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「髪長姫は最後に笑う。」 第六章(175)

第六章 「血と技」(175)

「もちろん、この推測は……判断材料となるデータが大きく不足しているから、まるっきり的外れ、という可能性も高いけど……。
 例えば、東雲が、茅が知らないような特殊な技能の持ち主で、その気になれば、小埜澪をいいようにあしらえるのかも知れないけど……でも、暗示や洗脳など、人の意識を操作することに長けた佐久間の者なら……二宮の上位者がどれほど驚異的な戦闘能力を持っていたとしても、さして苦にはならない筈なの……」
 茅は、そう続けた。
「……ま、辻褄は、合ってはいるね……」
 そういって荒野は、肩を竦める。
 その態度からは、茅の判断を指示するのか、それとも否定しているのか、判断がつけられなかった。
 と、いうより……当の本人である東雲目白が目の前にいるから、あえて意見を保留している。
 東雲当人が茅の説を認めるのなら、相応のリアクションを行うだろう……と。
 それに、特に敵対もしていないのに、当人が秘匿している能力や技能を暴き立てる、ということは、一族の規範に照らしても、不作法でマナー違反とされている。茅があれこれいう分には非難されることはないだろうが、荒野自身がその尻馬に乗って騒ぎ立てると、後々、一族内での荒野の立場や印象が、悪くなるおそれがあった。
 酒見姉妹と甲府太介は、荒野ほど泰然していられなかった。
 酒見姉妹でさえ、驚愕の表情で眼を見開いているし、甲府太介に至っては、反射的に立ち上がり、座っていた椅子を倒していた。しかも本人は、そのことに気づいていない。いや、椅子のことなど意識できないほどに、驚いている。
『……無理もないか……』
 と、荒野は思う。
 荒野にしてからが、「佐久間の実物」を実際に眼にしたのは、この土地で暮らしはじめてからだ。
 源吉を皮切りに、一度、出合いはじめると、現象、静寂、と、立て続けにさらに二人の「佐久間」と顔を合わせることになったが……一般的に「佐久間」は、一族内での影響力が巨大な割に、実態の判然としない集団で、「佐久間」以外の者が、「佐久間」と直接接触することは、かなり珍しい。
「ここで答え合わせをすることは、止めにしておきましょう……」
 当の東雲目白は、周囲の反応を見渡して、にやにやと笑っている。
「……ま……。
 姫様が予測した通り、わたしゃ、うちの嬢ちゃんのようなパワーファイターではありませんが、今、この場にいる皆様全員を相手にしても、互角以上にやり合える能力を持っている、と、自負しております。
 今朝のように、お嬢ちゃんの火遊びにいちいちつき合わないのは……不用意にわたしが参加すると、こっちに有利になりすぎて、面白くない結果になることがわかりきっているからで……」
 東雲のにやにや笑いは、絶対の自信を含んでいるからこその余裕の笑い、とも受け取れ……「茅がいうような可能性も、ありだろうな」と軽く受け止められる荒野はともかく、こうした場の雰囲気に慣れてさえいない、甲府太介などは、緊張で顔からすっかり血の気が引いていた。
 酒見姉妹は、時折荒野に目配せをして、荒野の指示を仰ぐような挙動を見せている。荒野の号令一つで、いつでも東雲に襲いかかりますよ……というジェスチャーを、酒見姉妹は、荒野と東雲に、見せつけていた。
 荒野自身は……そもそも、東雲とか小埜澪と敵対しなければならない理由がない。
 だから、酒見姉妹の「荒野に対する提案」兼「東雲に対する牽制」は、見て見ぬふりを決め込んでスルーした。
「……では、その件については、それまで、ということで……」
 ……こいつらも、たいがい、血の気が多いよな……と、酒見姉妹のことを思いながら、荒野は、話題を変える。
「……後もう一つ、東雲さんがいう、先代、という人についてですか……これ、おれが茅に解説しちゃっても、いいですか?」
 荒野が、東雲に確認する。
 東雲は、にやにや笑いを浮かべながら、「どうぞ、どうぞ」と軽く荒野に頷いてみせた。
 酒見姉妹と甲府太介は、「東雲=佐久間」説が荒野によって「保留」扱いされた時点で、ほっとしたような残念がっているような、複雑な表情を浮かべながらも、椅子に座り直していた。
「おれも、小埜さんの身元に関して、詳しい話しを聞いているわけではないけどさ……。
 先代……それも、二宮の第三位に近い人で、先代、といったら……自ずと、特定の人が思い浮かぶ。
 酒見たちも太介も、二宮の縁者だから、それなりに想像がついていると思うし……ついこの間まで海外にいて、国内の術者の消息に詳しくないおれより、詳細な情報を握っていてもおかしくないけど……」
 荒野がそう続けると、酒見姉妹と太介は、一様に頷く。
 してみると……小埜澪の存在と出自は、少なくとも二宮系の術者の間では、知れ渡っている情報なのかな? と、荒野は思う。
 荒野は、ふと、「なら、こいつらに説明させようかな」とも思ったが、すぐに、「まあ、おれが間違ったことをいったら……こいつらが、訂正してくれるだろう」と思い直して、先を続ける。
「……代々の二宮の長は……一種の名誉職で、いわば飾りだ。
 二宮の長になる、二宮の頂点に立つ、ということは、一族でもっとも強い者であることが要求されるわけで……その時々で、もっとも強い二宮が務めることになっている。
 世襲ではなく、若い挑戦者が、その時々の長に挑戦して、その時の長を破れば、挑戦者が長になって、荒神、という名を受け継ぐ。
 東雲さんに、小埜澪の後見を頼んだ先代、というのは……今の荒神の前に、二宮の長をやっていた人のことだと思う……」
「「……その通りなのです……」」
 酒見姉妹が、声を揃えて荒野の言葉を首肯した。
 荒野自身は、「先代の荒神=二宮の長」には、面識がない。
 荒野が物心ついた時には、「現在の荒神」が、すでに「荒神」だった。
 そこでまで推測を述べて、荒野は、ある事実に気づいた。
「……でも……先代の荒神って……。
 確か、今の荒神の、実の、親父さんだったよな……」
「……左様で……」
 東雲目白は、相変わらずにやにや笑いを浮かべながら、荒野の言葉に頷いた。
「つまり、うちの嬢ちゃん……小埜澪は……今の荒神様の、年齢が離れた実の妹、ということになりますな……。
 まあ、腹違い、なんですが……。
 先代は、そっちの方は、かなりお盛んな方でしたし……」
 強い血を残す、ということに執着する二宮の者は、その血が濃くなればなるほど、多くの子を残すことに執着する。必ずしも婚姻関係には拘らないし、性的なモラルは、ほどんどないに等しい。
 もちろん、例外もあって、少数派ながら、そうした噂がまるで立たない人物も、いることはいるのだが……。
『……だから、困る……ということも、あるんだけど……』
 と、荒野は、「今の荒神」を思い浮かべながら、そう思う。
「今の荒神」は、二宮の頂点に立つ者としては例外的に、異性関係の噂が、まるでない。ストイック……を、通り越して、異常に思えるほど、「今の荒神」の身の回りには、性的な要素が欠落していた。
 そのせいか……「今の荒神」は、男色家ではないのか、という噂も、ちらほらと流布している。もっとも噂だけで、異性にせよ同性にせよ、「今の荒神」と性的な関係を持った者は、今までに発見されていないのだが……。
 だからこそ、荒野は……「今の荒神」に抱きつかれると、非常に、困る……の、だった。





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彼女はくノ一! 第五話(258)

第五話 混戦! 乱戦! バレンタイン!!(258)

 香也の口から、「つい今し方、孫子と、ここで関係を持った」ということ聞いた楓は、そのまま畳の上に平伏し続けている香也を見て、軽くため息をついた。
「……あの……それって……」
 それから楓は、顔を上げようとしない香也に向かって、声をかける。
「才賀さんが、香也様の意志を無視して、無理矢理やったことなんですか?」
「……起きたら、ほとんど裸で……裸になった才賀さんがぴったり抱きついていて……」
 香也は、顔を伏せたまま、楓に答える。
「……我慢できなかった……。
 ごめん……」
「……いや……謝られても……」
 楓は、いたたまれなくなって、香也から眼を逸らす。
「あの……香也様が好きでそうしたのなら……わたしが、何かいう権利とか、ないですし……」
 香也から眼を逸らしてそんなことを話しているうちに、楓の感情も高ぶってきて、声も震えてくる。
 楓の胸中は、複雑だった。
 香也を独占したいという気持ちは強い。だが、そもそも自分だって今までさんざん、勢い任せ、成り行き任せのまま、香也と関係を持ってきたわけで……その時々に、本当に香也の気持ちを考慮してきたかというと、それはかなり、あやしい。他ならならぬ楓自身が、そのことをよく弁えている。
 だから、香也が孫子なり他な女性なりと関係を持ったことで、楓が怒る、というは、筋違いだと思っている。
 ……少なくとも、理性では、そう納得してはいる……。
「そもそも……なんで、わざわざ、わたしにそういうこといって……なんで、ごめんって謝るんですか?
 それって……無理矢理じゃなかったら、才賀さんと香也様の問題ですよね?」
 別に楓とつき合っているわけでもないのに、香也は、何でそんなことをわざわざいうのだろう……と、楓は不審に思う。
 内緒にしていれば、いいことなのに……少なくともこんな、自分がむしゃくしゃすることはないのに……。
「……いや……そういわれれば……それは、そうなんだけど……でも……」
 香也は、ごにょごにょと不明瞭な声で、楓に反駁する。
「でも……その、楓ちゃんに、こういうこと内緒にすると……なんか、ぼく自身が……気分悪いから……。
 楓ちゃんが、こういうこと知れば、いい気分をしないのは分かっているけど……。
 こういうの……嘘でも突きとおした方が、うまくいくのかも知れないけど……そういうのって、表面を取り繕っているだけのようで……ぼくが、気持ち悪いし……。
 なんていうか、その、うまくいえないけど、こういうことで、楓ちゃんに嘘をついてたら……突きとおしてたら……ぼく、どんどんつまらない人になっていくような気がする……。
 堂々と、楓ちゃんと、普通にはなせなくなるっていうか……」
 訥々とした香也の言葉を一通り聞いた、楓は、何度か深呼吸をして、自分の気持ちを落ち着かせる。
 その正否はともかくとして……香也は香也なりに、自分に対して誠実であろうとしてくれている……そのことは、楓にも理解できた。
 口べたな香也が、ここまで長々と自分が考えていることを他人に言って聞かせる、というのも、前代未聞だろう。
 それで、楓の複雑な心境が整理されるのか、といえば、それはまだ別の問題なのだが……。
「……もう……。
 顔を、あげてください……」
 深呼吸して、気持ちを落ち着かせた楓は、しゃがみ込んで這いつくばるような姿勢のままの香也の肩に手を置いて、声をかけた。
 楓の声が意外と穏やかなのに安心して、香也は、おそるおそる、顔をあげる。
 すると、ふわり、と柔らかい塊が、香也の肩に抱きついてきた。
 無防備でいた香也の口唇に、楓の口唇が、押しつけられる。
 時間にすれば、ほんの数十秒のごく短い時間で、楓は立ち上がって香也から体を離した。
「……はい。
 これは、みんなには、才賀さんにも、内緒にしてくださいね。
 二人だけの、秘密です……」
 そういって、楓は呆然として蹲っている香也に、手を差し伸べる。
 思考が停止している香也は、のろのろと楓が差し出した手に自分の手を重ね合わせる。
 楓は、軽々と香也の体を引っ張りあげ、助け起こした。
 香也が立ち上がると、それまで香也を見下ろしていた楓の視線が、今度は、香也の目線の少し下、くらいになる。
「……さ。
 朝ご飯の用意ができてますから、居間に行きましょう……」
 そういって、楓は、香也の手を握ったまま居間へと向かい、香也は、引っ張られるまま、その後に続いた。

「……おっ」
 居間に着くまでの途中で、見覚えのある羽生のスェットを来た若い女性に声をかけられた。
「……あれ……この人が、例の?」
 香也がはじめてみるその女性は、後にいた孫子やテン、ガクたちに向かって、そう声をかけている。
 痩せてもなく、かといって、太っているわけでもない、中肉中背。
 均整のとれた、標準的な体格で、何かスポーツでもやっているのか、顔が真っ黒に日焼けしている。なぜ、日焼けと断定できるかというと、胸元とか首の付け根、手の部分の肌色が、抜けるように白いからだ。サイズの合わない羽生の服を借りているからか、その女性の胸元は少し広めに開いていて、日に焼けている箇所とそうでない箇所の違いが、くっきりと判別できた。
 すぐにそんなところをじろじろと観察するのは、無遠慮な行為だ……と、思い直した香也は、慌てて視線をそらせた。
「……そっちも色々、大変なようだけど……」
 孫子たちが頷くのを確認してから、その女性は、意味ありげなにやにや笑いを浮かべて、ばちーんと香也の肩を平手で強く叩く。
「頑張れよ! 色男っ!」
 その外見から似つかわしくない馬鹿力でいきなり肩をひっぱたかれ、よそ見していた香也は、大きく体を泳がせる。
 そのまま倒れ込みそうになった香也の体を楓が抱きとめると、香也の肩を叩いた女性の後にいたテンとガクが、
「……あっー!」
 と、大声を上げる。
 テンとガクの後にいた孫子が、引き攣ったような表情を浮かべていたのを、香也は見落とさなかった。




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「髪長姫は最後に笑う。」 第六章(174)

第六章 「血と技」(174)

 酒見姉妹を部屋の中に招き入れた荒野は、その場に集まった者たちを、順番に紹介していく。それぞれに、これが初対面の筈だった。

「へっ。
 やっぱり、ブラッディ・ツインズかい……」
 酒見姉妹を紹介すると、東雲目白が揶揄を含んだ声をだした。酒見姉妹は、「変わり種」ということで、一族の中でもそれなりに有名であった。
「ここで一般人の真似事をしようっていうのも酔狂なら、その格好も酔狂だ……」
 東雲は、酒見姉妹のゴスロリドレスを指さして、そんなことをいう。

「……二宮、第三位の……」
「……腰巾着です……」
 荒野が今朝の出来事をかいつまんで説明し、東雲目白を紹介すると、酒見姉妹は先ほどの意趣返しとばかりに、そんなことをいう。
 東雲自身の知名度はないが、彼がつきしたがっている小埜澪は、一族の次世代の担う人材として名を馳せている。このままいけば、将来、小埜澪が、荒神の次に二宮の長になる可能性も、かなり高い……という世評もあった。
「……所詮、一人ではなにもできない……」
「……雑魚なのです……」
 酒見姉妹は、当人を目の前にして、東雲目白のことをそう評する。いわれた東雲の方は、特に憤りを見せることもなく、にやにやと軽薄な笑いを顔に張り付けている。

 最後に荒野は、甲府太介が荒野の前に姿を現してから今に至るまでの経緯を説明した。
 太介が荒野の弟子を志願している、ということを聞くと、酒見姉妹は、
「「……身の程知らずですの……」」
 と、声を揃えて一蹴した。
 今の所、これといった実績を持たない太介は身を竦めて小さくなり、東雲は、面白そうな顔をして、太介の顔を遠慮なくじろじろと眺めた。

 自己紹介が一通り済むと、荒野が東雲に、なんで一人でここに尋ねてきたのか、と、問いかける。荒野自身は、その理由について、かなりの確実な予想を持っているのだが、この場にいる他の面子に聞かせるために、あえて東雲に尋ねてみる。
 東雲は悪びれることなく、隣の狩野家で、羽生に追い出された顛末を語る。
「……だって、女所帯に面識のない、得体の知れない男を入れるわけにはいかない……と、いわれたら……そりゃあ、道理ってもんだし、お嬢の面倒を見てもらう手前もあるし、堅気さんに逆ギレかますわけにはいかんでしょう……」
 一通り、その事情を語った後、東雲はそう締めくくる。
 年の功、というべきなのだろうか、東雲の見識は、妙な所で常識的でもあった。
 長年、小埜澪の相棒を務めているだけあって、軽薄な外見に似合わず、律儀な性格なのかも知れない、と、荒野は思う。

 そんな話しをしている間にも、茅は全員の分のお茶を用意し、酒見姉妹にも手伝ってもらって、朝食の準備をはじめた。準備、といったところで、サラダに使うレタスをちぎって盛りつけする程度のことしか、茅はやらせなかったが。
 酒見姉妹は、そもそも荒野たちと一緒に朝食を摂るつもりでこの時間に訪ねてきたらしいし、東雲も当然、まだ食事にありついていない。この中で朝食を済ませているのは、甲府太介だけだった。

