、ぴたりと停止している。
 欲望が蓄積する前に誰かしらが処理してくれるから、自分で処理をする必要がない、という側面もあったが、それ以上に、香也の意識の底に、性行為に属する事柄全般に対して、軽い嫌悪感のようなものが蓄積しはじめており、少なくとも、自分の意志でそういうことを為そう……という意欲は、ここ最近では、めっきり減退していた。
 めっきり減退していた……筈、なのだが……。
 香也は、そうした表層の意識に反して思いっきりいきり立っている、お湯の中の自分の分身を見る。
『……体は、体か……』
 一種の諦観も混じえて、香也はそんなことを思う。
 そもそも、香也のソコが、香也の意志通りにコントロール出来れば、これまでの不適切な関係の何割かは発生しなかった筈であり……。
 香也は、紛れもなく自身の一部でありながら、自分の意志ではコントロールできないソコをしばらく見つめたあと、こっそりとため息をついて湯船からあがった。
 香也の「自分の意志ではコントロールできないソコ」をしばらく擬っと見つめた後、湯船からあがって体を洗いはじめる。
 ごしごしと体をこすっているうちに、香也の「自分の意志ではコントロールできないソコ」は、自然に力を失ってうなだれた。

「……んー……」
 香也が風呂から上がって居間を覗くと、炬燵は料理や食器を天板の上に乗せたまま部屋の隅にのけられており、その周辺に大勢の人が集まっていた。
「……何、しているの?」
 部屋の隅に集まっていない少数派は、居間の中央で奇妙かつ、ハイレベルなじゃれ合いを行っている……ように、香也には、感じられた。
 各人の動きが早すぎて、香也の目では追いつけないので、イマイチ確信が持てないのだが……。
「おっ。
 来おったか、色男」
 イザベラが、妙に馴れ馴れしい態度で香也を手招きし、新しいグラスを握らせ、そこに一升瓶の中身をとぽとぽと傾けながら、簡単な説明をした。
「なんじゃ、そこの酔っぱらいがぱーっと騒ぎおって、アニメ見終わった二人のチビが絡んで、加納のと二宮のと最強の二番弟子が被害を食い止めておるってところかの」
「……んー……」
 香也がリアクションに困ったまま、グラスに注がれていく透明な液体を見つめている。
「そこからすぐに離れなさい、赤毛」
 と、すぐに孫子が、イザベラの手から一升瓶を引ったくった。
「この家に泊まるのなら泊まるで、さっさと入浴でも済ませてきなさい」
 真理や羽生の手前、かなり抑えた口調ではあったが、それでも孫子の不機嫌さは、しっかりと語気に滲んでいた。
「あー……。
 そう、だね……」
 羽生が、孫子の言葉を引き取る。
「この家、お風呂も広いから、気持ちいいよ。
 用事がないお客さんは、みんなで一緒に入ってくるといい」
「もうこんな時間か……。
 ま、そういうこったな」
 三島が立ち上がり、シルヴィやイザベラの手を取って立ち上がらせ、その他の、現在参戦していない少女たちや静流にも声をかける。
「ほれ、茅や三人娘、それに、そこの現象のお付きも、ついでに一緒に来い」
「茅は、見ている」
 そんな三島に向かって、茅は首を横に振る。
「この家には、泊まらないし」
「……それもそうか」
 三島は、茅の言葉にあっさりと頷いた。
「わたしらは、すぐ隣のマンションに帰るだけだもんな……」
 テン、ガク、ノリの三人は、静流やシルヴィ、イザベラの腕を引いて、居間の外に出て行った。
 香也は、イザベラが注いだグラスには口をつけず、スケッチブックを取りだして広げはじめる。
「描くの?」
 茅が、視線を逸らさずに香也に話しかけた。
「……んー……。
 そう……」
 香也は、早速、鉛筆を走らせながら茅に答える。
「昼間のも、あんまりよく見えなかったし……」
「……ホン・ファとユイ・リィの動きは、同門の師匠譲りですものね……」
 孫子が香也の言葉に頷く。
 ただし、二人とも、師匠のフー・メイほどには、動きに凄みがない。
 二人がかりで、得物を持たないジュリエッタ一人にいいようにあしらわれていた。
 



