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2007-08

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「髪長姫は最後に笑う。」 第六章(360)

第六章 「血と技」(360)

「奴らの目的が何であれ……おれたちにしてみれば、奴らは撃破する敵、というより、邪魔な障害物なわけで……」
「……勝ち負けより、どうやって排除なり無効化するべきかを考える対象……とうことじゃな?」
 イザベラが、荒野の返答を予想していたように頷く。
「加納が考えそうなことじゃ……」
「甘いと思うか?」
 荒野は、イザベラに聞き返す。
「いんや」
 イザベラは、即座に首を横に振った。
「加納の。
 おんしが出来そうだと判断したんなら、おそらく大丈夫じゃろ。おんしは、同世代の中では飛び抜けて実戦経験が豊富で……おまけに、あの最強の弟子じゃ。ついこの間まで、たった一人だった……」
「判断力も、実力も……若い世代の中では、飛び抜けている存在だと思います」
 ホン・ファも、生真面目な表情でイザベラの言葉に頷いた。
「……加納は、早熟じゃからの……」
 イザベラが、自分に言い聞かせるように頷いた。
「経験、ということでいえば、同年輩のものより、五年分は余計に蓄積しているんじゃないかの……」
「密度……ということでいえば、その倍はあると考えてもいいでしょう」
 ホン・ファも、まともに荒野の方を見据えながら、付け加える。
「パイランの逸話がすべて、本当のことなら……」
「……あんまり、買いかぶって貰っても困るんだがな……」
 荒野は、困惑した様子で苦笑いを浮かべた。
「荒事の現場と、現在、ここで進行している状況に、的確な判断で介入する、というのとでは……まるで、勝手が違う。
 正直……いつもいつも、これでよかったのかと、振り返ることばかりだよ」
 目の前の出来事にさえ、即座に処理していればなんとかなるのと、五年先、十年先を見越して判断を下すのとでは……まるで勝手が違う。
 目下のところ荒野に必要とされているのは、そうした長期的な影響までも含めて判断を下す能力であり……荒野自身は、そうした分野についての自分の適性について、まるで自信が持てないでいた。
「それでも……」
 イザベラは、指摘する。
「……今のところは、うまいこといっておるんじゃろ?」
「……まあな」
 荒野は、軽く肩を竦めて認めた。
「でも、それも……正直、おれの手柄というより、偶然に頼るところが大きかったと思う」
 謙虚、なのではなく、紛れもなく、荒野の本音だ。
「……例えば、そこの現象がはじめて学校に乱入してきた時なんかも……学校に、大清水という先生がいて……」
 荒野は、その時の出来事を掻い摘んでイザベラとホン・ファに話してみせた。この二人は、事前に荒野についての情報を独自に収集し、「自習」してきたような素振りもみせていたので、おそらく、概要については既知のことだったのだろうが……それでも、当事者である荒野の語りには、それなりに得るところがあるらしく、神妙な顔をして聞いている。この二人以外に、テレビに気を取られながらも、ジュリエッタとユイ・リィも、荒野の話しを聞いている気配があった。酒盛りをしていた大人組のうち、真理と羽生も真剣に荒野の話しを聞きはじめたので、しばらくは、その場にいた面子の大部分が、神妙な顔をして荒野に言葉に耳を傾けていた形になる。
 当事者でもあり、当時の出来事について情報を交換したり話し合ったりする機会の多かった茅や三人組にとっては、荒野が話す内容は新鮮なものではなかったので、テレビに再生された映像から注意を逸らすことはなかったが……それ以外の人々は、それなりに気を入れて荒野の話しに聞き入っていた。
「……その時居合わせた教員が、あの先生じゃなかったら……」
 一通り、必要なことを話し終えた荒野は、ゆっくりと首を振った。
「おれは、おれたちは……今頃、ここにはいなかった。いられなかった。
 だから、そういうのは……断じて、おれたちの実力ではなく……」
 ……運が、よかったんだよ……と、荒野は呟く。
 荒野の、偽らざる本心だった。
「……運も、実力のうちじゃ……」
 イザベラが、そう感想を述べた。
「現に……こんだけ複雑な状況下で、うまいこといっておるじゃろ……」
「そうです」
 ホン・ファも、イザベラに便乗するように頷く。
「……現に……若い世代を中心に、一族の者が、この土地に集まってきているではありませんか……。
 それは……ここで起こっていることが、これからの一族の行く末を占うことになるかも知れない、ということを、肌で感じているからです……」
「……そ、そうです……」
 静流も、おずおずと口を挟む。
「契機となった事件はどうあれ……一族の在り方そのものを、変えてしまうような……か、可能性を感じた人が、い、今、こ、ここに集まってきているわけで……」