「……そういや、東雲さんたちは、こっちに移住してくる予定はない、って話しでしたよね?」
 話しがひと段落すると、荒野はそう確認した。
 以前、ちらりと聞いた時には、東雲は、
「小埜澪の気まぐれで、仕事の合間に楓に接触するために来た」
 と、いっていた。
「……の、筈なんですが……」
 東雲は、そういって肩を竦めてみせる。
「ぶっちゃけ、お嬢次第、でしょうなぁ……。
 なにせ、気まぐれな方ですから……」
 東雲は、小埜澪に従う立場であり、実際の所は、小埜澪が今後どうするのか、という選択次第になる、という。
「……小埜さんが、心変わりをしないことを祈ろう……」
 そういわれたら、荒野としても、そう答えるしかない。
「それから……太介。
 お前の下宿先のことだけど……」
 荒野としては、立場上、一度挨拶に向かうつもりだった。
 しかし、太介は、荒野に話しを振られた途端、「はつ!」と背筋を伸ばし、荒野が何かいう前に、
「向こうさんから、こちらに一度、挨拶に伺いたい。
 つきましては、都合の良い日時をお教えいただきたい、と、言付かっておりますっ!」
 と、太介は、何故かしゃちほこばって一気にまくしたてた。
「……いや、それ……。
 おれの方から、挨拶に伺おうと思ってた所なんだけど……」
 先をこされた荒野は、そんなことをぶつぶつ呟いた後、
「平日の放課後とか夜なら、いつでもいいよ。
 前もって来ることを伝えてもらえば、その日、予定を空けてとく……」
 といい、それからふと気付いて、
「そういや、お前、携帯とか持ってるのか?」
 と、太介に尋ねた。
 太介はぶんぶんと首を横に振り、逆に荒野の連絡先を聞いてくる。
 荒野は自分の携帯の番号をメモして太介に渡し、
「……緊急の時、連絡取れないと不便だから、お前用の携帯を手配する」
 と、太介に申し渡した。
「……面倒見のいいこった……」
 そのやりとりを見ていた東雲が、この状況を明らかに面白がっている表情で、そういう。
「なんかね。
 こういう太介みたいなパターン、多いんで、慣れてえ来ちゃいましたよ……」
 荒野は軽くそう答えて、肩を竦めた。
 荒野が直接面倒をみる羽目になったのは、楓と、テン、ガク、ノリの三人につづいて、太介で五人目。いい加減、必要な手配にも、慣れてきている。
「……東雲に、聞きたいことがあるの」
 今度は茅が、ベーコンエッグの皿を東雲の前に置きながら、そういう。
「茅は、一族の内情に、詳しくないの。だから、不躾なこととか、タブーに触れる質問については、別に答えてくれなくても構わない。あくまで、東雲が困らない範囲で、答えて欲しいのだけど……」
 茅は、そう前置きして、ずばり、核心を突いてきた。
「……東雲は、先代という人に、小埜澪を託された……と、いってた。
 その先代、って、具体的に、誰のこと?」
 茅の口から「先代」という単語が出ると、それだけで、東雲と酒見姉妹が、目に見えて全身を緊張させる。
 太介だけが、話しが見えないようで、その場の雰囲気が何故変わったのか、よく呑み込めていないらしく、しきりに瞬きをくりかえして周囲をみわたしていた。
 荒野は、全員の反応を、興味深そうな表情をして、観察している。
「……それから、もう一つ。
 東雲は……一族の者、だと思うけど……。
 今朝、小埜澪に加勢するわけでもなく、見物していただけだった。茅がこれまで見た中で、こういう行動パターンをみせた術者は、いない。
 東雲は……どういう術者なの? 六主家の血筋? それとも、仁木田たちのような、非主流派の、特殊な術者なの?」
「……いやぁ……。
 実に的確に、痛いところをついてくるなぁ……」
 しばらく間をおいて、東雲は苦笑いを浮かべつつ、しゃべりはじめた。
 不自然な緊張が完全にほぐれた訳ではないが、なんとか平静な態度を保とうと務めている。
「……まず、前の質問ですが…。
 これは、答えるのが、かなり難しい。でも、完全にタブーってわけでもない。先代については、ある程度キャリアがある術者なら、誰でも知っているこってす。
 ですが、その事実を知っている誰もが、ある理由により、そのことについては、口を閉ざしますが……。
 あれ? そうすっと、やはりこれもタブーの一種なのかな?」
「……そっちの質問に関しては、東雲さんがいいにくいようなら、代わりにおれが答えてもいいよ……」
 荒野が、そう口を挟んだ。
「……でも、もう一つの質問、東雲さんがどういうタイプの術者かっていうのは、おれも興味があるな……。
 場合によっては、死活問題になることもあるから、答えたくなければ無理に答えなくてもいいけど……」
「その質問に関しては……茅にも、少し推測していることがあるの」
 茅は、東雲の目を見て、そういった。
「……どうぞ。
 推測なら、いくらでもご自由に、おっしゃってください……」
 東雲は、少しひきつった笑みを浮かべた。
「根拠となりうる条件がいくつか。
 小埜澪は、二宮第三位といわれる実力を持つ。
 しかも、バーサーカー・タイプ。いつ暴走するかわからない、危険性を秘めている。
 東雲は、先代という人によって、その小埜澪のセーフティとしての役割を負わされた。そのおかげで、今にいたるまで、小埜澪と行動をともにしている。
 しかし、今朝、東雲が小埜澪と一緒に楓と戦っていなかったことからも分かるように……一緒に行動をしているといっても、必ずしも小埜澪と肩を並べて共闘するわけではない。
 だから、東雲はもっぱら、暴走した小埜澪を無力化する能力を保持し、保険、ないしは安全弁として、付き従っている……」
 茅がそこで言葉を切ったので、東雲は無言で頷いて、先を即した。
「……以上の所条件から導かれる結論として、妥当な解は……東雲は、佐久間の能力を持っていると思うの……」




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彼女はくノ一! 第五話(257)

第五話 混戦! 乱戦! バレンタイン!!(257)

「……いやー。
 予想以上にすっぱり負けちまったもんなぁ……」
 湯船に浸かった小埜澪は、今朝の出来事を一通り話した後、さばさばとした口調で孫子にそう語った。
「小細工なしで、正面からいって……ああも実力差をみせつけられると、かえってさっぱりするよ……」
 これまでの説明で、小埜澪が、「二宮の第三位」であることも孫子は聞いていた。くだらない虚栄を張るタイプの性格でもなさそうだから、おそらく、この小埜澪に対する、衆目の、一致した評価なのだろう……と、孫子は推測する。
「あの子……あなたからみて、そんなに……」
 孫子が軽く眉を顰めたのは、小埜澪の言葉を疑ったから、ではない。
 一族の水準からみた楓の戦力評価、というものが、部外者である孫子には見当がつきにくかったので、この機会に確認しておきたかったのだ。
「……ああ。
 どう説明したら、わかりいいかな……」
 孫子が具体的にどういう説明を欲しているのか察した小埜澪は、少し考え込む。
「知っての通り……一族は、一般人と比較して、卓越した身体能力を持っている。修練の結果、というのもあるが、多くは先天的な資質により、だ」
 孫子は、頷く。
 そのことは、今までにいやというほど思い知らされている。
「……で、な。
 例えば、防犯設備のことなんか考えても……一般人の平均的な能力を見越して、作られているわけだから……一族の能力というのは、実は、この一般人社会の中では、オーバースペックなんだ。
 別に、術者として凡庸な存在であっても……一般人の基準で考えれば、一種の超人、あるいは、フリークス、なわけだから……それ以上の能力を求める必要や必然性は、ほとんどないといっていい……」
 これにも、孫子は頷く。
「術者としては並」であっても、一般人相手の仕事だけをしている限り、「術者である」というだけで大きなアドバンテージを有している。
「だから……多くの術者は、向上心がない。
 向上心を持つ必要も、ない」
 ここまで噛み砕いて説明されて……孫子も納得する。
 超絶の技巧を持つ術者、など……よくよく考えてみれば、そんな者が存在しても、その存在が有益に働く局面、というのは……ほとんど、ありはしない。
 何故なら……術者として平均的な技巧の持ち主であれば、一族の仕事は過不足なく遂行できるのだから。
「荒神さんとか、わたしとか、さっきの楓さんとか……は、一般人と比較して、オーバースペックな一族の中でも、さらに上をいくオーバースペックなわけで……。
 もちろん、修練の末ようやく獲得した能力や技能を尊重する空気は、古くから一族の中に根付いている。そうでなければ……どんどん、一族が一族として存在するアイデンティティが崩れていって、一般人と同化していっちまうからな。
 だけど……そんな、一族の中でもさらに抜きんでた存在、というのは……尊敬はされるけど、必要とされることは少ない……」
 無用の長物だよ……と、小埜澪は呟いた。若干、笑いを含んだ口調になっていたのは……自嘲する意味も含まれていたのに違いない……と、そばで聞いていた孫子は思う。
 一般人から隔たった存在である一族の中で、さらに隔たった者であり続ける、というのは……一体、どういう気分になるのだろうか……。
 孫子がそんな事をぼんやりと想像している間にも、小埜澪は、話しを続ける。
「さっき、楓さんとやりあった時……。
 納得しちまったからなぁ……。
 ああ、この子なら、荒神さん、弟子にするだろうなって……。
 荒神さん……もう長いこと、ずっと独りだから……。
 自分と同等の存在も、敵になりえる存在もなく……長年、独りっきりで歩いている人だから……そういう寂しさに耐えられる人でなくては、あの人は認めないし、弟子にしない……。
 それこそ、荒野君とか、楓さんとか……あの人の代になってから、ようやく、二人目だもんなぁ……」
 小埜澪は、憧憬と畏怖がないまぜになった複雑な表情を浮かべた。
「……あの人は……もう長いこと、寂しい思いをしている……。
 昔は、何年か前までは、あの人に対抗できる術者も、何人かはいたんだけど……」

「……んー……」
 寝ぼけている声ではない。
「すぐ、起きていくから……」
 口調は、意識がはっきりと覚醒していることを感じさせた。
 しかし、香也はそういったきり、一向に起きてくる気配がない。
「……あの…大丈夫、ですか?
 中に、入りますよ……」
 香也の様子がいつもとは違うことを敏感に感じ取った楓は、襖を開いて中に部屋の入る。
 香也は布団の中にくるまったままで、起きあがろうとした形跡がない。
 それどころか、目を閉じたまま、楓から目を背けるようにして、寝そべったままだった。
「……あっ……あの……気分でも、悪いんですか?」
 香也のそんな態度を目の当たりにして、楓は、胸を突かれたような気分になる。香也は、決して寝起きがいい方ではないが、それでも、この態度は、異常だ。
 楓は、香也に拒絶されているような気分になった。
「……なんでも、ないから……」
 顔を向こうにそむけたまま、香也は、そういう。
 香也にしてみれば、ついさっき、孫子とあんなことがあったばかりであり、きまりが悪すぎて、楓とまともに顔を合わせずらい……ということで、こうして避けている、というわけだが……もちろん、そんな事情は、楓には察することができない。
 何故、今朝に限って、そんな態度をとるのか……そう、香也に詰め寄る代わりに、楓は、顔を伏せて、力のない声をだした。
「……そう……ですか……。
 そう……ですね……。
 今日は日曜だし、ゆっくりとしたいですよね……」
 そういっているうちに、楓の声がみるみる震えてくる……。
 これには、香也の方が、焦った。
「……あっ! あの!」
 そう叫んで布団を跳ね上げ、香也は、跳ね起きる。
「本当、ないでもないからっ!
 全然、元気だしっ!」
 香也はその場で万歳をして、上に掲げた腕をぶんぶん振り回す。そのまま、ラジオ体操でもはじめそうな勢いだった。
 自分でも馬鹿みたいな格好だと思ったが、楓を悲しませるよりはよほどマシだ、とも思う。
 正直……自分の態度に対して、楓がここまで敏感に反応するとは、思っていなかった。
 それから、香也は、突然の香也の豹変ぶりに驚いて、畳の上に正座したまま凍り付いている楓の前に正座し、がばり、平伏する。
「楓ちゃんっ! ごめんっ!」
 と、いきなり謝る。
「……ええっと、その……」
 なんで、香也が謝るのか……と、楓が聞き返そうとする前に、
「実は、さっき、才賀さんと……」
 と、香也はさっきの出来事を、簡単に楓に説明する。
 楓にあんなに心配をかけて、自分もあんなに罪悪感を抱えるのなら、秘密なんて抱え込まない方がいい……と、香也は思う。
 あんな想いをするのなら……すべてを、ありのままを話して、楓に軽蔑された方が、よっぽど気が楽だ、と。




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「髪長姫は最後に笑う。」 第六章(173)

第六章 「血と技」(173)

 その日の朝、甲府太介は、荒野たちが住むマンションを訪れるところだった。昨日、面接のつもりで紹介された家庭にいったら即座にそのまま歓待され、「そのまま住んでいい。家族同然のつもりでいなさい」などといわれ、ご馳走責めにあって一日中引き留められたため、荒野への事後報告が遅れていた。みんな、意追い人たちだった。また、太介は携帯電話を所持しておらず、荒野や茅の電話番号も聞いていなかったため、直接出向く以外に連絡をする方法がなかったため、この時間まで報告することができなかった。日曜の朝、というのは、荒野の家に訪問する時間としていかがなものか、と、太介自身も思わないでもなかったが、逆に言うとその時間なら、確実に荒野たちは捕まる、とも思っていた。
 そして、荒野のマンションの前で、どうにも胡散臭い風袋の若い男にでくわした。
 この近辺のような住宅街ではなく、都会の繁華街にでもいた方が似つかわしい、軽薄な空気を漂わせた男が、荒野たちの住むマンションの隣の民家からとぼとぼと出てきた。この時間帯、まさかセールスマンということもあるまい。スーツにコート姿だったが、堅気の勤め人、という雰囲気ではなく、それこそ、怪しげな飲み屋か風俗店の呼び込みでもしていた方がよっぽどしっくりくる雰囲気を漂わせている、たゃらちゃらした格好の、軽薄そうな若い男だった。ただし、隣の家から出てきた時は、何故か悄然と肩を落とし、いかにもしょぼーんとした感じで、覇気がしぼんでいるようにみえた。
 反対側から歩いてきた太介と、マンションの前で鉢合わせする。太介は、その男と眼を合わせるのを避けた。そして、太介がマンションのエントランスに体の向きを変えるのと同時に、その男もマンションの方に向きを変えた。
 太介とその男は、肩を並べるようにして、マンションのエントランスに向かう。
 エントランスの共用入り口には、防犯のため、パスワードを入力しなければ扉が開かない作りになっていた。男は、その入り口に脇に設置してあるテンキーに慣れた動作で指を走らせ、入り口のロックを開ける。
 ……このマンションの住人なのかな……と、その男の正体を推測しながら、太介はその男のすぐ後に続いて、太介は入り口をくぐった。
 驚いたことに、その男はエレベータに乗った後も、荒野たちの部屋のあるフロアのボタンを押す。
 ……フロアまで、同じなのかよ……と、太介はその偶然をいよいよ訝しんだ。
 そして、いよいよ、荒野たちの部屋の前まで来ると、その男は、荒野たちの部屋の前でたちどまり、インターフォンのボタンを押す。その男の方も、ぴったりと後に張り付いてくる太介のことが気になるのか、ちらちらと太介に視線を走らせていた。

 茅の提案メールにいち早く反応したのは、有働勇作だった。茅のメールに「今、チャットいいですか?」と返信し、茅は承諾すると、仲間内で使用することが多い、比較的メジャーな無料メッセンジャー・ソフトを立ち上げ、手短に打ち合わせを開始する。有働と茅がチャットで話し合っているうちに、他にも何人かのメンバーがログインし、顔文字混じりで意見を交換していく。大方の意見は、「放置ゴミの処理は、今の時点では下準備が不足している」ということと、「人通りが多い場所だけでも、雪かきしておかないと危ない」という意見が多く、茅の意見に賛同する者がほとんどだった。
 特に反対意見を出す者がいない、ということが判然とすると、有働が即座に「予定変更の告知メール」を、ボランティア活動に登録した全メードアドレスに送付するよう手配し、その間にも、茅はスケジュールソフトが置いてあるサーバにログインし、登録者の住所や年齢、性別などのデータを元にして、集合場所と仕事の割り振りをはじめた。
 せわしなくタイピングを行いながら、茅が荒野に解説した所によると、こういう急な変更の時のためのマクロも、あらかじめ用意してあるので、特に不都合はない、という。
 事実、茅が提案の同報メールを出してから、全ての手配を終えるまで、十分とかけずに全ての作業を終え、茅はノートパソコンの電源を切ってしまった。
「……ええっと……今ので、全部、終わり?」
「登録者は全員、メアドを記入することになっているし、そのメアドを変更していなければ、連絡漏れはない筈なの」
 そのあっけなさに、思わず荒野が確認すると、茅は平然とした顔で頷いた。
「もちろん、これは強制ではないから、連絡した人が全員くると決まったわけではないけど……」
 茅はそう付け加える。
 それでも……数百名への連絡が、これだけの手間で片付いてしまうことに対して、荒野は素直に関心した。
 その時、インターフォンのチャイムが鳴って、来客があったことを告げる。
「おれが出るよ。
 茅は、早く服着て……」
 荒野はそういって立ち上がり、茅は物置代わりにしている部屋に姿を消した。
 荒野が玄関に出向いてみると、東雲目白と甲府太介が肩を並べて立っている。二人とも、何故か憮然とした顔をしていた。
「……珍しい組み合わせだな……」
 とりあえず、荒野はそういった。
 この二人のうち、東雲の方は、ついさっき別れたばかりである。今更、「おはよう」というのも、なんか違うような気がした。
「お前ら……知り合いだったの?」
「……まさか」
「違います!」
 二人の声が、重なる。
「……さっきから、わたしの後をついてくるんですよ、この餓鬼……」
「たまたまそこで一緒になっただけです。初対面だし、口をきいたこともない」
 また、二人の声が、重なる。
「……あっ。いや、いっぺんにしゃべろうとしないで……」
 荒野は眉間のあたりを指で軽くもみながら、二人を中に入れた。
 とりあえず、二人をキッチンテーブルに通して、椅子に座らせる。
「……二人とも、自己紹介をするとなるとそれなりに長くなるんで、まずおれが指名する順番に話してくれ……」
 と、荒野は前置きし、
「まず、太介だ。
 昨日、あれからどうなった?」
 と、太介に話しを振った。
 東雲の方は、さっき別れたばかりだし、小埜が一緒でない所をみると、なんとなく事情も推察できるというものだ。
「ええ。あれから、いった先で、ですね……。
 非常にいい所を紹介してくださった、というか……」
 太介は、そこまでしゃべった後、荒野の背後をみて、ぽかんと口を開ける。
 みると、東雲も、太介と同じく、荒野の背後をみて、何やら感心したとうな、呆れたような……なんとも微妙な表情をしている。
「……いらっしゃいませ、なの」
 荒野が振り返ると、メイド服を着た茅が、優雅に一礼する所だった。
 その時……また、インターフォンのチャイムが鳴った。
 ……この場で何を順番に説明するのが最上なのか、迷っていた荒野は、これを幸いと無言のまま席を立ち、玄関へ向かう。
「おはようございます、加納様」
「今朝は、おみやげを持ってきたのです」
 そっくり同じゴスロリ服に身を包んだ、そっくり同じ顔をした酒見姉妹が、マンドゴドラのロゴが入った箱を荒野に差し出しす。