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「髪長姫は最後に笑う。」 第六章(362)

第六章 「血と技」(362)

 真理が突如出現した「楓」という、一般的な見地からみたら突拍子もない存在を特に抵抗なく受け入れたのには、間接的に聞いた予備知識として「荒野のような存在」のことを知っていたから、ということが大きい。もちろん、真理が先天的に「細かいことを気にしない」性格をしていたことの方が、要因としては大きかったのかも知れないが。
『……そういや、真理さんとこういうこと話す機会も、今までありそうでなかったな……』
 今さらながら、ではあるが、荒野はそんなこことを思う。
 この一家には、楓のことにもしても三人娘にしても、それに、かなりの頻度でこうして集会やら会議やらの場所をお借りしていたり……と、かなりお世話になっている。それにもにも関わらず、今まで真理の態度ががあまりにも泰然としているので、詳しい事情を説明する、という当たり前の手続きを踏むことを、荒野はすっかり忘れていた。
 真理にしても、こうして居間で一族関係の話しを聞く機会も多いわけで、断片的な情報はそこそこ得てはいるのだろうけど、例えば長期不在中の出来事などについては、誰も教えることなくこれまで来たのだろう。
『……これからは、ちゃんとフォローしておかなければな……』
 と荒野は思う。
 お世話になっている、という心情的な理由もあったが、荒野にとって真理は、「事情をよく知っている一般人の大人」として、かなり貴重な人材といえた。この複雑怪奇な状況下に、頼りになるアドバイザーは多ければ多いほど判断材料が増え、都合がいいし、そのためには、情報を出し惜しみするのは得策とはいえない。
 これで……。
『……判断が信頼できて、頼りになる一般人の大人、という知り合いは……』
 いそうでいないからな、と、荒野は横目でちらりと三島を一瞥して考える。