「……そう。
 そんな大変なことが……」
 荒野の話しを聞き終えた真理も、そっと呟く。
「それって……いつのことなの?」
「ガクのやつが入院したことがあったろ? そん時のことだな」
 三島が即答する。
「真理さんは、確か、しばらく留守にしていた時だとおもったけど……あれ?
 真理さん、誰にも、あの時のこと、聞いてない?」
「聞いてません」
 真理は、きっぱりと答えて、羽生に顔を向けた。
「……ガクちゃんが、何日か入院していたことは聞いていましたが……。
 羽生さん!」
「はっ! はいっ!」
 羽生が、ピンと背筋を伸ばす。
「……後で、ゆっくりとお話しをしましょうね……」
 真理が、笑顔を崩さずに、羽生に話しかける。
「……はっ!
 あとでっ! ゆっくりっ!」
 何故か敬礼して、羽生は復唱した。
 羽生は、その時の真理のにこやかさを本気で怖いと思った。
「……お前さん、真理さんに何も説明してなかったのか?」
 小声で、三島が羽生に囁く。
「説明も何も、今、初耳のことが多くて……」
「お前さんも、アレだ。
 いい加減、細かいことにこだわらないところがあるからな……」
 そういえば、ガクが入院した時も、「数日で退院する」ということが判明すると、羽生はそれ以上、子細な事情を聞こうとしなかった。その情報を告げたのが三島であり、安心した、というのはあるのだろうが……それでも、その後、まったく他の同居人たちに、事情を聞こうとしていない、というのは、確かに、真理の留守中の保護者代行としては、大ざっぱというかうかつすぎる。
『……こいつも、アバウトなところがあるからなぁ……』
 と羽生について三島は思い、そうした一連のやりとりを見ていた舎人は、同情の籠もった目つきで羽生を見ていた。

 いつもなら、反応がある筈なのだが……と、荒野はすぐに気づき、香也と楓、孫子の方に視線をやる。三人は、ぴったりとくっついてひとかたまりになっていた。
 より正確にいうのなら、香也を中心にして左右から、楓と孫子が身を寄せている……という形なのだが……。
「どうした?
 体調でも悪いの?」
 すぐに香也の様子がいつもと違うことに気づいた荒野は、すぐにそう声をかける。




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彼女はくノ一! 第六話(101)

第六話 春、到来! 出会いと別れは、嵐の如く!!(101)