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彼女はくノ一! 第五話(256)

第五話 混戦! 乱戦! バレンタイン!!(256)

「外傷も骨折も内出血もないから、その辺は大丈夫だと思いますけど……」
 楓が、羽生に説明する。
 医者が必要かどうかは、楓も荒野も東雲も、確認していた。頭を打ったわけでもないので、静かにしていればそのうち目を醒ますだろう、ということで、見解が一致している。
「ただ気を失っているだけか……それじゃあ、お風呂にでもいれれば、眼を醒ますか……」
 蚊での説明を聞いた羽生は、そういって、小埜澪を担いでテンとガクが去っていった方向を見た。

 その風呂には、先客がいた。孫子である。
 香也との行為の後、寝直すにも半端な時間であったし、ガクの鼻を多少ともごまかせるかと思い、昨夜の残り湯を追い炊きして、一人ゆっくり入浴していた。
 そこに、テンとガクが賑やかに会話しながら、脱衣所へと入ってくる。気を失っている小埜澪は、当然のことながら声を発しないので、脱衣所の方に注意を向けていない孫子は、最初のうち、その存在に気づかなかった。
 ただ、テンとガクについて、
『調子に乗って雪遊びして、全身びしょ濡れになったから……』
 風呂で暖まりに来た、という風に解釈している。
 しかし、脱衣所で全裸になって入ってきたのは、テンとガクだけではなかった。
「……誰ですの、その方?」
 孫子は、テンとガクに両脇から支えられている裸の女性について、二人に尋ねる。
「ん。あのね、楓おねーちゃんへのチャレンジャー」
「でね、あっという間に返り討ちになったの……」
 孫子にそう説明しながら、二人は、いっせいの……せっ!、と、かけ声をかけて、小埜澪の体を浴槽の中に放り込む。
 孫子のすぐ隣に盛大な水柱があがり、タオルをもった手で顔に飛沫がかかるのを防ぎながらも、孫子は顔をしかめた。
「……わぁはぁっ!」
 と、声を上げながら、小埜澪が、慌てふためき、湯船の中で棒立ちになる。
「……どう? 目が醒めた?」
 ガクが、にやにや笑いながら、そんな小埜澪に声をかけた。
「……君、たちは……」
 小埜澪は、その声ではっと我に返り、周囲を見渡す。
「ここは?」
 当然の疑問を、目の前の二人にぶつけた。
「みての通り、お風呂。
 ボクたちがお世話になっている家の……」
 テンが、一瞬で冷静さを取り戻した小埜澪に、説明する。
「肩まで浸かって、暖まった方がいいよ。
 体、冷えているでしょ?」
「……そう……だな……」
 そんなやりとりの間にも、気を失う直前の事を思い出したのか、のろのろとその場にぺたんと腰を降ろす。
「そ……か。
 わたし……負けたんだ。
 それも、見事に……」
 ぼんやりとした口調で、そんなことをつぶやく。
 それから、傍らの孫子の存在に気づき、
「……あっ。ども……」
 と、頭を下げた。
「……だいたいの事情は、今のやりとりで飲み込めましたけど……」
 孫子は、三人の顔を見渡して、そういった。
「そろそろ、きちんと名乗り合いませんこと?」
「……そういや……」
「……ボクたちも……おねーさんの名前、ちゃんとは聞いてない……」
 孫子にそういわれて、テンとガクは顔を見合わせる。

 その頃、楓は、羽生と一緒に朝食の支度をしていた。
「……そんな、感じなんですけど……」
 そのついでに、今朝の顛末について、少し詳しく説明したりする。
「……雪合戦がモノホンの合戦みたいになっていった、ってのは、まあいいとして……」
 羽生は、コンロの火を止めて、味噌汁の鍋を持ち上げる。
「結局、後から乱入してきた二人は、どういう人か、よくわかってないんじゃん……」
「それは……そうですが、荒野様が、さっき追い返した男の人と、親しそうに話してましたし……ここにつれてくることに関しても、止めようとはしなかったから、多分、間違いとかはないかと……」
「……うーん……」
 鍋を居間に運び込んだ羽生が、腕を組んで軽く考えこむ仕草をする。
「危ない人たちでないことは確かだから、後は直接話し合えってことかなぁ……」
「確かに……あの女は……なんか、すっきりとした性格の人みたいでした。
 ガクちゃんやテンちゃんに、アドバイスなんかもしていましたし……」
 羽生に続いて、電子ジャーを居間に運び込んだ楓が、そう補足説明をする。
「さっきの男の人も……見た目、軽そうだったけど、玄関で、あっさりと引いていったしな……」
 羽生も、頷く。
「カッコイいこーや君、マンションにひっこんんでいるんだろ?」
「……ええ……」
 そもそも……そんな危なさそうな人なら、荒野が目を離す筈がないのだ……という仮定が、二人の前提になっている。
 その荒野が茅と一緒に、今、マンションにいる、ということは……あの二人が、たいした驚異ではない、と、判断したという証拠に他ならない。
 実は荒野は、「楓一人で小埜澪を制圧できるのだから、戦力差を考えれば、二人が束になってもこの家にいる連中には対抗できない」という即物的な判断に基づいて、二人から目を離しているのだが、楓は例によって自己評価が不当に低いということと、それに、マクロな視野を持とうとしない、という気質により、そうした判断には思い至らない。
「……ま。
 あまり身構えずにつき合ってみろ、ってこってしょ……」
 冷蔵庫から作り置きの総菜を取り出しながら、羽生は、結局、そんな結論をだした。
「そう……ですね。
 まあ、普通に……」
 楓も、現在のこの家の住人分、足すことの、一人分の茶碗と箸を用意しながら、羽生の言葉に頷いた。
「……よし。
 後はやっとくから、楓ちゃん、こーちゃん起こして来て……」
 羽生がそういうと、楓は、
「はい」
 と、頷いた。

 その頃、香也は、「また」成り行きまかせに孫子と関係を持ったことで、自己嫌悪に陥っている最中だった。どうして自分は、こうも誘惑に弱いのだろうか、と。
 布団の中で横になったまま、目も瞑らずににじんまりとして過ごしている。
 香也に言い寄ってくるのが楓のみ、あるいは、孫子のみであったなら、話しは単純だった。
 楓と孫子、そのどちらにせよ、香也にはもったいないほどの美少女であり、性格も、これまたどちらも若干の偏重はあるものの、香也自身の人格の欠落(がある、と、香也自身は思いこんでいる)と比べれば、問題にならない。学校の勉強も、二人とも、香也よりよっぽどいい成績を収めているし、体力とか運動とかいうフィジカルな要因は、それこそ比較する気にもなれない……。
 香也の一体どこが気に入ったのか、この二人が同時に香也にモーションをかけ、それ以上に、二人同時に既成事実を作り上げ、なおかつ、現在に至るまで香也を巡って事あるごとに対立し、張り合っている……。
 そして、香也自身は、未だにどちらか一人とつき合う気には、なれない……。
 いや。
 もっといえば、彼女たちだけではなく、特定の誰かと特別親密な関係を築いている自分、というものが、香也自身、まるで実感ができないし、香也自身にそういう濃厚な人間関係を築く能力があるとは、とうてい思えない……というのが、一番の問題だった。
 あるいは……やはり、楓か孫子、それとも、別の誰かでもいいのだが、誰か一人が香也のことを見つめてくれて、じっくりと時間をかけて関係を熟成していけば、可能な気もするのだが……こと、対人関係、という面において、香也は、極端に自身が欠けている。加えて、通常の友人関係でさえ、ほとんんど実績というものがない。
 香也には、楓や孫子の自分に対する行為が、とても過分に思えて……実の所、かなり重たく感じていた。
「あの……香也様?」
 そんなことをつらつらと考えて、香也がもんもんとしていると、襖の向こうから、楓が、遠慮がちに声をかけてくる。
「もう、起きてますか?
 ご飯が、できたんですけど……」




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「髪長姫は最後に笑う。」 第六章(172)

第六章 「血と技」(172)

「ま……いいんじゃないか?
 その小埜さんも、うちで介抱するよりは、そっちのが人数も女手も多いし……」
 荒野も、ガクの言葉に頷く。
「なんか問題があるようなら、うちもすぐ隣りだしな……」
 楓の攻撃によって気を失っている小埜澪については、荒野はさほど心配していない。何しろ、二宮の第三位、というふれこみだ。この程度でどうにかなるほど柔ではない筈で、しばらく寝て休養していれば、すぐに元気になるだろう、くらいに思っている。そして、狭くて荒野と茅の二人だけしか住んでいないマンションに運び込むよりは、狩野家で預かって貰った方が、小埜澪が眼を醒ました後の世話も何かと融通が利く……と、荒野は思った。
 なにより、あの家には、楓がいる。孫子がいる。テンもガクもいる。
 ある意味で、この近辺であの家以上に「安全」な場所はないともいえる。

 そんなわけで、小埜澪を背負った東雲を含めた全員で、ぞろぞろと帰路につく。
「……結局、いいトレーニングになっちまったな……」
 荒野は、そうぼやいた。
「みんな……雪が降った日くらい、家で大人しくしていればいいのに……」
 正直な所……たまには、のんびりと「何も起こらない日」が来ないものか、と、荒野などは思う。
「眼を醒ましたら、お嬢によくいっておきます……」
 東雲は、悄然とうなだれた。
 そういう東雲に対して、荒野は、
「いや、まあ……こっちは、それでなくとも、先生にいわせれば、問題児の集団だそうだから……」
 などと、曖昧に言葉を濁す。
 別に小埜澪が来なくても……相応の騒ぎは持ち上がるのではないか、などと荒野は思っている。
 だから、
「……小埜さんが来なくても、他の一族の者がちょっかいかけてくることはあるわけだし……それに、そういう外部からの干渉がなくても、常に無風状態ってわけでもないし……」
 と、荒野は続けた。
 荒野のいうことの「意味」が、ひじょーによく分かっている楓が、
「あはっ。あははははは」
 と、笑い声を上げはじめた。
 楓にとっても、荒野の心配は「他人事」ではないのであった。というか、楓自身も、時にその「騒ぎ」に荷担しているような気がする……。
「この通り、この程度のことは、こっちでは日常茶飯事なんで、あんま気にしないでください」
 荒野は、から笑いする楓を指さして、東雲にそう告げた。
「はっ。はぁ……」
 小埜澪の「挑戦」を「日常茶飯事」での一言で片付けられてしまった東雲は、微妙な表情になった。
「それと……最近、こっちに移住してきたいって一族が、割といるんですけど……東雲さんや小埜さんは、そういうつもりで来たわけではないですよね?」
 そんな東雲に向かって、荒野が問いただした。
「……移住、っすか?
 そうはいっても……わたしもお嬢も、これで一族の仕事請け負っている身でして……一カ所の長く逗留するってこと自体、希なんですが……」
 ……やはり、この二人の目的は、楓への挑戦だけか……と、荒野は納得する。あるいは、楓が小埜澪に敗れるようなことがあったら、小埜澪も、続けて荒野に挑戦してきたのかも知れないが……とりあえずは、楓の噂をききつけた小埜澪が、仕事の合間にこっちにたちよってちょっかいをかけてきた……というだけのことのようだった。
「そっか……。
 それじゃあ、次の仕事まで、ゆっくり体を休めていってください」
 荒野は、もっともらしい顔をして、頷く。
「……ついでに、その楓さんの実力も、ちゃんと他のやつらにも伝えておきますよ……」
 東雲はそういって、首をゆらゆらと揺らす。
「当代の二宮、第三位に圧勝……って噂流せば、無駄に挑戦してくるやつも、がっくり減るだろうし……」
「そのことについては……よろしく、お願いします」
 荒野は、そういって素直に頭を下げた。楓も、すぐに荒野に習う。
 荒野にしろ楓にしろ……無用な騒動を望んでいるわけではないのだった。

 マンションの前で皆と別れ、荒野と茅はマンションに戻った。
 部屋に戻ると、茅はシャワーを浴びにバスルームに入り、さほど汗をかいていない荒野は、キッチンのテーブルの上にノートパソコン置き、立ち上げてメールチェック、ついでに一族が管理するサーバにも接続し、公開されている情報に一通り目を通す。
 ここ数ヶ月、実務から遠ざかっている荒野だが、今回の事もあって、もっと積極的に他の術者の動向をチェックしておいた方がいい、と、思い直した。このようなサーバにアップされている情報は、所詮、「公式見解」であり、皮相な部分しかみることしかできないのだが……それでも、何も参照しないよりは、遙かにましというものだ。
 荒野がノートパソコンに向かっていると、バスルームから頭にバスタオルを乗せただけの茅が戻ってきた。
「荒野。
 髪、お願い」
 茅は椅子引き寄せ、ドライヤーとブラシを持ってきて、荒野に背を向けて座る。
 体はきれいにふいているが、髪は乾かすのが大変だから、荒野に手伝え……ということらしい。
「……いいけど……」
 荒野は、ノートパソコンから顔を上げて、頷く。茅が荒野に髪の手入れをさせるのは、いつものことだ。
「何か服着ないと、風邪引くぞ……」
「いいの」
 茅は、荒野の言葉には従わず、椅子から立ち上がらなかった。
「今、体が火照っているから……荒野が髪の手入れをしている間、冷ますの」
 荒野がブラシとドライヤーを手にして、茅の髪をいじりはじめると、今度は茅の方が、荒野のノートパソコンに向かいはじめる。
「……何?」
 荒野が、茅に尋ねると、
「今日の、ボランティア。
 この雪だから……放置ゴミよりは、雪かきでもする方が、みんなの役に立つと思うの……」
 茅は、自分たちで構築したボランティア活動のサイトを開いて、管理画面にログイン、関係者各位に「雪かきに予定変更した方がいいのではないか?」という提案同報メールを送った。




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彼女はくノ一! 第五話(255)

第五話 混戦! 乱戦! バレンタイン!!(255)