「……それ、その、悪餓鬼ども……と、おれたちが呼んでいる連中……について、真理さんは、どう思います?」
 早速、荒野は真理に向かって意見を聞いてみることにする。
 真理は、単なる一般人の主婦であって、アナライザーでも戦略や戦術の専門家でもない。
「……最初の……この現象を手駒に使った襲撃からこっち、まったく音沙汰がないのが不気味だし……正直、この沈黙期間をどう解釈すべきか、戸惑っているところなんですが……」
 だが……と、荒野は思う……こちらが掴んでいる情報は、これで一通り説明した所だし、施設の職員をしていた真理は、子供のことならよくわかっているいる筈だった。
 やつらを荒野たちが「悪餓鬼」と呼称している理由……行動の背後に垣間見える幼児性を考慮すれば、真理からなにがしかの拝聴に値する意見を引き出せる可能性、荒野たちが見落としている「何か」を指摘して貰える可能性は、それなりにある……と、荒野は考える。
「……悪餓鬼、ねぇ……」
 真理は、目を細める。
「確かに、いい子たちではなさそうだけど……根っから悪い子というのは、そうそういないものよぉ……」
 そうした真理の意見を、荒野は理想論とも詭弁とも受け取らない。
 荒野の経験からいっても、確かに、「生まれついての悪人」はほとんどいない。だが同時に、「生まれついての善人」というのも、ほとんどいないのだが。
 人がなす善行も悪行も、育った環境や放り込まれた状況などが大きく作用した結果、発露することが多い。
「……やつらは……やつらを育てた支援者は……」
 荒野は、ここで軽くため息をついた。
 何かを予測にするにせよ、今の時点では、判断をする材料が少なすぎる……ということは、荒野自身が痛感している。
「……一体何を考え、何を目的としているんでしょうね……」
 そう続けた荒野の口調は、ほとんど自問に近い。
 最近の荒野は、暇さえあればそのことを考えている。相手の目的さえ掴めれば、対応策も考慮しやすいのだが……目下の所、ヒントや糸口となりうるデータが、あまりにも少な過ぎる。
「……悪いコは全員、ぶった斬るといいよー!」
 突如、それまで静かにしていたジュリエッタが奇声を発した。
 その場にいた全員の視線がジュリエッタに集中する中、
「ああっ!
 いつの間に、こんなに……」
 舎人が、そんなことをいいながら、半分以上空になった一升瓶を持ち上げて振ってみせる。
「……他の人は、ほとんど口を付けていないのに……」
 ジュリエッタは日本酒がお気に召したらしく、ほとんど一人で五合以上、飲んでしまったらしい。
 ジュリエッタは「うぱーっ!」とか奇声を発して立ち上がった。
「ああ、もう! 話しをぶった斬ったのは、お前だってーの、このでか乳ラテン系女がっ!」
 がっ、と立ち上がった三島が、鋭い語気で指示を発する。
「楓とおっさん、さっさとこの酔っぱらいを取り押さえて簀巻きにでもしとけってーのっ!
 酒乱の二刀流が暴れ出したら、それこそ手に負えんぞっ!
 それから荒野っ! いつまでもうじうじたそがれてないで、お前もこっちに手を貸せっ! 際限なくグチってたって何も解決しないことをいつまでも、うじうじ、グダグダしているなっつーのっ!」
 三島がいい終わる前に、楓、舎人、荒野、それに、ホン・ファやユイ・リィまでもが弾かれたように立ち上がり、ジュリエッタの周囲を取り囲んだ。
「……はい、そっち持って……」
 テンが冷静な口調でガクとノリに指示し、卓上に並んでいる食器ごと静かに炬燵を持ち上げて、部屋の隅に待避させる。
 静流とシルヴィ、イザベラ、孫子、それに、真理と羽生、三島などは当然のような顔をして炬燵についていく。
 どうやら、これらの面々は、高見の見物を決め込むつもりらしい。
「……え?
 え? え?」
 事態の推移に思考がついていかない現象は、炬燵がのけられてもその場に座り込んだまま、首を左右に振っている。
「……なに?」
「逃げるなり、加勢するなり、さっさとどっちかに決めた方がいいぞ、現象」
 三島が、興味がなさそうな口調で指摘した。
 実際、三島にしてみれば、現象の去就など、他人事以外のなにものでもないから、積極的に興味が持てる、という事柄ではない。
「わたしは、高見の見物をさせてもらいます」
 現象がぐずぐずしている間に、梢の方は、すでに三島や真理たち、見物組に紛れっこんでいたりする。
 静流が真理から新しい湯呑みを借りて、新しいお茶をいれて、炬燵の周りにいる人々に配りはじめていた。

「……素手で、二人掛かりなら……」
 とかいい合いながら、ホン・ファとユイ・リィは、ジュリエッタ を挟撃する位置につき、じりじりと間合いを詰めはじめた。
 荒野や楓、舎人は、荒野が送ったさりげない合図に応じて、前衛をその二人に外側を固める位置についている。
 師父であるフー・メイと互角以上に闘った相手、ということで、ホン・ファとユイ・リィは、かなり気張っている様子だった。
 大勢に取り囲まれた形のジュリエッタは、緊張感の欠片もない様子で、ケラケラ笑い声をあげている。
「まあ、いい余興ではあるね……」
 ぽつりと、シルヴィがコメントした。





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彼女はくノ一! 第六話(103)

第六話 春、到来! 出会いと別れは、嵐の如く!!(103)