 それからもイザベラは、荒野や孫子とともに、この土地で現在進行中の状況について、質問を重ねつつ、多面的に分析してみせた。イザベラは、ここで事情について事前に集められるだけの情報を集めて来たらしく、新種たち以外の孫子や楓についても、かなり詳しい知識を持っていた。
 イザベラは父親がかなり巨大な企業グループのトップだとかで大局的な考え方ができるらしく、そうしたイザベラが荒野や孫子と一緒にかなりつっこんだことを話し合いはじめると、そもそも、状況を俯瞰して見て判断を下す、という習慣がない楓は、誰かに意見を求められない限り、自分から発言するということもなく、自発的に聞き役に回ってしまう。ここでも、楓がこれまで一方的に「命令をされる立場」に自分を擬して、統合的な判断力を養おうとしなかったことが足かせになった形だが、楓は、そのことについて、あまり悔しくは思っていない。
 何故なら、すぐとなりに香也が座っており、両手を炬燵蒲団の中につっこんで、所在なげに荒野たちの話しを聞いているから。
 正直にいうと、現在の楓にとっては、多少なりとも想像力を働かせなければ見えてこない、そうした抽象的な議論よりも、香也がすぐそばに居る、という事実がもたらす安心感の方が大事だった。
 楓は、自分でも気づかないうちに隣りの香也の一層、身体を寄せて、炬燵布団の下に隠れているのをいいことに、香也の膝の上に自分の掌を置いている。後者の行動は、無論、意図的なものである。
 イザベラに向かって持っていたスケッチブックを差し出した後、炬燵布団の中に両腕を突っ込んで背を丸めていた香也は、楓の掌が自分の膝の上に乗っかると、少し身体を震わせたが、特にいやがるそぶりも見せず、ただ、恥ずかしそうな曖昧な笑みを顔に浮かべ、顔をうつむけにした。
 香也のそのリアクションを「了解」の意志と解した楓は、さらに大胆に、香也の太股のあたりを掌でゆっくり撫でさする。楓にしてみれば、特にエロティックな意図があったわけではなく、香也の身体のどこかと直接、接触することで、香也との距離を確認したかっただけだが、香也は俯いたまま、少し頬を赤らめた。今までさんざん、楓たちとあーんなことやこーんなことをしてきている。それに、香也は、決して楓を嫌っているわけでもないのだが、目下の所、テレビの前に集まっている精神的お子様組とすぐ目の前で酒盛りしている成人組……といった具合に、居間には多数の人間がひしめいている。
 何より、楓の反対側には、すぐそこ、それこそ楓に匹敵する密着度で、孫子が、「ぺた」っと隙間なく香也の腕に絡みついている。
 人目がありすぎる状況だし、加えて、楓と孫子に左右から密着されている香也には、逃げ場がないのであった。
 いや……風呂とかトイレとか口実を設けて、とりあえず、その場から逃げだそうかな……などと香也が考えはじめるとすぐに、その考えを見透かしたように、孫子が、さわっ、と、炬燵布団に隠れて見えない部分で手を動かし、香也の腿を撫でさすりはじめる。
 一瞬、香也は、また楓への対抗意識を発動したのか……と思ったが、ちらりと確認すると孫子は香也の腕にぐったりと体重をあずけているだけで、特に怒ったり憤ったりといった表情はしていなかった。ただただ、リラックスをした表情で、香也に身を預けている。たまたま、香也のが側にて手持ち不沙汰だったからそうしている……といった態であり……つまり、香也の反対側の腕に密着している楓とまったく同じく、「対抗意識」とかはまるでなく、まったくの自然体でそうしている……ように、見える。
 楓だけではなく、その場にいる香也以外の人間を意識の中から排除しているらしかった。いわゆる、アウト・オブ・眼中。周囲にこれだけの人数がいるのにも関わらず、彼女らは、それぞれ、「自分と香也」のことしか、意識していない。
 あるいは、常時多人数の人間がいることが多いここ最近の香也の境遇に、彼女らが適応しつつあるのかも知れないが……問題なのは、香也の両脇から二人が密着して、さわさわと香也の腿とか腰のあたりをまさぐりはじめたことだった。
 香也は、可能な限り平静な態度を装っていたが、実のところ、先ほどから下半身がきっちりきっかり反応していた。香也だって若い男性である。両脇から柔らかくていい匂いがして服の布地越しにでも感知できる熱い身体に密着されれば、すぐさま反応してジーンズの布地を大きく持ち上げてしまう。一度そうなってしまえば、その反応が収まるまで、これだけの人数が集まっている中、さりげなく居間を退出する……ということも、難しかった。
『……んー……』
 香也は、平静を装いながらも、出来るだけ両脇に密着している楓と孫子の存在を考えないように努めた。
 ……無駄、以外の何物でもなかったが。
 香也が抵抗もしないでかたまっているのをいいことに、楓と孫子の動きはさらに大胆になっていき、密着度もすごいことになっていく。
 今や、楓と孫子は、ぴったりと隙間なく香也の身体に張り付いていた。
 二人にしてみれば、特にエロティックな衝動があってそうしているわけではなく、ごく自然体で香也の存在を感じたいから、そうしているだけだった。その証拠に、二人の呼吸は乱れていなかったし、体温も上がっていない。
 つまり、しばらくは、真ん中にいる香也だけが、困惑してかたまっていて、両脇の楓と孫子はリラックスした状態で「ぴたっ」っと香也の両脇に張り付いている……という状態が続いた。
 真理や羽生、三島を中心とした年長グループと、荒野とイザベラ、ホン・ファのグループは、それぞれの話しに夢中になっていたし、それ以外の子供たちとジュリエッタは、DVDを再生しているテレビに注意を奪われていて、香也の異変に気づいた者はいない。香也自身が、出来るだけいつもと変わらない様子を保持しようとしていたから、当然といえば当然だったが……。
 他の人たちから見えないように、香也の身体をまさぐっていた楓と孫子が、香也が勃起していることに気づくのには、さほど時間がかからなかった。というか、多少なりとも時間がかかったのは、このように人の多い場所では、流石の二人も香也と性的なあれこれをつるつもりはなく、故に、香也の股間までには手を伸ばすことはなかったからだ。
 だが、二人は、すぐに、香也がぎっちりと筋肉に力を込め、何かに耐えるようにして固まっていることに気づき、それから、ようやく香也の股間の布地が持ち上がっていることにも気づき、男性の生理に思い当たる。
 二人がそのことに気づいたのは、やはりほぼ同時だったが……迂闊なことに、二人とも、自分たちが香也に身を擦りつけたりあちこちをさすったりすることで、香也がそういう状態になる……という想像力を欠いていた。
 今までさんざん、あーんなことやこーんなことをやってきている身だが、二人とも、男性の生理現象については、想像力を欠いている傾向がある。
 というか、二人とも、なんとなく、「自分たちが積極的にそうしむけなければ、香也は反応しない」みたいな認識を持ってしまっている。イニシアチブを持っているのは自分たちだ……みたいな。
 ほぼ同時に香也のソコがそういう状態になっているのを知った二人は、香也の両脇から、
「……あっ……」
「……こんなに……」
 とか、小声で囁いて、ほぼ同時に香也の股間に手を差し伸べて、そこのジッパーを下げ、怒張していた中身を外に出し、楽にした。





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