 目覚ましが鳴って目を醒まし、のそのそと起き出した羽生譲は、片手で目覚ましを止め、もう一方の手で愛用のどてらをまさぐる。どてらを羽織、緩慢な動作で起き上がると、台所へと向かった。
 朝食の準備は、下拵えをすでに誰か準備していて、ほんの少し手を加えれば、すぐにでも食事ができる体制が整っていた。それを確認してから、まだ寝ぼけ眼の羽生は、のろのろと洗面所へと向かう。
 顔を洗いながら、窓の外を確認し、
「……あっ。積もってら……」
 と、呟く。
 雪自体は珍しくはないが、このあたりでは、五センチ以上の積雪は珍しい。
 うがいをしてから顔を洗い、タオルを使ってから、独り言をいう。
「……ちびちゃんたちは、はしゃいでっかなぁ……」
 いつもなら、みんなで元気に走っている時間なのだが、この雪だといつもと同じとはいかないだろう。テンとガクはどっか南の保田育ったという話しだから、今頃、はしゃいで遊び回っているのかも知れない……と、羽生は思う。
 そんなことを考えていた時、ちょうど、玄関の方で物音がした。何人かの声がする。
「さて……遊び疲れて、帰ってきたかな……」
 羽生は、ぼりぼりと寝癖のついたままの頭をかきながら、玄関へと向かう。
「やっ。ども」
 そして、そこで、女性を背負ったどこか軽薄そうなにやにや笑いを顔に貼り付けた若い男に挨拶される。
「……ども」
 とりあえず、羽生は、挨拶を返して、その後、
「ええと……誰?」
 と、首を傾げる。それから、その後に立っていた、楓、テン、ガクをぐるりと見渡し、
「……君たちは、そのままお風呂に直行」
 と、廊下の奥を指さす。
 楓は比較的「まし」だったが、テンとガクは、頭のてっぺんからつま先まで、全身雪まみれ、だった。
「……あの……わたしゃあ……」
 女性を背負った男が、情けない声をあげる。
「……初対面の男を、この女所帯にあげると思う?
 常識として……」
 羽生は、その、名前も知らない男をにらみ返す。
「……ああっと……そうっすね……」
 男は、視線を上空にさまよわせる。
「じゃあ……せめても、こっちのお嬢だけでも……」
 と、背中に背負っている、白いダウンジャケットを羽織った女性を、羽生に示す。
 寝ているのか、気を失っているか、判然としないが、眼を閉じている。
「あ、あの……」
 楓が、助け船を出した。
「胡散臭いし、信用できないのも無理ありませんけど……そんな、悪い人たちではないと……思いますよ?」
 最後の最後で、疑問形になるのは、楓も二人のことをよく知らないからだった。
 しかし、楓には、小埜澪を気絶させた、という引け目があったので、少し強引になっても羽生を説得する必要を感じた。
「……この人、寝てるの?」
 羽生が、目を閉じてぐったりとしている小埜澪を指さす。
「気絶、気絶」
「楓おねーちゃんが勝ったの!」
 テンとガクが、はしゃぎはじめる。
「……つまり……やっぱ、カッコいい方のこーや君の関係者か……」
 羽生が、ぼんやりとした口調で呟く。
 日曜の朝っぱらから、このような形での来訪……まあ、そんなところだろう、と、そう羽生は納得する。
「んじゃ……詳しい話しはまた後でするとして……。
 そこののびているおねーさんは、うちで預かる。おにーさんは、しばらくどっかいっている。
 うちらを信用できなければ、そのまま回れ右して、おねーさん担いで帰る……」
「……あー……まー……。
 妥当な所っすねー……」
 小埜澪を背負った東雲目白が、頷く。
 東雲にしても、気を失っている小埜澪はどこかで介抱してやりたいが、だからといって見ず知らずの一般人家庭に迷惑をかけたいわけではない。
「じゃあ……このおねーさんの許可が出たから、お嬢はしばらく預けていきますわ……」
 そういって東雲は、小埜澪の身柄をそばにいたテンとガクに預けた。
 小埜澪の体を二人がかりで抱えたテンとガクは、「お風呂、お風呂」といいながら、廊下の向こうへ去っていく。
「ここいらで、この時間にあいてるのは……コンビニかファミレスくらいっていってたか……。
 ファミレスにでもいって、時間、潰してます……」
 そういって、玄関から出て行こうとする東雲の背中に、
「……ちょっと、待ったぁ!」
 羽生が、声をかけた。
「その……できれば、ここから一番近いファミレスも、やめておいて欲しい!」
 この家から一番近いファミレス、といえば、羽生の勤務地でもあった。
 東雲は世にも情けない表情になり、がっくりと肩を落として去っていく。
「……あの……ちょっと、かわいそうな気も……」
 口を挟めないまま、おろおろした表情で二人のやりとりを見守っていた楓が、東雲に同情的なコメントを寄せる。
「なに。
 いざとなれば、カッコいいこーや君あたりに相談するさ……」
 羽生は、平然とそう言い放った。
「で……楓ちゃん。
 君たち、朝っぱらから、一体何をやっておったのかね?」
 今度は、楓の番だった。
「……ええっ、とぉ……」
 小埜澪を運び込んできた以上、羽生も知っておいた方がいいだろう……と、思った楓は、玄関先で順を追って、「今朝の出来事」を羽生に説明しはじめる。
 なし崩し的にテンとガクとの雪合戦がはじまり、あの、気を失っている女性が、それに介入してきた。最終的には、女性と楓の一騎打ちとなり、結果、小埜澪が運び込まれることになった。さっきの男は、女性の、付き人だかお目付役だかで……。
 楓自身、あの女性とか男とかの背景を、聞いていないから、実際に説明しはじめると、表面的な出来事の羅列になってしまう。
「……ま、あの人はしばらく休ませるってことでいいけど……後は、改めて、カッコいいこーや君の説明待ちってこったな……」
 楓が説明が要領を得なかったので、羽生は、途中でそういって、説明を打ち切った。
「手当とか必要なら、先生も呼んでおいた方がいいし……」
 楓が必要だと判断するなら、荒野や三島も呼ぶべきだ、と、羽生はいう。




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「髪長姫は最後に笑う。」 第六章(171)

第六章 「血と技」(171)

 そこまで全速力で走ってきた茅は、しばらく酸素を体内に取り込むのに忙しく、しゃべることができなかった。
 自分の心音が、うるさいくらいに聞こえる。体中の細胞が、不足した酸素を求めて脈動している。
 腿の上に手を置いて中腰になりながら、ぜはぜはと忙しなく呼吸しつつ河川敷で行われている出来事を、しっかりとみつめる。
 白いダウンジャケットを脱ぎ捨てた鎖帷子の女性、小埜澪が優勢に見えたのは、最初のうちだけだった。
 何発かの六角を楓に投げつけたが、それらはことごとく弾かれる。その後、何故か、小埜澪はしばらく動きを止め、楓の出方を伺った。
 対する楓は、六角を弾いたまま、くないを握った手を前に出して構えるだけで、自分からは動かない。
 いや、自分からは動けないのだ……と、茅はすぐに気づく。雪の上に残った、楓の足跡が、予想以上に浅い。今の楓は、ほんの申し訳程度しか、武器を持っていないのだ……と、茅は悟った。
 自分の窮地を悟られないように、表情を引き締めているが……今の楓の中では、ここまで無防備であった自分を、叱責しまくっているに違いない……と、楓の性格を知る茅は、予想する。
 そして、小埜澪の方は……怪訝な表情をしながらも、楓の出方を、わざわざ待っている。
 甘いな……と、楓は思う。
 小埜澪は、「強さ」を見極めようとすることに拘泥するあまり、「勝負」への執着が、緩くなっている。
 楓が動かないなら動かないで……出方を待つよりも、もっと積極的に攻撃して、楓の疲弊を誘うべきなのに……と、茅は思う。
 以前、荒野に刺客がくる可能性を指摘されても、ほとんど武装せずに出歩く楓と同じくらいに、甘い……と、小埜澪のことを、茅はそう、評価する。
 完全武装をしていても……相手の出方を待つ、などという真似をして、楓に気持ちを落ち着かせる機会を与える、というのは……相手を潰す機会を与えられながらそれを生かさない、ということで……茅には、アマチュアのじみた発想に思えた。
 公正なルールの上で戦うスポーツマンなら、賞賛すべき精神なのかも知れないが……一族は、どう間違っても、そうした存在ではありえない。
 
 楓の方から動くことはなさそうだ……と思ったのか、小埜澪が、動いた。
 楓に向かって六角を立て続けに投げつけながら、拳と蹴りを繰り出す。いささかの淀みもない流れるような動作で、楓でなければ、ひとたまりもなかったろう……と、それぞれの攻撃に込められたエネルギー量を瞬時に計測した茅は、そう断定した。
 六角、拳、蹴り……そのどれもが、一発でもまともに命中すれば、致命傷になるだけの力を秘めている。「当代の二宮、第三位」という名乗りは、決して誇張ではないのだろう……と、茅にも納得ができる、見事な攻撃だった。
 だが、それも……攻撃が、当たれば……ということが、前提の話しだ。
 小埜澪の攻撃は、楓には通用しない。
 何故なら、楓は……普段から、それ以上の攻撃に晒されている。だから、最小限の動きと力で、すべての攻撃を、いなした。
 そして、小埜澪の手足をかい潜り、くないを握りしめたままの拳を、小埜澪の水月に叩き込む。
 カウンター、になった。
 それも、常人離れした小埜澪の、全力の攻撃がそのまま一点に集約されて、跳ね返された形だ。
 小埜澪を迎えうった楓は、しっかりと両足で大地を踏みしめて、小埜澪の体を弾き返す。
 一瞬、制止した後、小埜澪の体は、軽々と宙に飛んだ。
 茅には……小埜澪のメンタリティが、多少は想像ができた。
 先天的に……一般人はもとより、大抵の一族の者をも圧倒する身体能力を持っていた小埜澪は……おそらく、「自分を恐れる者」の存在には慣れていても、「自分を恐れずに立ち向かってくる者がある」とは……まるで、想像できなかったのだろう。
 楓にしてみれば……能力的にも武装においても劣る現状で、こんな博打じみたやりよう以外に選択肢がなかったから、実行したにすぎない。
 だが……楓以外に、いったい誰が、「二宮の上位者」に対して、自爆覚悟のカウンター狙いなど行えるというのか……。
 
 小埜澪は、もんどりうって雪上で大の字になって伸びたまま、ぴくりとも動かなかった。
「……長老の秘蔵子。最強の二番弟子。そして、加納の若の子飼い……」
 誰もが絶句する中、東雲目白の飄々とした声が聞こえる。
「噂以上の代物ですな、あの子は……。
 恐れを知らないが、畏れは知っている……。
 あれが最強の弟子のクオリティなら……うちのお嬢じゃあ、明らかに役者が不足というもので……まあ、再三の弟子入りの申し入れを断られるのも、よく理解できますわ……」
 東雲目白は頭をかきながらそんなことをいい、途中で小埜澪が脱ぎ捨てた白いダウンジャケットを拾い上げ、ついで、気を失っている小埜澪の上体を起こし、その肩に拾い上げたダウンジャケットをかける。
「ま。
 ごく少数の例外を除いて、向かうところ敵なしって状態だったから……うちのお嬢にも、いい薬でしょう……。
 これで、火遊びをする癖がいくらかでも収まってくれると、わたしとしても楽ができるんですけどねぇ……」
 そして、小埜澪の体を、軽々と抱き上げる。
「お嬢がこんなに、完膚無きまでにやられるのも……子供の時分、以来だなあ……」
「……おじさん、おじさん……」
 そんな東雲目白に、ガクが声をかける。
「おじさんって……そりゃ、君たちよりは年寄りだけどさぁ……」
 東雲は、そんなことをぶちぶちいいはじめる。
「そんなことより、おじさん。
 そんなおねーさん抱えて、どこか行くところあるの? こんな朝早くに?」
「……いや……正直、始発で着いたばかりで、お嬢があんなんおっぱじめちゃったし……」
「やっぱり……。
 ここいらへん、今の時間に開いている所って、二十四時間営業のコンビニかファミレスくらいしかないよ……」
 ガクが、そんなことを言いだした。
「行く当てがないんなら……とりあえず、家に来たら?
 ご飯とお風呂くらいなら、用意できると思うし……」




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彼女はくノ一! 第五話(254)

第五話 混戦! 乱戦! バレンタイン!!(254)

 楓が橋にたどり着く頃には、追う側と追われる側の距離は五十メートル以上、開いてしまっていた。
 一旦、橋に入ってしまえば、後は見通しの良い一本道であり、遮蔽物になりそうなものはなにもなくなるのだが、これだけの距離が開いてしまっていては、しかも、全力で走りながら、ということでは、雪玉を投げてもまず命中しない。
 これだけの距離をあけても、なお楓は油断せず、不定期に体を左右に揺すって蛇行している。
 追う側の三人のうち、先頭を走っているテンは、もはや楓に雪玉を投げつけることを諦め、走ることに専念した。
 小埜澪は、そうしたテンの見切りの良さにも好印象を覚えたが、だからといって、これだけ開いた楓との距離がいきなり縮まるものでもない。
 楓はあっというまに橋渡り終え、中州の土手に降り、河川敷へと姿を消した。
 追う側も、少し遅れて、テン、小埜澪、ガクの順に橋を渡りきる。橋を渡りきると、テンは、楓を追って土手上の遊歩道から河川敷へと、躊躇することなく
急斜面を下っていく。
 もちろん、楓は、迎撃体制を整えて待ちかまえていた。足元にいくつもの雪玉を積み上げ、片膝立ちになっている。その姿勢だと、地面に用意した雪玉にそのまま手が届き、連投が可能になるから、だろう。
 事実、楓は、テンの姿が視界に入るのと同時に、次から次へと雪玉を投げつけはじめる。
 テンは、
『これが実戦で、雪玉が投擲武器だったら……失血して動けなくなっているな……』
 とか、
『シルバーガールズの装備があれば、そんな心配もなくなるんだけど……』
 などと、思いつつ、楓が放った雪玉を一つ一つ的確に腕で薙ぎ払い、楓に向けて突進していく。
 すぐ後に、ガクが続いている。
 今、ここで楓の注意を自分に集中させておけば、その分、ガクが動きやすくなる……。
 そういうテンの計算通り、テンの背中から楓に向けて、雪玉が飛びはじめる。楓は、テンへ投げつけるのと同時に、ガクが投げた雪玉にも自分の雪玉をぶつけて、自分に当たるのを防いだ。
 テンが打ち払って粉砕したものと、空中でぶつかり合った雪が砕けたものとで、周辺の空気が白くけぶる。
 そんな中、ガクは腕を振り回しながら、楓に肉薄する。
 近寄ったからといって、今のテンが楓に、まともに対抗できるものとも思わなかったが……それでも、それなりに粘れるだろう、と、テンは想定していた。あるいは、今の時点で、どの程度、自分が楓と渡り合えるのか、知っておきたい……という好奇心も、ある。
 雪を周囲にまきちらしながら、テンが間近に迫ると、楓は一挙動で立ち上がってテンとの間合いを詰め、テンが、
『あっ。やば……』
 と思った次の瞬間には、テンの体は天高く宙に舞っている。

 雪玉を投げつつ、テンに続いて楓に向け殺到していたガクは、途中から楓の姿がテンの背中に隠れたので、雪玉攻撃を中断したまま近づいていくことになった。
 少し距離を置いた場所から、前衛で楓と対峙しようとしていたテンを支援するつもりだったが、この位置では、雪玉を投げれば楓よりもテンにぶつかってしまう。
 そんなガクも、テンと楓が接触した……と、思ったら、すぐにテンの体が宙に舞ってしまったので、いささかあっけにとられた。
 タイムラグがほとんどなかったから、まさに、鎧袖一触。組み合う間もなく、ガクが一方的に楓に投げられた、ということになる。
 楓にしてみれば、荒神に稽古を受けている時、何度も繰り返し投げられた経験により、いつの間にかこうして体で「投げる動作」についても憶えてしまっていたのだけなのだが……動揺しているガクには、そこまで想像を巡らせている余裕がない。
 そして、その楓は、テンを投げ飛ばした後も、いささかも速度を落とさず、ガクの方へと向かっていく。
 このこともまた、テンが足止めにもならなかった事実と同様に、ガクの予想をこえている。そして、テンと同様に、ガクも楓に呆気なく空中に投げ出された。

「……よくやった、子供たち……」
 足を止めて成り行きを見守っていた小埜澪は、簡潔に名乗る。
「当代の二宮、第三位。小埜澪!」
 そして、着ていた白いダウンジャケットを脱ぎ捨てて、楓に向かって殺到した。
 ダウンジャケットを脱いだ下は、鎖帷子姿。しかも、帷子のほぼ全面にびっしりと六角が固定されている。その帷子だけでも相当な重量になる筈で、並の一般人が着込んだら、それだけで身動きがとれなくなっただろう。だが、小埜澪の動きによどみはない。「当代の二宮、第三位」の呼称は、伊達ではないらしい。
 鎖帷子から六角を抜き取って、楓に向かって投じながら、小埜澪は楓に向かって突進する。その六角の速度も、確かに、楓が経験した中では、かなり速い方だった。
 しかし、楓はくないを抜き放ち、難なく、最小限の動きで、飛来する六角の軌道を、ことごとく逸らした。六角がくないに当たる感触が、ひどく重い。
 現在の楓は、最小限の武器しか身につけておらず、潤沢な武装を有する小埜澪とは対等の条件にはない。投擲武器も、節約してここぞという場所でしか使用できない有様だった。
 少し前、荒野に「これかは、楓自身も狙われる」と警告されていたのだが、楓の基本的な性分として、そのことを本気で受け止めることが出来ず、日常的に重い武器を持ち歩くことを、楓は避けるようになってきている。
 そうした自分の態度を「……怠慢だ……」と、楓は思った。
 小埜澪は、何十発かの六角を少し離れた間合いから楓に投げつけたが、その全てが楓によって弾かれると、怪訝な表情をして、何故か、手を休めた。
「……反撃、しないのか?」
 本当に不思議そうなあ表情と声で、小埜澪が、楓に尋ねる。
 楓は、答えない。いや、答えられない。
 自らの不明を告白し、自分の不利を現在戦っている相手に告げる、というのは、あまりにも、愚かな行為だ。
「……そっか……じゃあ……」
 小埜澪も、楓の返事は特に期待しておらず、確認しただけだったようだ。
「遠慮なく、行く!」
 小埜澪は、楓との間合いを一気に詰める。
 六角を多数、投擲しながら、同時に、手足による打撃を繰り出す。何しろ、「二宮」の筋力での攻撃だ。素手であるといっても、侮ることはできない。六角にしろ、手足による攻撃にせよ、まともに食らえば、半端ではないダメージを受けるだろう。小埜澪のシャープな身のこなしは、平素の密度の濃い修練を否が応でも連想させた。
 それでも……。
 楓は、くないで六角を弾きながら、小埜澪の手足をかいくぐって、懐に潜り込む。
 飛来する六角が、いくら速く重い、といっても、孫子のライフルには及ばない。
 小埜澪の体術が、如何に研ぎ澄まされたものでも、荒神の動きとは、比較にならない。
 普段から「もっと凄い攻撃」に慣れ、それをかわしている楓は、難なく小埜澪の手足を避け、かいくぐりくないを握ったままの拳を、小埜澪の水月に当て、小埜澪の突進を受け止める。
 その時の楓の両足は、しっかりと地面を踏みしめていた。
 一拍の間の後、楓は、全身のバネを使って、小埜澪の体をはじき飛ばす。
 全身の力で向かってきた小埜澪を、楓も、全身の力でカウンターに持ち込んだ。
 小埜澪の体が、軽々と宙に飛ぶ。




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「髪長姫は最後に笑う。」 第六章(170)

第六章 「血と技」(170)