『……あっ……』
 香也は、孫子の手によってスカートの中に導かれた自分の指先が、湿った茂みに触れたのでひどく狼狽した。その場に真理や羽生や荒野、その他大勢の人たちがいたので、できるだけ平静な態度を保とうとつとめたが、一瞬、声をあげそうになり、慌ててそれを飲み込む。
 ちらりと隣に座る孫子の横顔を確認すると、この少女にしては珍しくぼおっとした表情で、頬を紅潮させている。
 香也が何も反応出来ないでいるうちに、孫子は、香也の手首と手の甲を両手でしっかりと押さえつけ、自らの秘部に香也の指先を接触させ、上下に揺すりはじめた。香也の指先は香也自身の意志には関係なく、孫子の陰毛をかき分けて、孫子が導くままに、孫子の隠唇に沿って上下しはじめる。
『……うわぁ……』
 と、香也は、またもや声をあげそうになるのを、あやうく飲み込む。
 指先に触れる孫子の奥はすっかり濡れていて……香也の指先は、孫子の秘裂にそってなめらかに上下した。
 ふっ。
 と、孫子が、軽く吐息を漏らす。
 人目があるため、ごく軽い吐息だったが、すぐ隣に座っていた香也には、孫子が、香也の指が自分の中心に触れている感触に満足した吐息だ……ということが、ありありと実感できた。孫子は香也の指を自分の襞にかなり強く押しつけながら上下させており、そこの奥から出てくる液体は、動きが激しくなるにつれて増しているようだった。
 香也は、これまでに実際に孫子を抱いた経験よりも、現在の、香也の指を使用した孫子の自慰じみた行為の方に、孫子の生々しい「女性」を感じた。
 いや。
 実のところ、これまでのどさくさまぎれの行為とは違い、人目のある現在の状況下の方が、香也としてもどこか冷静でいられた、というだけのことなのかもしれないが。

 自慰じみた行為、といえば、香也は、同時に、分身を楓の指に握られてもいた。
 最初のうち、炬燵の中でおずおずと遠慮がちに香也の分身を弄んでいた楓は、香也の「そこ」がかなりの硬度を保ったまま起立し続けていることを確認すると、徐々に激しい動きで香也の分身を刺激しはじめる。
 香也自身を柔らかく握りしめた楓の指は、最初のうち、どうしたらいいのか戸惑うような頼りのない動きをしていたが、そのうち、緩く握ったまま、上下に動かしはじめた。楓が適切な力加減を知らなかったため遠慮したのか、握力はさほど籠もっておらず、当初は頼りないくらいの感触だったが、すぐに楓は手の動きを早くしていき、香也はすぐにこれまでに体験したことのない感触に襲われた。
 香也自身が自分でする時より握りは弱いが、代わりに、楓の手の動きは、香也のそれとは比べものにならないくらいに、早い。
 ああ。
 と、香也は思う。
 ……楓ちゃんに、自慰行為をして貰っているようだな、と。
 それに、孫子も、自分の指を使って自慰をしているようなもので……。
 いや、それぞれ、他人の指を使って慰めているわけだから、厳密にいうと「自慰」というわけではないのだが、こうして他人の目がある中で本来の性行為に結びつかない疑似的な愛撫の連鎖を行い続けているのは、どこか間が抜けている割には倒錯的で、さほど強い快楽や射精感の高ぶりを感じたわけでもないのに、気づくと香也は楓の指の中に精を放っていた。
 発射した、というよりは、気づくと漏れていた、という感じの勢いのない射精で、香也の分身を刺激していた楓も前兆に気づけなかったのか、指に香也が放った粘液を感じると同時にかすかに身じろぎし、素早く香也の亀頭を掌で包み込むように、手指の形を変える。
 雰囲気と異常なシュチュエーションに応じて精を漏らしてしまった形の香也は、たいした快楽を受けていない割には、楓の掌に精液をぶつけるようにして、随分長々と精を漏らし続けた。
 ここ数日、自分でやっていなかったこともあって、随分と止まっていたらしい、とか、今、炬燵の中はすごい臭いになっているんだろうな、とか、そんなくだらない考えが、香也の脳裏に浮かぶ。
 それから、はっと気づいて自分の手首を押さえている孫子の手をそっと掴む。
 孫子は、やはり微かに身じろぎしたが、香也が炬燵の中で孫子の手を外して、孫子の股間に押しつけられていた香也の指をそこから離すのには、抵抗しなかった。ただ、孫子は、香也の手が完全に孫子のスカートの中から抜け出すと、香也の肩に自分の頭を乗せ、もたれかかっててきた。
 そうしている間に、楓は、炬燵の中でゴソゴソと手を動かしている。社会の窓から飛び出している、また硬度を失っていない香也の硬直に、柔らかい布状のものが押しつけられ、丁寧な動きで拭われる感触。おそらく、楓は、とっさに持っていたハンカチで、香也の男性を拭っているのだろう、と、香也は悟った。
 いまさらながら、どんでもなく奇妙な関係だよな……と、香也は、現在の自分たちのことについて、そう思う。
 手探りで楓の手をどけて、香也が自分の手で、まだ大きさが収まっていない股間のものを何とかジッパーの中に収めるとほぼ同時に、何やら熱心に話し込んでいた荒野が、香也、楓、孫子の三人の様子がおかしいことに気づいたのか、
「どうした?
 体調でも悪いの?」
 と声をかけてきた。
 香也の体に密着していた楓と孫子が、弾かれたように香也から上半身を離し、
「……んー……」
 香也は、その隙を逃さずに炬燵から足を抜き、身を起こした。
「お風呂」
 と短く言い残し、さっさと居間を立ち去る。
 お客さんも大勢来ているから、今夜は乱入とかはあり得ない。ゆっくりと風呂に入れそうだ……とか、そんな身も蓋もないことを考えていた。
 逃げるように居間から出て廊下を歩きながら、香也は、「自分たちの関係も、そろそろ本気でどうにかしなくては」とか、柄にもなく思いはじめている。香也自身は男女の関係とか健全な交際とかにあまり興味はないのだが、現在、自分を取り巻く環境がアブノーマルなものであることは、流石に自覚してはいる。炬燵布団に隠れて、とはいえ、あれだけの人たちの前で三連結自慰的愛撫をするような関係が、正常である筈がない。仮に、香也たちが道理を弁えた大人同士であり、当事者同士が納得の上、そのようなプレイを楽しんでいるのだとしたら……世間は広いから、ひょっとしたらそういう嗜好の人たちがどこかにいるのかもしれないが、少なくとも、香也自身はそのような趣味の持ち主ではない。自分もそうだし、楓や孫子にとっても、現在のような不安定な関係が長引くことは、いい傾向とは言い難いと思うし、それに、自分たちだけの問題ではなく、年少のテン、ガク、ノリの三人に与える影響とかを考慮すると、もっと「よくない」……と、香也は思う。
 基本的に香也は、あまり世間体とか社会とかを意識する人格ではないのだが、最近になって深く関わる人数が増えてきたため、自分の言動が周囲に与える影響について、それなりに考えるようになってきていた……。

 



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エロアニメ

「髪長姫は最後に笑う。」 第六章(361)

第六章 「血と技」(361)