 茅は、路上を走る時と変わらない速度で、電線の上を走る。走りながら、茅は、首に吊した紐をたぐって、双眼鏡を構えている。電線の配置をすべて記憶している茅は、足元を確認する必要もなかった。風力、それに、茅の自重と走ることによって生じるたわみ、など、自然現象によって起こる要素は、すべて茅の頭の中でシミュレートできる。通行人さえいないこの場所では、茅は脳裏に浮かぶ像に従って足を動かしていけば、落下する心配はほとんどない。
 だから、茅は、全速力で走りながら、双眼鏡を構えることが可能だった。
 先ほども、楓が電線や街路樹の枝に積もった雪をテンとガクの上に落として、結果として二人を分担したこと双眼鏡で確認し、荒野に伝えたばかりだった。
「楓は、三人の分断を図りながら、河原の方に向かっている」
 と。
 繋ぎっぱなしの携帯電話から、荒野の声が聞こえてくる。それによると、荒野は、先ほどベランダにいた男と同行して、軽く情報交換をしているらしかった。荒野の声は拾えたが、その男がしゃべったことまでは、茅の耳には入らない。
 ただ、荒野がいったことを聞いているだけでも、ベランダにいた男とテンやガクの後をつけている白いダウンジャケットの関係や立場は、茅には容易に推測することができた。
 白いダウンジャケットは、この土地に流入してきた一族の者たちが流布した噂話を耳にして、楓の様子を見に来た。ベランダの男は、その白いダウンジャケットの仲間。
 ベランダにいた男は、素行になんらかの問題がある白いダウンジャケットの動向を監視し、もし問題が発生しそうなら、その場で白いダウンジャケットの行動を阻止するための……いわば「お目付役」なのではないか、と、茅は、断片的な荒野の発言から推察する。
 だとすれば、ベランダの男は、白いダウンジャケットが暴走した際、抑止力となりうる何らかの切り札を所持している可能性が高い……と、茅は、さらに推測を進める。ベランダの男は、白いダウンジャケットの能力を高く評価するようなことをいいながらも、だからといって、それを恐れる様子をみせず、むしろ、飄然と余裕のある態度を崩していない。
 また、ベランダの男が一度だけ名前を出した「先代」というのが、具体的に誰を指すのか……あの白いダウンジャケットの身柄をベランダの男に預けたらしい人物の正体について、茅はかなりひっかかりを憶えたのだが……一族内部の内情についてよく知らない茅には、どんな予想も不可能だった。
 情勢に大きな変化は見られないし、今の時点で荒野たち二人の会話を邪魔するほど緊急の用件でもないので、茅はそのことには口をつぐんだまま、双眼鏡で楓たちの動向を監視しながら、電線の上を全速力で駆け抜けていく。

 茅が黙っている間にも荒野たちの会話は続き、茅が、
「……楓たちが、橋を渡りはじめたの」
 と、「状況の変化」を荒野に報告する。
 楓一人を追う三人、という構図は、崩れていなかったので、荒野にはあえて報告しない。何も言わないことが、「変化なし」という報告の代わりであり、荒野にはそれで通用する筈だ。
 茅がそう報告した直後に、マイクが、急にノイズを拾うようになった。
 どうやら、開けた場所にでて、マイクへの風当たりも強くなったため、らしい。
 茅は、荒野たちの現在地まで把握していないが、おおよその目的地はぼ確定しているのだから、荒野たちの現在地についても、おおよそ見当がつく。
 今、風の強い、開けた場所……橋の上に来た、ということは、楓たちにそう遅れずに、荒野たちが追尾している……ということだ。
 双眼鏡の中の楓たちは、あっという間に橋を渡りきり、土手の向こう側へと姿を消した。
 茅の推測を証明するように、荒野ともう一人の男が、楓たちのすぐ後を追っていく。
『……ちょうど、これからいい所、みたいだね。
 雪積もっているし、今の時間のここなら、人通りもほとんどないから……しばらく、高見の見物といこう。
 お手並み拝見、ってね……』
 それからいくらもしないうちに、ヘッドホンから、そんな荒野の声が聞こえてきた。
 荒野たちは、橋を渡り、河川敷にいる楓たちに、追いついたのだ。
 双眼鏡でも、荒野たち二人が土手の上に立って、下方の河川敷を見下ろしているのが、見えた。
 もはや双眼鏡は必要なし、と判断した茅は手を離し、双眼鏡が首紐にぶら下がるままにしておいて無造作に空中に飛び出し、そのまま、、電線の上から地上へと落下する。
 茅の柔軟な下半身の筋肉は、落下の衝撃を難なく受け止め、茅は、着地直後から、足跡の付いていない雪の積もった道路を、まるで何事もなかったよう駆けだしていく。
 雪が積もっていることと、まだ早朝と呼んでよい時間であることが幸いして、あたりには車通りも人通りもない。仮に車両や歩行者が通りかかったとしても、鋭敏な聴覚を持つ茅は、数十メートル先からその存在に気づく。
 だから、茅は、交通規則に構わず、車道の真ん中や十字路でも足を止めずに平気で横切り、最短距離を走っていった。
『まずは楓の手の内を確かめてから……という、予測通りですね。
 まずは、あの二人をけしかけた……。
 さて、今度は……前よりは、長く保たせられるかな……』
 携帯に接続したヘッドホンから、荒野の声が聞こえる。
 テンとガクが、楓に向かっていっているらしい。
 そうした声を聞きながら、茅は、火照った顔で冷たい風を切る感触が、心地よい……と、茅は思ったが、楓や荒野は、もっと「速い」世界を普通に体験しているのだ、と思うと、少し悔しい気もする。
 マンションを出てから全力疾走をしていた甲斐があって、茅は、荒野からさほど遅れずに橋に到着した。
『以前より……少しは、ましか……。
 でも、まだまだ飛び道具を使っての戦い方に、慣れていない……かな』
 荒野は、どうやらテンとガクの戦い方を論評しているらしい。
 テンとガクは、予想通り、楓にあっけなく圧倒されたようだ。
 その時、茅は橋を渡りきった。そのまま足を緩めず、荒野が立つ場所へと土手の上を走っていく。荒野の姿がどんどん大きくなる。
「……って、いきなりマジかよ! 全開ですかよ!」
 ヘッドホンを通さなくとも、荒野の声が聞こえる距離にまで近づいた。まだ茅の存在に気づいていない荒野は、河川敷の方を指さしてわめいている。
「お嬢は……そういう、人なんです……」
 ベランダにいた男も、そういって肩を竦めている。
 茅が立ち止まって荒野が指さす方向……つまり、土手下の河川敷を見ると、そこには、白いダウンジャケットを脱いで、楓に殺到していく女性の姿があった。
 その女性は、ダウンジャケットの下に鎖帷子を着込んでいて、その鎖帷子には、夥しい六角が据え付けられている。
 その姿を目の当たりにすれば……荒野のいうとおり……「マジ」で「全開」だ、と、茅も、思わないわけにはいかなかった。




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彼女はくノ一! 第五話(253)

第五話 混戦! 乱戦! バレンタイン!!(253)

「……はいはい。
 ぐずぐずしない。当たろうが当たるまいが、どんどん雪、投げて、弾幕を張って……」
 その女性は、テンとガクをけしかけた。
「直撃は無理でも、向こうの足を鈍らせる役にはたつから……。
 攻撃とは、詰まるところ、嫌がらせだ。相手が嫌がることを、どんどん積極的にやること……」

『……素直に、逃がしてはくれないか……』
 背後から急に攻撃がはじまったので、楓は余計な迂回行動を余儀なくされる。自分の背中を遮蔽物で遮ったり、それが無理なら、いきなり塀やフェンスの上に飛び乗ったりして、高低さをつけ、一時も狙いが定まらないようにする。
 弾幕の密度から察するに、今のところ、新参の女性は攻撃には加わっていないようだが……テンとガクの動きに、粘りができている。
 それまでの二人なら、攻撃する時は、直接的にダメージを与えることしか考えない。直接的なダメージにはならないけど、間接的な攻撃を連続して相手を疲弊させる……とい迂遠な方法は、それまでの二人の発想にはないものだ。
 ……仕方がない……。
 本格的に、疲弊する前に……対策を、講じておくか……と、楓は思った。
 路地から塀の上に飛び乗り、そこをダッシュ。数十メートルの距離を一気に稼ぎ、そこで踏み込んで、跳躍。歩道橋の手摺の向こう側ヘと姿を消す。歩道橋の手摺に、楓の背中に向け、テンとガクの投じた雪玉は空しく手摺にぶつかる。
 楓はかがみ込んで、歩道橋の階段に積もっていた雪を掬うと、素早く握りしめて固め、手摺の上に頭と手だけ出して投じ、投げた雪玉がどうなったのか、確認もせずに駆け出す。
 楓が投じた雪玉は、狙い通り、何本か併走して走っていた太い電線に命中、その上に積もっていた雪が、直線状に落ちていく。その下には、楓を追って塀の上を走っていた、テンとガクがいた。そのうちガクは、落ちてきた雪を避けるため、塀の上から歩道に飛び降りる。テンは、何故かその場に立ちすくんで、両腕で頭の上をかばった。
 そのテンの上に、電線の上に積もっていた雪が落ちてくる。
「……テン……」
 なんで、避けようとしなかったのか……と、地上に降りてそれを避けたガクは、いいかける。
 が、その言葉をいい終えるよりも早く、ガクの上に、テンの頭上に降ったの量に数倍する雪がどさどさどさっと落ちてきた。
「……こっちが側は建物があって行けないし、そっちに降りると、樹があったから……枝の上に積もった雪が、一気に落ちるかな、って……」
 テンは雪まみれになったガクに簡単に説明し、
「じゃ、先に行っているね……」
 と、いい残して、楓の追跡を再会した。
 ガクの降りたった歩道には、街路樹が植えてあり、その枝に積もった雪が、楓が落とした電線上の雪、という負荷を受け、一気に落ちてきたのだった。
 テンに続いて、少し離れて後を付けてきていた白いダウンジャケットの女性が、塀の上を駆け抜けていく。
 それを見届けた後、ガクはようやくのろのろと雪の小山からの脱出を開始した。

『……素直に、逃げてはくれないか……』
 最初、迂回行動を増やしただけだった楓が、反撃をしつつ、の、逃走行為に転じたのをみて、その女性は楓のセンスを評価する。
 楓は、それまでも頻繁に遮蔽物に身を隠していたのだが、今度は、その遮蔽物から出てくる時に、素早く雪玉を投げてから逃走するようになっている。その狙いも……。
『……二人に、集中している……』
 三回に一回は、命中する。それだけ、二人の足が止まり、歩調が乱れる。
 現在、楓がしているように、頻繁に進路をかえつつ、こうした足止めを食らうと……。
『……最悪、ロストする……』
 マニュアル通りの対応だが、それだけに効果があった。
 それに、楓の狙いは、完全にこちらを振り切ること、ではなくて……。
『……こちらの足並みを乱して、捕捉されないようにすること……』
 この二人も、実戦経験がないからか、勘所が働いていないだけで、「戦力」としては申し分ない。今のままでも、並の術者よりはよほど「使える」。
 油断をすれば、楓だってあっという間に捕まるだろう。
 でも……。
『……あの子は、油断しないな……』
 その女性は、心中で頷く。
 あの素直さは……いっそ愚直さ、といい直していい。相手が誰であれ、手を抜くことはないだろう。あのタイプは、常に、最善を尽くす。
 慢心から一番縁遠い人種だ……。
 そして、天賦の才に優れた、優れた資質を持つ者よりも……時として、ああいう努力家タイプの方が、敵に回すとかえって厄介だったりする。
『……荒神さんが、気に入るわけだ……』
 現在の一族の術者は、自分の能力の上に胡座をかいているタイプが多い。どうあがいても、一般人を圧倒する能力を、先天的に持っているからだ。
 そのため、自分の能力をフルに使いきる「謙虚さ」に欠ける傾向があり……時に、そのことによって、足元を掬われる……。
 その女性は、持てる力をフル稼働させて逃げ続ける楓の背中と、必死になってそれに追いすがっていくテンとガクとを、見守る。
 一族から出たわけではないのに、並の一族以上の働きができる少女と、一族以上の能力を持ちながら、戦う術を仕込まれてこなかった子供たち……。
 ……いい、組み合わせじゃないか……と、その女性は思う。
 そして、口に出しては、こういった。
「……ほら、子供たち。
 向こうさんは、こちらの足を停めながら、河の方に誘導しているみたいだよ……」
 そこでなら、思いっきりやりあえる……と、いうことなのだろう。土地勘のないその女性にも、その程度のことは、予測ができた。楓は、蛇行しながらも、明らかに橋の方に向かっている。
 テンやガクの追撃も、次第に手慣れてきたのだがこの近辺の地形を熟知している楓は、巧妙に背後からの攻撃をカわし、隙あらば反撃に出る。柔軟で臨機応変な牽制のおかげで、楓との距離は、一向に縮まなかった。
 やはり、一番、敵には廻したくないタイプだ……と、その女性、小埜澪は思う。





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「髪長姫は最後に笑う。」 第六章(169)

第六章 「血と技」(169)

「……荒野。
 楓は、三人の分断を図りながら、河原の方に向かっているの……」
 携帯に向かってそういうと、ベランダで双眼鏡を構えていた茅は、これからどうしようかと思案しはじめる。今でさえ、遮蔽物に隠れがちな三人の姿を眼で追尾するが、困難になっていた。これ以上、距離が開いたら、完全にロストするだろう。
 そう判断すると、楓は決然ときびすを返して室内に戻り、着替えをしはじめた。
 もっとよく、全体の戦況を視認出来るポジションへ、移動しなければならない。

「……楓目当てかよ……」
 東雲の「二宮の第三位」という言葉を聞いた途端、荒野は、うめくようにいった。
「ええ。たぶん……」
 東雲も、頷く。
「なにぶん……言いだしたら聞かない方でして……」
「ある程度、予測はしていたが……こんなに早く、それも、こんなに大物が出張ってくるなんて……」
 荒野はそう嘆じるのだが、東雲は平然とした顔をして説明する。
「お嬢は……もともと、最強を、荒神様を強く意識しておいでです。
 それ故、その、楓様の噂も、かなり気にしておいででした」
 荒野と並んで、「最強」に「弟子」として認められた存在……というステータスは、荒野の予測以上に、一族の中では重く見られているらしい……。
「……そんな中、移住組の件で……楓への接触が、事実上、解禁になった、と……そういう、ことか……」
 走りながら、荒野はそう独りごちる。
「その……移住組から流入してくる噂、というのもあります……。
 並の者が何十人かでかかっていっても……あの子と才賀宗の小娘の二人で、いいようにあしらわれたとか……酒見の双子が、手も足も出なかったとか……」
 東雲が、荒野の独り言に補足する。
 一族とは、何世代にも渡って「情報」を扱ってきた者たちである。そうした噂話の伝播も、速やかに行われる。
「さらにいうと……新種たちが中心になってやっているネット配信のアレ、一体何なんですか!」
 東雲が、呆れたような口調で荒野に食ってかかった。「シルバー・ガールズ」のことだ。
 荒野には、東雲が憤る理由が、よく理解できる。
 確かに……一族のテーゼからみれば、自分たちの能力をわざわざ誇示するような真似は……言語道断も、いいことだろう。
 しかし……。
「あれは……作戦、だ……」
 荒野としては、そう説明するより、仕方がない。
「こっちとしても、必要に迫られてやっていることで……聞いてない?
 町中で、ガス弾を使った連中のこと……おれたちは、悪餓鬼たち、って呼んでいるんだけど、そいつらの注意をこっちに向けるための囮でもあって……」

 トレーニングウェアに着替えた茅は、部屋出て玄関に鍵をかけ、非常階段へと向かう。
 屋上に出ることも考えたが、あれだけ遠くに行ってしまうと、それでも楓たちの様子を捕捉できないだろう……と、思える。
 非常階段に出た楓は、
『……大丈夫、自分は、高性能な全方位方センサーだ……。
 楓たちに出来て、自分にできない筈がない』
 と、そう自分に言い聞かせて、非常階段の手摺りの上に立ち、そこから、三メートルほど先にある電信柱へと跳躍する。多少、落下はするが、今の茅の跳躍力なら、ギリギリ届く筈だった。
 届いた。
 茅は、電信柱の横に突きだしている、棒状の鉄筋、メンテナンス用の足場材になんとか手をかけることに成功した。その足場材の下には、地上まで、何もない。懸垂の要領で、腕の力だけで自分の体を持ち上げ、上部の、変電器の所までよじ登る。
 そこからさらに変電器の上にまで昇り、その後、茅は電線の上を走りはじめた。
 茅は、現在の自分に可能な動作を、全て把握している。そのための、毎朝のトレーニングだ。
 どれくらいの速さで走れるか、どれくらいの距離を飛べるか、それに、持続力など……自分自身のデータは、全て、茅自身の脳裏に刻まれている。
 同様に、普段生活しているこの町についても、茅は、かなり細かい部分まで、把握していた。生活圏であるこの周辺の情報は、それこそ、電線の一本一本の位置に至るまで……茅の頭に、インプットされている。
 そして茅は、突出した、常人以上の筋力や反射神経などは持たなかったが、代わりに、外界の各種情報を、常時高密度に収集し続けている知性体だった。
 その取り込み続けている各種情報の中には、体感できる重力の偏差も含まれており……つまり、現在の茅なら、不安定な電線の上を、安定した地面を走る時と同じくらいの速さで駆け抜けることは、十分に可能だった。
 もっとも、荒野が心配するので、必要がなければこんなことはしないのだが……今回の事例は、可能な限り早く楓たちの姿を確認できるところまで移動する、という必要性がある。