「……い、いえっ!
 何でもないですっ!」
 荒野の言葉に反応して、楓が弾かれるように上体を香也から離した。
 とはいえ、「密着」の状態からほんの数センチの隙間を空けた状態に移行しただけ、なのだが……。
 楓と同時に、香也の身体を挟んで反対側で密着していた孫子も、楓と同様にほんの数センチだけ、香也の身体との間に隙間を空ける。
 三人とも、何故か、少し顔を赤くしていた。
 ……まあ、仲がよい分には、咎める必要もなかろう……と、荒野は判断し、その三人から視線を外して元の話しの続きに戻る。
「まあ……そんなわけで、ひじょーに微妙かつ絶妙な状態の上で、おれたちの現在の生活が、成り立っている訳で……。
 だから、さ……」
 ……なるべく、面倒なことは起こすな。
 と、荒野はいつもの「訓示」を強調する。
 荒野の認識に立てば、この点は、一族の新参者に、いくら強調しても足りないくらいだった。
「……わーとる、わーとる……」
 力の抜けた声でそう応じたのは、イザベラである。
「わしゃ、面白ければそれでええのんでの。
 今のここの状況は、そのままでも十分に面白そうじゃ……」
 といい、イザベラはちらりと香也、楓、孫子の三人の方に視線を走らせた。
 三人は、ついさきほどまでのように一塊になって密着はしていないものの、香也を中心にして微妙な間隔を挟み、至近距離に寄り添っている。
「……現状は、把握しました」
 軽く頷きつつ、生真面目な口調で返答したのはホン・ファだ。
 すぐに続けて、しみじみとした口調で、
「でも……その……若も、苦労しているのですね……」
 といわれてしまい、荒野としては返答に窮してしまったが。
「今まで、あまり詳しいことを聞いてこなかったけど……」
 と前置きして、真理が寄り詳細な情報を要求してきた。
 今まで楓や荒野、テン、ガク、ノリたちを巡る一連の事物に対して無関心すぎた、という反省があったからだろう……と、荒野は真理の心理を想像する。
 真理にしてみれば、楓や孫子、テン、ガク、ノリは、心情的にはすでに「うちの子たち」だ。真理の性格と普段の態度を見ていれば、そう思っていることは容易に想像がつく。その「うちの子たち」が、これから場合によっては危ない目にあうのかも知れない……ということになったら、これは、詳しい事情を知りたがるな、という方が無理というものだ。
 荒野にしても、真理には背後の事情までを含めて、真理に知って置いてもらった方がいいと判断し、知っている限りことを詳細に、最初から順序立てて説明しはじめる。むしろ、真理や羽生に対して、今まで、機会をつくってこうした説明をしてこなかったことの方が遅すぎた。不自然、というより、荒野の怠慢のせいでもあったのだろう……と、自嘲も込めて、そう思う。

 荒野が茅やテン、ガク、ノリの出自から初めて現在に至るまでの出来事をできるだけ丁寧に、順を追って説明しはじめると、真理と羽生は神妙な顔をして耳を傾けていた。
 時折、三島、舎人、現象が荒野の長々しい説明にそれぞれの立場から見た知見を付け加えて、補足する。
 聞き役になっていた真理、羽生、イザベラ、ホン・ファたちも、その場に居合わせなかった人間として理解しにくい部分を口にし、荒野により詳細な説明を求めたりした。
 その途中で、香也が「お風呂」と一言いい残し、楓と孫子の間から抜け出して席を立つ。楓と孫子は、神妙な、それでいてどこか満足そうな表情で黙って香也の背中を見送っていた。

 そうこうするうちに時間は経過し、羽生が持ち込んだアニメ映画のDVDも再生し終わる。
「……それで、荒野君たちや茅ちゃんは……とりあえず、どうしたいの?」
 荒野の説明による「現状までの報告」が大方終わったところで、真理がそう尋ねてきた。
「どうしたいのか……といわれれば……とりあえずは、普通に学校に通って普通に卒業したいですね、おれとしては……。
 今のところ、それ以上のことは、考えていません」
 荒野の口からごく自然にそんな言葉が返される。
 口にしてみれば実に慎ましい欲求だが、これまでも一族の関係者に同様のことを答えてきたし、荒野の本音でもあった。
 それに、現在の荒野たちを取り巻く状況が、ここまで複雑な様相を見せてくると、不確定な要素が多すぎて、あまり遠い未来のことまで思いをはせても仕方がない、という気もする。
「……そうよねえ……」
 と、質問した方の真理も、軽く天井に視線を泳がせる。
 真理にしてみても、荒野の性格は、ある程度把握しているので、荒野の返答は予想した範囲内のものだった。
「でも……その、正体不明の悪い子たちの件がなくても……あの、こうしていろいろな人たちがいっぺんに集まってくると……不測の事態も、起こりやすくならない?
 大人でも、価値観が違う人たちが狭い場所に集まってくると摩擦が起こり易くなるのに……大半は、うちのこーちゃんと変わらないような子たちなんでしょ?」
 そういって真理は、ゆっくりとその場にいた「一族の関係者」たちをゆっくりと見渡し、意外に鋭い意見を述べた。
 荒野も、真理の視線を追うようにして、ぐるりとその場に居た一同を見渡した。
「二宮」の舎人。「佐久間」の現象と梢。「野呂」の静流に、シルヴィやホン・ファ、ユイ・リィなどの「姉崎」たち……。
 現在同室している人間だけに話しを限定しても、「加納」である荒野自身を含めて、六主家のうち五家の人間が、勢揃いしている。
「うちの人、政情不安定なところぶらぶら歩き回るのが好きだから、自然とそういう話題にも敏感になるんだけど……この町に来た荒野くんの、その、仲間の人たちの間で、摩擦とか衝突とかは起こらないの?」
 真理は、即答できない荒野に向けて、そう続けた。
 真理のいう「うちの人」つまり、この家の不在の主人である「狩野順也」氏は、確かに政情不安定な土地を放浪する生活を送っていて、ン年前、その土地の反政府ゲリラに拘束されていた順也をその場に拘留されていた人たちと一緒に荒野が解放した、という経緯もある。
 荒野にしてみれば、当時の仕事を遂行するついでに行きがけの駄賃としてちょっと手を出してみた、というところだが、順也は手紙でことの次第を詳細に真理に伝えていたらしく……真理は、荒野がこの家に顔を見せた当初から、荒野のことを漠然と知っていた。
 荒野が真理から見せて貰った手紙の中には、荒野の特徴を良く捉えた似顔絵も添えられていた。




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彼女はくノ一! 第六話(102)

第六話 春、到来! 出会いと別れは、嵐の如く!!(102)

 いつの間にか、荒野が新参者のイザベラやホン・ファに向けて、現象が学校に乱入してきた時の話しをしはじめていた。
 香也にしてみてもその場に居合わせていなかった出来事であり、荒野の話す内容にもそれなりに興味はあったのだが、その出来事があった時、さて自分は何をやっていたか……ということを思い返すと、荒野の話しに聞き入ることが心身的に可能な状態にはないのであった。
 ……特に、下半身が。
 既にパンパンに膨れ上がっていた香也のその部分は、楓と孫子が競うようにして股間のジッパーを押し下げ、開いたことで、ピョコンと外に飛び出た。
 その勢いを予期していなかった楓が、「きゃっ」と声を上げそうになるが、危ういところで自分の口を掌で覆い、そっと周囲を伺う。
 幸い、みんな荒野の話しやテレビに夢中であり、楓の挙動に異常を感じ、こちらに振り返った者はいなかった。
 香也は背を丸めていたし、楓と孫子が事あるごとに香也にひっつくのは今となってはごく普通の光景だった。だから、居間に居合わせた人々は、一体となって固まっている三人の様子を特に訝しがることもなく、ごく普通の光景として認識しているらしい。