「はぁ……。
 そっちもまた、いろいろと面倒なことになってるもんすねぇ……」
 というのが、荒野がざっくりと説明したのを聞いた東雲の、感想だった。
「幸か不幸かって、いったら……確実に不幸の方なんだろうが……おかげで、面倒ごとには、不自由していないよ……」
 荒野がそういうと、東雲は、もにょもにょした口調で、
「今回はまた……うちのお嬢がご面倒を……」
 とか、詫びはじめる。
「まあ、そっちにはそっちの事情もあるんでしょう。
 それよりも、ほら……」
 おしゃべりをしつつも足を止めないでいた荒野たちは、楓たちに追いついていた。
 荒野の指さす先、河川敷に、楓と、テン、ガク、それに東雲が「お嬢」と呼ぶノ・ミオの三人が、対峙している。
「……ちょうど、これからいい所、みたいだね。
 雪積もっているし、今の時間のここなら、人通りもほとんどないから……しばらく、高見の見物といこう。
 お手並み拝見、ってね……」
「……ま、お嬢が本気で暴れ出したら……確かに、近くにいない方が、安全ではありますな……」
 東雲も、飄然とした口調で荒野の言葉に頷く。




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彼女はくノ一! 第五話(252)

第五話 混戦! 乱戦! バレンタイン!!(252)

「何やってるの、新種二人!」
 白いダウンジャケットの女性が、語気を鋭くする。
「足が止まったら、すかさず攻撃! 当たらずとも次の行動を阻止する!
 仁木田のにーさんにあんたらがやられたこと、そっくり返してやれ!」
 その女性の言葉に反応し、テンとガクが慌てて手近な雪を集めはじめる。当然、楓は、弾けるような動きでその場から遁走している。
 人数的に不利ということだけではなく、その女性は、その挙動と立ち振る舞いから察するに、かなりの場数を踏んでいるようだった。自分の力量を過信せず、その場その場でできること全てを実践し、最善を尽くすことが習いとなっている……プロの、匂いがする。テンとガクの二人が、あの女性の言葉に従ったのも、そうした気迫を感じ、彼女のいうことなら信じられる、という信頼感を、瞬時に敢行したからに違いない。
『……まずい……』
 身体能力では楓自身を大きく引き離すテンとガクに、楓が遅れを取らなかったのは、二人が、これまで真剣勝負を体験していなかったアマチュアであるからだ。予測が甘く、突発的な動きに即座に反応しきれないから、裏をかきやすい。
 しかし、その二人に、経験豊かな指揮者がついたとなると……それまで楓がもっていた優位は、反転してマイナスになった……と、見るべきだろう。
「……はっ、はあぁ……」
 楓のすぐ後で、声がした。
「迷わず、逃げに入った……。
 やっぱ、荒神さんが見込むだけのことはあるや……」
 楓のすぐ後に、さっきの女性が追いついている。
 どういうつもりか、その女性自身は、直接楓を攻撃するつもりはないらしい。楓は、一目散に逃げるだけで、その女性には何もしないし、話しかけない。
 攻撃してこないところを見ると……明確な害意を持つわけではないらしい。しかし、立ち止まってゆっくり立ち話しできるような、安心できる相手でもなさそうだ……という予感が、ひしひしとする。
「わたし……以前、荒神さんに弟子入り志願したことがあったんだが、体よく追い払われたことがあってねー……。
 その荒神さんが、ようやく認めた二人目の弟子が、年端もいかない女の子だっていうから、見に来たんだ……」
 その女性は、無言のままの楓に構わず、一人で滔々と話しはじめる。
「……そしたら、なんか朝っぱらか面白そうなこと、やっているし……。
 で、不利な彼女らの方に、味方することに決めたってわけ。たった今……。
 ……んー。
 でも……どーしようーかなー……。
 あれ、いくらなんでも、三体対一、ってのは戦力比的にアンバランスだろうし……
 そうだ! わたしは、直接攻撃しないってルールにしよう。実際にやり合うのは、あくまであの二人と雑種ちゃんだけ!
 で、わたしは……あの二人への、アドバイスに徹する! そんくらいで、ちょうど釣り合いがとれる!」
 楓が返答しないのにも構わず、その女性は一人でそんなことをいって、うんうんと頷いている。
「……じゃ、ルールは、そういうことで。
 雑種ちゃん! また後でねー……」
 快活にそういって、すぐに姿を消した。
『……わからない、人だ……』
 その女性について、楓はそんな感想を持った。
 明確な敵意は、ないらしい。荒神の名前を出してきたこと、それに、身体能力やさっき二人に檄を飛ばした時の様子などから察しても、それなりの実力を持つ一族の者だとは思うのだが……。
『一体、何を考えているのか……掴み所が、ない……』
 雰囲気的に……師匠に似ているな……などと思いながら、楓は、河原へと向かう。
 今の時間のあそこなら、町中よりは人目を避けられるし……それに、多人数を相手にするのなら、見通しよい場所に移動した方が、楓も様々な事態に対処しやすい。
 直接攻撃してこない……という、さっきの女性の言葉を疑う根拠もなかったが、信頼すべき根拠も、同様にないのであった。

「……って、ことだから、わたしは、しばらく口だけ出すってことで……」
 すぐにテンとガクに合流したその女性は、先ほど楓に説明したのと全く同じ内容を、二人に告げた。
「それは、いいんだけど……」
 テンが、口を尖らせる。
「おねーさん……何者?」
 その女性はにこにこ笑いながら、無言のまま、ぶん、と腕を振る。
 走っているテンの頭に、軽く拳があたって、その攻撃を予測することも避けることもできなかったテンは前につんのめって、少し足元がよろけたが、すぐに持ち直した。
「……なっ!」
 すぐ間近でその様子をみていたガクが、絶句する。
 テンを殴った……殴ることが、「可能だった」……ということは、ガクにしてみれば十分に驚愕に値する。
 テンは……例え一族の者が相手であっても、やすやすと直撃を受けるほど、間抜けではない。ガクやノリと比べれば、明らかに身体能力は劣っているのだが……それとて、「三人の基準では」ということであり……その証拠に、今まで合ってきた一族の者の中で、抜け目のないテンを出し抜けることができたのは、それだけの能力がある、と思える者は、ほんの数えるほどしかいなかった……。
「……おねーさん……」
 ガクが、その表情に、緊張をあらわにする。
「何者か知らないけど……ただ者ではないね?」
「いかにも!」
 女性は、にこにこと笑いながら、ようやく自己紹介をした。
「……次代の二宮を支える第一人者、当代の二宮で三番目に強い、小埜澪ってのは、わたしのこった!
 何なら、おのりんとかみおたんって呼んでもいいよ!」
 ……にゅうたんと話しが合いそうな性格だな……と、ガクは思った。
「それから、そこの君!
 わたし、たいした人間ではないんだけど、それでも一応年上だからさ。
 目上の人には敬意を払い、相応の口のきき方をすること。
 もう、そういうことも分かる年齢だと思うし、わたしら一族と今後もつき合うのなら、そういう所、ちゃんとしておかないと、場合によっては命取りになるよ……」
 どうやら……それが、テンをいきなり殴った理由らしい。




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「髪長姫は最後に笑う。」 第六章(168)

第六章 「血と技」(168)

 荒野は手早く服を身につけて玄関に向かい、靴を取って再びベランダに向かう。茅も、脱ぎ捨てたバスローブを羽織って、物置代わりにしている部屋に駆け込んだ。
「荒野、これ!」
 荒野がベランダにでるのと同時に、双眼鏡とヘッドセットを手にした茅も追いすがってくる。
「携帯に、つけて!」
 荒野は双眼鏡を手にした茅をみて、その意図を即座に察知し、手渡されたヘッドセットを自分の携帯に取り付けた。
「……ははぁ、姫様は管制の方で……。
 確かに、あんだけ高速で移動していると、少し離れた所からのが状況を見渡せるか……ま、見切りさえ、確実ならってのが、前提ですが……」
 東雲目白、と名乗った男が、感心した声を上げる。
「茅の走査能力は……一言でいって、凄いぞ」
 説明するの面倒だった荒野は、茅に関しては簡単にそう告げただけで、逆に、東雲に聞き返す。
「状況は?」
「うちのお嬢は、新種の二人組についたようです」
 荒野に問われ、東雲が表情を引き締めた。
「お嬢……やたら、強い人とやり合いたがるから……」
 そう答えながらも、東雲は、遠くで展開されている四人の軌跡を、眼で追っている。
「……二宮か?」
 荒野は、短く尋ねる。
 新種二人、つまり、テンとガクに与するしたらしい……東雲が、「お嬢」と呼ぶ者のことだ。
「そうっす。
 今は、小埜澪と名乗っていますが……頭に血が昇ると手に負えない。冷静な時も、さらに手に負えない……」
 軽薄な口調でそういって、東雲は軽く肩を竦めた。よりによって、バーサクタイプか……と、荒野は思った。
 スーツ姿でも気質のサラリーマンには見えない。かといって、本格的にやばい職種の人間にもみえない。外見から東雲の職業を当てようとしたら、大半の人間が「ホスト?」といい、その後、「それも、二流か三流どころの……」と付け加えたくなるような風貌の、若い男だった。さもなくば、「ヒモ」、と推定しそうな軽薄さを、体全体から漂わせている。
「気まぐれで、酔狂で……自分の欲望に、忠実……その癖、強大な能力を持つ……」
 荒野も、自分がよーく知っている「二宮」のことを思い出しながら、軽く首を振る。
「……それは……生粋の、二宮だな……」
「ええ、そりゃあ、もう……。
 先代からの付き合いですが、扱いにくいのなんのって……」
 そういう荒野の様子を横目で見て、東雲も、にやにや笑っている。
 荒野と同じく、「二宮の悪口ならいくらでも語れる」ということは、東雲自身は二宮系ではないのだろう。
「……その辺の話しは、後回しだ。おれは、やつらを見張りに行くけど……」
「茅は、ここでみんなを見張っているの……」
 荒野と双眼鏡を覗いた茅が、遠くで「三対一、変則雪合戦」をはじめた四人の動きを眼で追いながら、そんなことをいう。一面の銀世界、という細部を視認しにくい環境の中で、目まぐるしく動き回る四人の追尾するのには、かなりの集中力が必要となる。
「……わたしも、若の方にお付き合いさせていただきます……」
 東雲が、うやうやしく頭を下げる。
「お嬢の気性はよく分かっていますし……それに、向こうも四人だ。
 こっちの人数も多いに越したことは、ないでしょう……」
「ま……このまま、雪合戦だけで終わってくれれば、なんということもないんだけどな……」
 荒野は肩を竦めて、無造作にベランダの手すりを乗り越える。
「……おっ!」
 東雲が慌てて手摺りに身を乗り出し、落下したかに見える荒野の姿を追う。
「っと……はは。
 そりゃ、そうか……」
 荒野は、すぐ下のフロアのベランダに手をかけ、そこの壁面を蹴って、数メートル先にある非常階段に飛び移り、あっという間にそこを駆け下りて姿を消した。
「って、わたしも……後を追わなけりゃ……」
 荒野の無事を確認した東雲は、ベランダの手摺りの上に立ち上がり、そこから直接、非常階段に飛び移る。

『……荒野。
 楓は、三人の分断を図りながら、河原の方に向かっているの……』
 イヤホンから茅の声が聞こえる。
「楓なりに、目撃者が出にくくて、見通しのいい場所に誘導しているんだろう……」
 人目を避けるように、物陰から物陰へと伝い走りながら、荒野はマイクに向かって答えた。
 それからふと疑問に思って、尋ねてみる
「茅。
 楓は……優勢なのか?」
 テンとガクの二人だけならともかく……もう一人、東雲が「お嬢」と呼んだ人物に関しては、荒野は何の情報も持っていない。
「……や。
 その、最強のお弟子さんが噂通りの人物なら……しばらくは、大丈夫かと……」
 荒野に追いすがてっきた東雲が、荒野の言葉を聞きつけて、間に入る。
「お嬢の性格だと……まず、新種のお二人をけしかけて、効果的な戦い方をアドバイスします。
 そうやって、最強のお弟子さんの力量を、直に自分の目で見極めた後に……」
 ……サシで、勝負を挑むでしょう……と、東雲はいった。
「お嬢……とにかく、強い方とやり合うのが、好きなご気性ですから……」
「その……オノ・ミオって人の、実力は?」
 その東雲の口調を聞いて、荒野ははじめて表情を引き締めた。
 長く海外にいた荒野は、国内の術者の消息について、無頓着な部分がある。
「そうか……若はお強いから……考えてみりゃ、わたしら下のもんの情報を、わざわざ収集する必要もありませやね……」
 そういう東雲の口調は、苦笑いの含んでいるようにも、聞こえた。
「お嬢は……現在、二宮の第三位と目されております。
 若や最強のお弟子さんが現れるまでは……若手では、最強といわれてました……」





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彼女はくノ一! 第五話(251)

第五話 混戦! 乱戦! バレンタイン!!(251)

「……わ。
 たっ、たっ……」
 ガクは、いきなり背後から冷たい雪の塊をぶつけられ、悲鳴をあげた。
 慌てて背後を振り返ると、ついさっきまでガクが狙撃していた楓が、これ見よがしにひらひらと手を振って、地上に飛び降りる所だった。
 これで何度目になるのか、ぶつけられた雪玉の冷たさにしびれながらも、ガクは、
『……ついさっきまで、あんな遠くにいたのに……』
 と、楓の「気配絶ち」の見事さに、慄然とする。
 ガクとテンは、この日、生涯はじめて「本物の雪」に接したわけだが、二人してもっぱら、楓一人にぶつけられる一方だった。二人が楓に雪を浴びせることに成功したのは、一番最初に、玄関から出てきた楓を不意打ちした時、一回きりだった。テンとガクにとっては不本意なことに、後はひたすら、やられ役に徹している。
 何しろ、ガク自身が何百メートルも先にいる筈の楓を、遠距離から狙い撃ちにするため、ベルトを引きついて即席のスリングを構えた所、だったのだ。雪玉をいくつか用意し、狙撃に適した高所であるこの電柱の上まで昇り、ベルトを引き抜いて構えるまでの僅かな時間で……楓は、楓を見張っていた筈のテンと、人並み外れた嗅覚を持つガクの二人が気づかないうちに、こっそりとここまで近づいた……ということになる……。
『……凄すぎるよ、楓おねーちゃん……』
 こんな時、ガクは自分の無力さを思い知らされる。
 いくら身体能力が発達していても……それを発揮する機会を与えられなければ、意味がない。
 以前、「じゃれあった」仁木田は、ガクの動きを読んで、攻撃に移る寸前にそのモーションを潰す、という、ごく単純な手段で、ガクの攻撃を潰し続けた。今、楓は、「徹底的に姿をくらまして、攻撃される隙を作らない」という、これまた単純な方法で、テンとガクの二人を、いいようにあしらっている。
 もっとも、この「単純な方法」は、原理的にはシンプルだが、実際に実行するとなると、難易度的には篦棒に難しい。理屈を理解したから、といって、おいそれと真似できることでもないのだが……。
『……それでも……』
 こうして実際に圧倒されると、筋力や反射神経など、数値として計量できる直線的なパラメータなど、実戦の場ではさほど意味をなさないのだ……と、叱られているような気分になる。
 ガクが見ている前で、楓はあっけなく姿を消した。足跡も残していないところを見ると、ひとっ飛びに近くの路地裏にでも隠れららしい。楓が着地した地点は、ちょうど十字路になっていたから、左右のどちらかに移動すれば、ガクの視界からは、逃れられる。
 ガクは、ジャケットの内ポケットから携帯を取り出し、不機嫌な声をだした。
「楓おねーちゃん、ロスト。雪、浴びせるだけ浴びせて、また逃げられた。
 テン、何やっているの?」
『……ごめん、ごめん……』
 携帯と接続しているイヤホンから、テンの声が聞こえる。
 テンが斥候役になって、楓の位置情報をガクに伝え、ガクが、楓の射程外から楓を攻撃する……という作戦は、そもそもテンの発案だった。
 それが……発案者であるテンからして、こうも頻繁に楓をロストしたのでは……そもそも、分業する意味がない。
『やっぱり、凄いよ、楓おねーちゃん……。
 なんか、自由自在に消えたり現れたりする……。
 こと、技のレベルでは、ボクたちとは段違いだよ……』
 ガクも、今、テンがいっているのとまったく同じことを、ついさっき感じたのだが……のほほんとした口調で同じ意見をテンから聞くと、ガクはますます不機嫌になった。
「じゃあ……ボクたち、このまま、やられっぱなしで終わるわけ?」
 むす、っとした顔をして、ガクは携帯に話しかける。
「……やっほぉー……」
 イヤホンからテンの返事が聞こえる前に、間近に人の声が聞こえたので、ガクは愕然とした。
「へぇい! そこの、かぁのじょぉー。
 なんなら、おねーさんが助太刀してあげよっかぁ?
 多少は、いい勝負になるかも知れない。ならないかも知れない……」
 ガクは、声の主を捜して、足下を見る。
 白いダウンジャケットを着た、色黒の女性が、電線の上に胡座をかいていた。

『……ちょっと、やり過ぎちゃったかなぁ……』
 そう思いながら、物陰に隠れつつ、楓は素早く移動する。もちろん、五感を可能な限り研ぎ澄まして、気配は絶っている。この日は、「雪が積もっている」という悪条件があったので、出来る限り足跡を残さないように留意した。積もったばかりでいくらも日の光を浴びていない雪はさらさらで、完全に足跡を残さないで移動することは、不可能。いくら優れた術者でも、重力を打ち消せるわけではない。しかし、足裏にかかる体重を均質化して、体の沈み方を最小限にすることはできた。あとは、出来るだけ目立たないところを伝わって走るしかない。
 それだけ難易度の高い行為を、楓は、難なく実行してしまっている。日常生活の場ならともかく、戦闘時の楓にとって、この程度のことは「出来て当たり前」なのであった。
『……でも……』
 楓が手加減しなかったのは、荒野に二人の指導を頼まれていたから、だ。そのほかに、しょっぱなに不意打ちを食らってしまったから、というごく個人的な理由もあるのだが、もちろん楓も、そんな私的な事情はあまり重視していない。
『この程度の攻撃は、軽くかわせるようになって貰わないと……』
 荒野のいう「悪餓鬼」とかいう人たちは……どうも、一筋縄ではいかないような気がする……。
 全てが終わった時に、全員が無事でいられるためには……全員を、とことん鍛えなければならない……と、楓は思っている。楓は、自分の身の回りの人たちが傷つくことを恐れている。それを避けるためなら、多少の無理はするつもりだった。
 出鱈目に動いているようで、楓は、自然に想定されるテンの移動経路を脳裏に描き、それを順番に潰している。
 こちらに住むようになって、楓が一番最初に心がけたのは、近所の地形を、細い路地に至るまで、頭にたたき込むこと、だった。住みはじめた当初はまだ学校に通っていなかったので、比較的時間がとれたし、ただでさえ眠りの浅い楓は、眼が冴えて眠れない晩など、普段から気ままに、巡回がてらの散歩にでている。おかげで、今ではかなり広い範囲にわたっての詳細な地図が、楓の頭の中に存在していた。
『……いた!』
 やがて楓は、とぼとぼと道を歩いているテンの姿を認めた。素早くかがみ込んで、地面に積もった雪をひと掴みにし、投げやすい大きさと形にまとめ、素早く周囲を見渡し、逃走経路を確認してから、テンに雪を投げつけるべく、振りかぶる。
 と……。
 次の瞬間、楓は、背後に大きく飛び退いていた。
 さっきまで楓がいた場所に、どさどさと雪玉が降ってくる。その、雪玉が地面に落ちる音で、テンもこちらに気づき、楓のいる方に駆け寄って来た。
「……ごめんねー。
 噂の雑種ちゃーん……」
 見上げると、電線の上に雪玉を構えたガクと、それにもう一人、見覚えのない白いダウンジャケットの女性が、立っている。
「……あまりにも、この二人が不利なんでさ。
 おねーさん、こっちの味方をすることにしたわ……」




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「髪長姫は最後に笑う。」 第六章(167)

第六章 「血と技」(167)

 その晩、休憩を挟んで、今度は避妊具を用意し、荒野は茅に挑みかかる。もとから過剰な反応を示していた茅は、数え切れないくらいに達しながらも体力が続く限り、荒野にせがんだ。
「……別に、これが今生の別れというわけでもあるまいし……」
 と苦笑いをしながらも、荒野は、茅の体調を考慮しながら、その上で、できるだけ茅の要請に応え続ける。
 なにより、荒野自身が、茅を抱く口実を切望していた。
『……やばいな……』
 際限のない茅との行為の溺れていく荒野がいる。同時に、その最中でも、頭のどこか醒めた部分で、冷静にそう思考する荒野もいる。
 相反する要求に引き裂かれながらも、荒野は、茅の肉に、声に、体臭に、体温に、声に、反応に、没入していく。荒野にとっては、茅の全てが、甘美であり、自制心を総動員しても、なかなか行為を中断することができなかった。
 ようやく荒野が達し、避妊具越しに茅の中に射精すると、茅は背を仰け反らせて全身を硬直し、小刻み震えた後、がっくりと全身の力を抜く。しかし、しばらくするともぞもぞと起き上がり、緩慢な動作で荒野に覆い被さってきて、体をすりあわせてきたり、耳や首に唇づけをしたりして、荒野を誘うのだった。
 そうした茅の媚態を見て、荒野は、欲望を刺激されるよりは、むしろ、痛々しさを感じる割合の方が多かった。茅の様子から「必死」という単語を連想し、そこからさらに「至死」という単語を連想し、荒野は慌ててそれを打ち消す。
 茅との性交は……荒野に、例えようもないほどの快楽をもたらすのだが、同時に、茅と荒野、二人の生命をすり減らしながら……という錯覚を憶えるほどに、ひりひりとした真剣味を、皮膚で感じてしまう。
 茅が、荒野との交合を求める必死さは、性行為が、本来、生殖のための行為である、ということを思い出させる。
 生殖……という行為は、多くの生物にとって、次世代の子孫を残す代わりに、親の世代の死を伴う。
 茅との行為は、背景にそうした「死」がべっとりと張り付いているような気がした。昨夜、シルヴィを抱いた時に感じた安心感は、望めるものではない。代わりに、肌に差し込んでくるような緊迫感を伴う。
 ……懐かしい、感触だ……。
 荒野は、せがまれるままに茅を抱きながら、何度かそう思った。
 茅を抱いていると……つい数ヶ月前まで荒野が馴染んでいた場所の「空気」を、思い出してしまう。この国に来てから、すっかり縁遠くなっていた、あの「空気」を……「死」の匂いを、性交時の茅は背負っている。
 それゆえ……なおさら、荒野は、茅の体に没入した。

 翌朝、荒野は、喉がからからに渇いていて、眼を醒ました。昨夜、一度シーツを代えたのだが、ベッドの中は、汗ですっかり湿っている。
 茅の姿は、ベッドの中にはなかった。掛け布団が、不自然な形に盛り上がって、隙間を作っている。茅がいたあたりの布団に、かすかに温もりが残っていた。茅がベッドを離れて、さほど時間は経っていないらしい……などと、寝起きの頭で考えながら寝返りを打つと、全裸のまま、窓際に立ち、外の風景を眺めている茅の背中をみつけた。
「……何をみているんだ、茅……」
 荒野が、生あくびを噛み殺しながら茅の隣に立つ。その際、ちらりと目覚まし時計に眼をやると、いつも起きる時間を一時間近く過ぎていた。
 何となく、違和感を感じ……あっ、ランニング! と、荒野が声をあげかけた時、
「……雪……」
 と、茅が小声で呟いて、窓の外を指さす。
「……おっ。本当だ」
 茅の動作につられて外を見た荒野は、やはり小声で答えた。外は、一面の雪景色になっている。
「意外と……積もったな……」
 荒野は、そんな凡庸な感想しか、漏らせなかった。
「これだから、起こさなかったのか……」
 いつもは、先に眼を醒ました方が、まだ寝ている方を起こす習慣になっている。もっとも、たいていの時は、二人とも決まった時間に眼を醒ますので、その必要もほとんどなかったが……。
「みんなに、中止の連絡は……」
 こんなに雪が積もっている日まで、馬鹿正直に外で走る者もいないとは思うが、念を入れておきたかった。
「もう、メールで」
 茅は、短く答える。
「だけど……楓と、テンと、ガクは……自主トレ、しているようなの……」
 茅は、再び窓の外を指さす。
「……あっ……」
 荒野は、茅の指先をたどって視線を移動させ……そこで、固まった。
「……茅……。
 あれは、自主トレではない……。
 雪合戦、というんだ……」
 三人の移動速度と、雪玉の射程距離と、複雑な戦術を考慮すると……いわゆる「雪合戦」という語感から連想される遊びとはかなり隔たりがあるような気もするが……。
 それら、桁外れの要素は、三人の基本スペックに由来する。逆にいうと、そうした「大げさな要素」を度外視すれば、三人が今、町中を縦横に駆けめぐって行っている遊びは、「相手の投げる雪玉を避け、自分の雪玉を相手にぶつける」という「雪合戦の基本ルール」から、決して大きく隔たってはいない……。
『……まあ、この時間だし、日曜の朝でもあるから……まず、大丈夫だとは思うけど……』
 荒野は、少し考え込む。
 気配は消しているだろうから、目撃者の心配はないだろうけど……雪が積もっている、ということは、足跡を残していることになる。
 どうやっても一般人が立ち入ることば出来ない高所などに、不審な足跡がベタベタついていたら……変な噂とか、流れやしないだろうか?
 あいつらのことだから、そこまで考えていない可能性が、高いか……。
「……ちょっと、様子を見てこよう……」
 そういって、荒野は、着替えを取りに行くため、窓側に背を向ける。
「……雪合戦に、乱入者出現……」
 茅が、淡々とした口調で報告する。
 とっさに振り向いた荒野は、窓の外を落下していく人影を、ちらりと認めた。
 慌てて振り返り、窓に寄る。窓を開け、ベランダに出ようとすると……。
「よっ! ……っと……」
 そのベランダに、スーツにコート姿の若い男が、出現した。
「ども。お初にお目にかかります、加納の若様。
 わたしゃあ、東雲目白ってケチな野郎でして。もう少しお天道様が高くなってからご挨拶を、と思いやしたが、どうもうちのが、あのお嬢さん方を見たら居ても立っても居られなくなったようで、ご覧の通り、飛び出していった次第で……。
 ……っと。
 その……わたしにゃあ、眼の保養ってやつですが、お二人とも、何かお召しにならないと、風邪引きますぜ……」
 荒野は反射的に、カーテンを引く。
「服を着る。
 そこで少し待て……」
 と、ベランダの乱入者に声をかけた。




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彼女はくノ一! 第五話(250)

第五話 混戦! 乱戦! バレンタイン!!(250)

「……香也様……」
 孫子が香也を抱きよせると、香也は体を硬くした。
「そんなに……悩まないで下さい。
 誘ったわたくしが、惨めになります……」
 香也に孫子を拒否したり傷つけたりするつもりがない、ということは、孫子も理解している。香也は、ただ……これまで、他人と触れあう機会をあまり作ってこなかったため、目の前の人とどう接していいのか分からなくなるだけだ。
 仮に、香也が、自分の欲望を無条件に肯定し、何の疑問も抱かずに複数の女性と関係を持つような男だったら、孫子も、ここまで惹かれてはいないだろう。香也の中には……今まで「他人」が、いなかった。ごく最近になって、ようやく、不特定多数の人間と、本格的に関わりを持ちはじめた。
『未熟で……面倒な、人だな……』
 と、孫子は、自分の腕の中で細かく震える香也のことを、そう思う。同時に、自分や楓は、香也に対する時、性急にすぎるのだ……とも、思うのだが……孫子にしてみれば、だからといって、これだけ競争相手がいる現状の中で、香也が成熟するのをじっくりと待つだけ、という選択しも、ありえないのだった。
 何故なら……香也との距離、ということでいえば、すでに楓が、一歩リードしている。
 かといって、急ぎすぎて、香也を壊してしまっては、元も子もない……ということは、孫子も理解している。
 だから……。
「わたくし…香也様の、背中が好きです。絵を描いている時の、背中が……」
 香也の体を抱きしめながら、孫子が囁く。
「……こうしたのは、わたくしの意志です。仮に一時の衝動だとしても……香也様に抱いてもらって、わたくしは嬉しいです。
 それに……わたくしは、香也様に、自分自身を嫌ってほしくありません……」
 それは、大部分、孫子の本音でもあったが……多少は、香也を慰撫すための方便も混ざっている。
 孫子が、香也をむやみに傷つけたいと思っていないのは本当だが、こうして少しずつ、香也との心理的な距離を詰めていこう、という計算も、多少はある。
 香也の震えが収まったのをみて、孫子は、つけくわえた。
「今回のは……その……わたくしが、無理に誘ったようなものですから……あまり、ご自分を責めないで下さい。
 それとも、その……わたくしの体、あまり気持ちよくありませんしてたか?
 若い男性なら、時に女性が欲しくなるのは当然ですし……わたくしは、そんなことでも、香也様のお役に立ちたいのです。今のわたくしには、こんなことくらいしか、香也様のお役に立てませんが……」
 今回は、孫子が色仕掛けで香也をその気にさせた……
ということを強調して香也の罪悪感を軽減し、最後に、「今後も、香也さえ希望すれば、いつでも関係を持つ意志がある」ということを匂わせる。
 もちろん、孫子とて、本当の意味で相思相愛になることを一番望んでいる。今の香也をみていると、一気にそこまでいくのは無理だろう……とも思うで、孫子は、そうして段階を踏んで、徐々に香也との絆を深めていくつもりだった。
 孫子は、両手で、香也の顔をはさみ、まともに目を合わせる。
「……それとも……わたくしが、香也様を想うことは……ご迷惑でしょうか?
 わたくし……そんなに、女性としての魅力がありませんか?」
 まともにそう問われ、香也は、
「……んー……」
 と、唸る。
 ようやく、少しはいつもの調子が戻ってきたようだった。
「……そんなこと、ない。
 その……魅力がるから、かえって問題なわけで……」
 孫子に顔をがっしりと固定され、目を逸らすこともできないまま、香也は、しどろもどろに答えた。
「……あ、あの……。
 できれば……その、もう少し……ゆっくり、待って欲しい……」
 孫子は、その香也の表情をみて……脈は、ある……と、判断する。
 つきあいが長い楓の方がリードしているのは確かだが、二人の関係は、思った通り、まだ盤石のものではない。
 孫子は、再び香也の体を抱きしめた。
「わたくし……本当に、香也様のことが……好きなんですのよ……」
 いいながら、孫子は、自分の頬がかっと熱くなるのを感じる。
 こんなこと……まともに香也の目を見ながら……なんて、いえるわけがない。
「だから……その、こ、これのお世話だけでも……香也様の為なら、わたくしは、喜んでやります……」
 そういって、孫子は、手を下に延ばして再び硬さをとりもどしはじめた、香也自身を握る。
「それが香也様のお望みなら……それだけの関係でも我慢しますが……わたくしの希望としては、いつの日か、香也様と、身も心も結ばれたいと思っています……」
 孫子ははっきりとそういうと、「他の方に見つかる前に……」といいながら、脱ぎ捨てたパジャマを素早く身につけ、廊下にでていった。
 取り残された香也は、ぶるっと身震いした後、全裸のまま布団をひっかぶって目を閉じた。
 今は、いろいろな想念が頭の中をめぐるましくかけめっぐり混乱しきっていて、実質的には、何も考えられないような状態だ。
 一眠りしてから、またゆっくりと考えよう……と、香也は思った。

 同時刻。
「……はぁ……この寒いのに……。
 お子様たちは、元気だわ……」
 荒野たちが住んでいるマンションの屋上にいる人影が、町中を転々と移動して「拡大版」雪合戦に勤しんでいる楓たちの姿を見下ろして、感心したような呆れたような声をあげる。
「……二人組の方が……片方が斥候役、もう片方が砲台役に分かれて、遠距離射撃戦をはじめたな。
 携帯かなんかで連絡とりあっているらしい……。
 うわぁっ。
 あの子、五百メートル以上、狙えるんじゃないか……。
 肩がいい、っていうより、力だけはなく、筋肉もしなやかなんだぁ……あれは……。
 あ。でも、新種二人より、あの雑種の方が上手だわ……。
 斥候役放置して、砲台役の背後にまわった。
 砲台役、接近に気づかずモロ被弾……。
 あー。あー。真っ白になっちゃって……って、あの雑種ちゃんも……瞬発力だけではないな……体力と臨機応変な判断力、それにあれだけの距離、気配を隠したまま完走する用心深さ……。
 やっぱ、荒神さん、見る目があるわぁ……」
 もう人影の片割れが、眼下の光景を、実況中継風に語る。
 荒野たちが住んでいるマンションは、防犯上の理由で屋上を締め切っている。つまり、早朝のこの時間、こんな場所で立ち話をしている二人は、不法侵入者、ということになる。
「……やっぱ、一見の価値、あったわ……あの雑種ちゃんだけでも……って、おい!
 どこに行くっ!」
「……あの子たちと、ちょっと遊んでくるぅー!」
「……って……本当に、行っちまいやがんの……。
 まずは加納の若に挨拶してからって……っていってたのに……あいつも、しかたねーなぁー……」
 一人取り残された男は、そうぼやいて顎を撫でた。





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「髪長姫は最後に笑う。」 第六章(166)

第六章 「血と技」(166)