 しかし、炬燵布団の下では、香也のナニを巡って熾烈な戦いがはじまっていた。
 先程、楓と孫子は同時に香也の股間に手を延ばしていた。当然、二人の手は、そこで触れ合う。すなわち、楓と孫子は、この時点でお互いに、二人して香也を身体に刺激を加えていたことに気づいた、というわけで……香也にとっては迷惑この上ないことに、二人は、競うようにして、香也が感じそうな部位を手で探りはじめる。
 香也の方は、二人に挟まれて肩を密着しているのと、現在の時点で既に股間を全開にして、炬燵の中で自分の分身を露出させている状態であり、即座に立ち上がって逃げるさえ容易に出来ない。
 さらに加えて、現在では、素早く現状を把握した楓が孫子の手の動きに打ち勝って、しっかりと香也の分身を握り締めている。
 日常の場では、どちらかといえば控えめな楓は、有事の際には驚くほど大胆な決断を下し、果敢に行動に動かす側面もあった。楓にとって……香也の(下半身も含む)を巡る争奪戦は、十分に「有事」と呼ぶのに値した。楓の心境としては、香也と「二人きりでない環境下において」性的な雰囲気に流れる、または流れそうになる、というのは、「臨戦態勢に移行する」のとほぼ同義であり、当面の対抗者が孫子であれば、なおのこそ遅れをとる訳にはいかなかった。
 とっさに香也自身を握りしめた楓は、熱さと硬さに戸惑ったのもつかの間、すぐに「今、自分が成すべきこと」を意識し、そっと香也の肩に頭を寄せ、分身の輪郭を両手の指先で確かめるように、まさぐる。
 楓は忙しく思考を回転させ、今、この場で香也に必要なのは何なのか……を、賢明に想像しようとした。
 考えるまでもない。
 今、香也が本当に必要としているのは……楓の手の中ですっかりいきりたっている香也の分身の硬直を解きほぐし、香也に行動の自由を与えることだった。
 問題なのは……。
 楓は、さりげない動作で周辺を見渡す。
 問題なのは、今現在、この居間には、香也と楓以外にも、大勢の人間がいる、ということだ。

 香也は男性だし、香也のいきりたった男性を小さくするためには、一度、欲望を発散させる必要がある。楓のあまり豊富とはいえない知識と経験によっても……いくら、炬燵に香也の下半身が隠れているとはいえ、これだけの人数が居合わせる中で香也がこのまま欲望を解放したら、少なからずそうと気づく人物も出るのではないか……といったことを心配する程度の理性は、残っていた。
 薬物の影響に流された過去の事例とは違い、今回の楓は、比較的冷静である。
 楓は、ちらりと横目で香也を挟んで反対側の肩に頭を寄せている、孫子の様子を伺う。
 楓に機先を制された形の孫子は、香也の肩に頭を預けながら、何故か、うっすらと頬を染めていた。

 孫子は、間一髪のきわどい差で、香也の分身を楓の手に奪われた形となった。
 やはり、とっさの際の動きに関しては、孫子よりも楓の方が素早い……と、認めざるを得ない。
 しかし、そこで全てを諦めるほど、孫子は殊勝な性格をしていなかった。炬燵布団の下で香也手首を探り、握り締めて、自分の大腿の上に導く。
 香也の掌が孫子の腿の肉の上に置かれると、香也が、微かかに身震いをした。痩せて見えるようで、孫子のその部分は、確かに香也の掌を押し返す弾力を持っている。
 孫子は、微かに腰を持ち上げて、下半身が炬燵布団に隠れているのをいいことに、履いていたスカートを大きく捲りあげて香也が触り易いようにした。この日、孫子が履いていたスカートは裾が膝前後に届く程度であり、加えて、比較的タイトなものだったので、この場で香也に自由に自分の下腹部を触らせるのには、捲り上げるのが一番手っ取り早い……と、孫子は判断した。
 孫子は、的確な判断力とその判断を即座に実行させる果断さを持ち合わせており、なおかつ、香也の温もりを欲している気持ちもあった。
「……ねぇ……」
 孫子は、香也の手を取って自分の股間に導きながら、頭を香也の肩に寄せて、香也の耳にだけ入る小声で、そう囁いた。
「……好きに触って……ください……」
 小さな声だったが、ねっとりと媚態を含んでいた。

『……あっ……』
 ひとしきり、香也の輪郭を確かめるように指を這わせた楓は、心中で感嘆した。
『……大きい……。
 それに……』
 こんな形をしているんだ……と、楓は思った。
 今まで、幾度か関係を持っている訳だから、香也のソコの形状について、楓が知らない筈がない。しかし、行為の最中はいつだって無我夢中で、心理的に余裕がなかったのも確かな事であり……これほど冷静に、ゆっくりと香也のそこをまさぐるのは、楓にしてもほとんど初めてのことだった。
 楓は、自分の指の中でビクビクと脈うっている香也を感じながら、次第に、静かな興奮を覚えはじめていた。
 



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