 茅の返事を待たず、荒野は茅の背中から、一気に侵入した。根本まで一気に突き入れた後、亀頭で円を描くように、茅の内部で分身を揺さぶり、それから、一気に引き抜く。
 茅は、荒野の動きにいちいち反応し、「……かぁはぁっ!」とか、「ひゃっ!」とかいう声をあげて、両手でベッドのシーツを掴む。特に、最後に素早く引き抜いた時の声が、大きかった。
 ……挿れる時よりも、引き抜く時の方が、感じるのかな……と、荒野は思い、再び茅の中にすっかり分身を沈めて、耳元で囁いて確認をする。
「……茅。
 引く時の方が、いいの?」
 当然のことながら、経験豊富とはいいがたい荒野は、女性の性感についての知識など、もっているわけでもない。
 だから、素直に尋ねたわけだが……茅は、ベッドのシーツを握りしめて、いやいやをするように黙って首を振るだけで、明瞭な返答はしなかった。
 そこで、試しにもう一度、そのままの体制で腰だけを一気に引き抜いてみると、茅は「……ぁうぁあぁぁ……」と小さく叫んで、背中を硬直させ、小刻みに震えだした。
「……そうか。
 茅は、挿れる時よりも抜く時の方が、感じるのか……」
 荒野は冷静な口調でそういい、ゆっくり根本まで挿入してからいきなり引き抜く、という動作を、淡々と繰り返した。一度射精した後、ということもあって、荒野自身は比較的冷静でいられたが、茅の方はそういうわけにも行かないようで、荒野が中を往復するたびに声を上げ、激しく身悶えをする。茅があまり激しく動くものだから、荒野は途中から茅の両手を背中に回して、手首をしっかりと押さえつけたまま、行為を続行しなければならなかった。
 荒野は、何の工夫もなく茅の中を行き来しているだけなのだが、茅の感じ方は異常にも思えるほど激しかった。
 以前より、茅が敏感になっている……というのは、先ほどだけの一時的な現象ではなく、明確に恒常的な変化のようだ……と、荒野は、そう思う。
 両手を背中で押さえつけられた後も、茅は、荒野が腰を動かす動くたびに、あーあーと締まりのない声をあげ、開きっぱなしにしている口から涎を垂らし、体を跳ね上げようとする。
 しかし、背後から荒野がしっかりと押さえつけているので、他に体の動かしようがなく、茅は、お尻を左右に振りながら、徐々に高く持ち上げていった。荒野もそれに合わせて膝をたて、高い位置で茅の性器をぱんぱんと音を立てて突きまくる。最初のうち、冷静だった荒野も、茅の狂態に引きずられるようにして、静かな熱狂に巻き込まれていった。
 茅の中の貫く荒野の分身は、かつて経験したことがないほどに硬くなっている。茅の中を犯すたびに内壁と擦れる部分が、荒野に甘美な感触をもたらす。茅の荒野を包んでいる部分は、しっとりと濡れて出入りする荒野に絡みついてくる。きつい、とか、締まる、というわけではなく……隙間なく、絶え間なく動き続ける荒野にぴったりと隙間なく張りついて離れず、時折、適度な収縮をしたり、抜き時に絡みついてくるような感触をもたらし、ヒクヒクと蠢いて複雑な顫動を行っていた。
 茅の体全体が、荒野に奉仕するために、改良され続けている……というさっきの話しが、そのまま信じられるような気持ちよさ、だった。
 二人は、そのまま、お互いの体を夢中で貪りあった。二人とも無言で、せわしない二人分の呼吸音と茅の愉悦に満ちた鳴き声が、室内に響く。荒野が挿出入をしやすいよう、高々と臀部を掲げる、という屈辱的な格好で固まった茅は、本来なら白い肌を、全身、朱に染めて、断続的に喜びの声を上げ続けた。そうしている時、明らかに茅は眼の焦点があっておらず、快楽に浸りきって一時的に理性を失っていることが見て取れたが、荒野は頬どころか顔全体を真っ赤にしてそうした痴呆めいた表情を浮かべる茅も、とても愛しく感じた。
 そうこうするうちに、荒野の射精感も、再度、高まってくる。
 その頃には、荒野も茅も、全身、汗だくになっていた。
 荒野は、そのまま茅の中にぶちまけたい衝動に駆られながらも、結局は、ギリギリ残っていた理性で射精寸前に茅の中から抜き放ち、熱い体液を茅の背中に放つ。
 真っ赤に染まった茅の背中に荒野の精液が飛び散ると、むっとする異臭がして、茅が、がっくりと全身の力を抜いて、ベッドの上に倒れ込む。
 そのすぐ後に、荒野も、茅の横に倒れ込んだ。
 しばらく、二人は何もいう気もする気も起きず、そのままぐったりとして喘いでいるばかりだったが、やがて茅が腕の力だけでずりずりと荒野の方に這っていき、荒野の口唇を奪った。
 長々と口をつけて、舌を絡ませて、唾液を交換する。
 そうしながら、息を整えた後、茅は、少し微笑んでこういった。
「……荒野の匂い、いっぱい……」
 確かに……荒野が射精した匂いが、その部屋に充満している。
「……ああ……」
 荒野も、ベッドの上に横になりながら、ゆっくりと頷いた。
「……シーツも……交換しなくちゃな……」
 物憂げに、そんな所帯じみた発想をする。
「……その前に……」
 茅は、半身を起こして、寝そべっている荒野の下半身にとりついた。
「荒野を、きれいにするの……」
 茅が仰向けに寝そべっている荒野の股間に顔を近づけるのをみて、茅の意図を察知した荒野は、
「そこ……まだ、拭いてない……汚いよ、茅……」
 と、声をかける。
「荒野のなら、汚くないの……」
 茅はそう答え、半ば力を失った荒野の分身をつまみ上げる。
「荒野のこれ……まだ、硬い……」
 そういうと、力を失い、だらんとはしているものの、まだ硬さを残している荒野の分身を咥え、ぴちゃぴちゃと音を立てて舐めはじめる。
 茅は、竿の部分をきれいに舐めとると、陰毛や周囲に飛び散った精液を見つけては、丁寧に舐め取っていく。
 一通り、茅が舌で荒野の体を清め終わると、荒野自身は、再び力を取り戻していた。
「……んふっ……」
 再び起立した荒野のそれを軽く手で弄びながら、茅が、淫蕩な笑みを浮かべる。
「荒野の……また、元気になってきた……」
 その時の茅の表情には、明らかに期待が籠もっていた。
「また、続けてやるのなら……」
 少し休んで体力が回復してきた荒野も、上体を起こす。
「……何か飲み食いして、一休みしてからの方がいいな……。
 それと、もう勢いで、というのはなし。次からは、ゴムをつける……」
 もともと今夜は、茅にお預けを押しつけたのと、シルヴィと関係をもったこととで、回数をこなす予定だった。荒野としても、茅との行為から、今までにない快楽を引き出しているから、茅は大丈夫というのなら、体力が続く限り交わるの悪くはない……と、思っている。
 ただし、こんなことで無理をして、体に負担をかけるつもりはないし……それに、他のことを顧みられなくなるほど、完全に、茅の体にのめり込むつもりもなかった。
 要は……メリハリ、というか……やってもいい時と、やらない時……その区別を、きっちりと計画し、できるだけその計画に沿って関係を持てば……そうそう、無分別に溺れることはないだろう……と、荒野は思う。




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彼女はくノ一! 第五話 (249)

第五話 混戦! 乱戦! バレンタイン!!(249)

 香也の部屋で、香也と孫子が睦みあっていたその時、家の外では、楓とテン、ガクの三人がはじめた雪合戦は、順調にエスカレートしていって、雪合戦以上のものになっていった。
 民家の屋根や電柱、電線の上を伝い、高速で移動しつつ、雪玉をぶつけ合う……という行為の中で、通常の「雪合戦」という概念に収まるのは、最後の「雪玉をぶつけ合う」程度である。それ以外の前半部の要素は、すでに常人にはなしえない域に達している。早朝の冷たい空気を切って、三人はびゅんびゅんと目まぐるしく飛び回り、素早く雪玉を投げ合う。三人とも今では「かなり、本気」になっているので、命中することは、ほとんどない。もちろん、念を入れて、三人とも気配を絶っている。そして、一人が他の二人を敵にする、という「三つ巴戦」ルールに、自然に収束していた。二人一組になると、パワーバランスに明確な偏りが発生し、容易に勝敗がつきやすくなるからだ。
『……二人とも……』
 勘がいい……と、楓は思う。
 本格的に投擲武器を扱いだしたのが、ほんの数日前……とは、思えないほど、キレのいい動きをみせていた。
 コントロールが良いのはテンの方で、それに加え、狙いが正確である、弾道を読むのに長けている、という特性を持っているように見えた。投げつけられた雪玉の軌道を冷静に読みとって、避けたり、逆に、投げつけた人間の方に向かってきて、間合いを詰めたりする。
 ガクの方は、若干、力任せの傾向が強かったが、その分、射程距離が長い。ロングレンジである分、「相手の攻撃範囲外から攻撃する」という安全な戦い方を、選択できた。
 テンとガクの両者に共通しているのは、自分の特性を熟知し、それを最大限に生かす方法を採用している、ということで……。
『……二人に基礎を叩き込んだ人は、かなり、できる……』
 楓は、二人の行動に、二人を仕込んだという「じっちゃん」の影をみた。あれほどの特性があれば、その長所に頼りきった戦い方を仕込んでみたくなりそうなものだが……それは、していない。
 二人には、初めて取得した「投擲武器を多用する戦い方」という技術を、短時間で自分に適した方法にカスタマイズする、「応用力」があった。こうした柔軟さは、特に二人のように若いうちは、なかなか身に付かないものだ……。
 
 楓と対峙するテンやガクの方も、楓の戦い方に、舌を巻いている。
 狙いの正確さではテン、飛距離ではガクに、それぞれ、アドバンテージが存在する。しかし、楓は、そんなことにはあまり関係なく、軽々と二人の投じる雪玉を、軽々と避けてみせる。
 雪玉そのものの軌道を読む、ということもあるが、どうも、その前のモーションで、狙いを付けただいたいの方角を察知し、雪玉の当たらない場所へ、それが無理なら、避けやすい場所へと移動する。
 逆に、少しでも隙をみせると、いつの間にか近づいていて、テンやガクが雪玉を投げる体制に入った、隙の多いタイミングで、雪玉を投げつけては即座に逃走する。
 いわゆる、「ヒット・アンド・アウェイ」という基本に拘った形で、テンとガクを翻弄した。
 これまでの戦績を確認すれば、テンとガクは楓に一つも雪玉をあてることに成功していないが、楓の方は、何発に一発か、着実に、命中させている。
 結果として、身体能力的には、楓よりも遙かに優れている筈のテンとガクは、常に後手に回っていた。
 楓の強さは、筋力や反応速度、といった直線的なパラメータに頼らない所にある……と、テンとガクは改めて実感する。
 一言でいえば、「技」ということになるのだが……テンやガクそう違わない年齢の楓が、ここまで「使える」ようになるまでに、どれだけ経験と修練を重ねたのかと想像すると……二人は、慄然としてしまう。
 楓は、テンやガクほど、先天的な資質に恵まれていた訳ではない。ほんの少し、生まれ落ちた境遇が違っていれば、今頃、ごく普通の一般人の少女として生活していてもちっともおかしくない人間だった。
 それが、ここまでの存在になるまで、楓は……それほどの努力を積み上げて、自分の体に染みつけてきたというのか……。
 なのに、楓自身は、そのような過去を苦にしている風でも、今まで積み上げてきた努力を誇るでもなく、むしろ、控えめな態度で日々の生活を楽しみ、何気なく過ごしている。
 そんな楓のことを、テンとガクは、「……大きいな……」と、まぶしく思った。
 単純に、現時点での能力のみを比べれば、荒野は楓より何歩か先に行っているだろう。装備込みの戦闘能力、という伝でいけば、孫子だって、楓に引けを取らないかも、知れない。
 しかし、荒野や孫子は、その出自により、生まれた時から有形無形のバックアップを受け、本人たちもそれを当然と思うほど、自然にあまたの恩恵を受けてきたのに比べ……楓には、そうしたアドバンテージが、まるで存在しないのだ。
 いや。なにかと血縁を重視する一族にあっては、そうしたコネクションをまるで持たない楓は、マイナスの地点から出発している……といっても、過言ではない。
 楓は……ゼロから、自分の体一つで、ここまで到達した……ということを考えると……。
「やはり……大きいな……」
 と、テンとガクの二人は、そう思ってしまう。
 楓からは……まだまだ学ぶべきものが、沢山ある、と。

 再び、香也の部屋に視線を転じる。
 香也が、裸の背中に汗を浮かべて、孫子の中を往還している。
 挿入前の前戯が長引いたこともあって、孫子の中に入った香也は、さほど長持ちせず、何度か孫子の中を往復しただけで、すぐに昇りつめる感触を得た。
 辛うじて残っていた香也の理性が、孫子の中にそのまま欲望をぶちまけるのことを躊躇わせる。
 射精感を寸前まで高まるのを感じると、香也は、すぐに腰を引いて孫子の中から分身を抜き取り、孫子の腹の上で自分の欲望をぶちまけた。
 奔出した香也の欲望は勢いよく孫子の上に飛散し、孫子の腹から顎まで、白い飛沫となって降り注ぐ。
「……あ、熱い……」
 孫子は、虚脱間と快楽の残滓に浸り、霞のかかったような瞳で、「……そのまま、中で出してもよかったのに……」と思いつつ、ぼうっと自分の上に降り注いだ白い粘液をみていた。それから、のろのろと顎にまで届いた滴を指で拭い、ちろりと舌をだして、香也から良き放たれたものを舐めとる。香也が出したものなら、孫子は汚いとは思わない。
 むっとする欲望の匂いをかぎながら、孫子は、射精した直後から、香也の表情が曇ったのに、気づいた。
『……ああ……』
 孫子は、この頃には、香也の思考をある程度、トレースできるようになっている。
 香也は……本気で好きなったわけでも、つき合うつもりもない孫子と、また肉欲に負けて交合してしまったことで……今になって、自己嫌悪を感じている……と、孫子は、即座に香也が考えそうなことを、予測してみせた。
『……こちらが無理に誘惑したのだから……』
 そんなに気に病むことは、ないのに……と、自分の欲望に正直なタイプである孫子は思う。
 孫子にしてみれば、二人の要求が一致したので、合意の上での性交渉なのだが……でも……気持ちや誠意などのメンタルな価値観を重視するタイプである香也にしてみれば、嫌っているわけではないまでも、本気ではない相手と成り行きでこうなるのは、不本意なのだろう……。
『……安心、させなくては……』
 と、思った孫子は、身を起こして、暗い表情をして荒い息をついている香也の肩を抱きしめた。 




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「髪長姫は最後に笑う。」 第六章(165)

第六章 「血と技」(165)

 茅の体を抱きかかえてベッドの上に乗せると、茅はそのまま荒野の首を抱き寄せる。長々と口づけしながら、荒野は、茅の上に体を投げ出す格好になった。
「……風呂であれだけいったんだから、今夜はもう十分じゃないか?」
 長い口づけの後、顔を離してから荒野がそういうと、茅は、
「……むぅ……」
 と、口を尖らせて、荒野の肩を抱き寄せる。
「まだ……全然……」
 下から荒野に抱きつきながら、茅は、荒野の耳元で囁いた。
「……足りないの……。
 荒野の……もっと欲しい……」
 先ほど、「茅は、自分自身の体全体を、荒野専用の媚薬に改良しているのかも知れない」という仮説を聞いたばかりだった。
 茅は、聡明だ。
 その言葉が、はたしてどれほど「茅の本心」を反映しているのか、証明しようがない……という事実にも、とっくに気づいているのだろう。
「茅」という個体は、荒野と共生することが、今後の生存について、有利に作用する、と判断した。だから、荒野が自分から離れられないように、茅の無意識が、「荒野の欲する女」として、茅の体を作り替えている……という、先ほどの「仮説」の論理に従えば、以下のような疑問も、当然、浮かびあがる筈だのだ。
 それなら……今、こうして、「荒野が欲しい」といっている茅は……どこまでが、茅自身から出た言葉なのだろうか……。
 そもそも……茅の内部で……「生物として、種を残す本能」と、「茅という個体」の意識は、果たして、明確に分離されているのだろうか?
 例えば……「荒野が欲しい」と感じる茅の欲望は……果たして、「茅の欲望」なのか、それとも、「茅の無意識が、そうすることが有利だと判断したから、茅の体を欲情させた」とみるべきなのか……。
『……いいや……』
 そんなことを考えはじめた荒野は、心中で、その思考をかき消す。
『今更、そんなことを考えても手遅れだし……』
 茅にとって、荒野が不可欠なパートナーであるように……荒野にとっても、もはや、茅という存在がない今後の人生、というのは、想像できない。
 今となっては……おれたちは……。
『運命共同体、だよなあ……』
 と、荒野は思う。
 仮に、茅が荒野にとっての麻薬だったとして……もう、おれ、中毒患者だもん……と、荒野は故意に、心中で軽薄な口調を形作った。
 そして、余計な思考を振り払い、荒野はバスローブの上から、茅の乳首をわしづかみにする。
 少し痛かったのか、茅が、
「……んっ!」
 と小さく呟いて、眉をひそめた。
「茅……さっき、いつもより乱暴にされてたのに、いつもより感じてたでしょ?」
 荒野は、わざと意地の悪い口のきき方をした。
「ひょっとして、茅……少し乱暴にされた方が、感じる?」
 そういって荒野は、バスローブの上から、両手で、茅の乳首を同時に抓み、指に少し力を入れてねじり上げる。
「……んんっ!」
 と、茅が、少し不快な表情を作って、唸った。
「そんな、こと……」
 茅はそういったが……でも、……茅の息が少し弾んできていることに、荒野は気づいた。
「……本当、かな?」
 荒野は、素早く茅のバスローブの合わせ目に手をいれ、茅がその手を払い除ける前に、茅の股間に指をおいた。
「そういう割には……さっき拭いたばかりなのに、ここ……随分、濡れているけど……」
 そういう荒野に何も答えず、茅は、ぷい、と顔を背けて、荒野から視線をそらす。
 荒野は、もう十分に湿っている茅の内部に、中指を入れた。風呂上がりだし、すぐに脱ぐことになると分かっていたから、下着はもともとつけていない。茅のそこは、たいした抵抗もなく、するりと荒野の指を迎え入れた。
「茅のここ……もう、こんなに準備できている……。
 茅……えっちだ……」
 茅の上に覆い被さり、茅の身動きを封じながら、茅の耳元で荒野はそう囁く。そして、そのまま茅の内部に入れた指を、くちゅくちゅと動かしはじめた。
「茅……意外と、乱暴にされるの好きなんだ……」
 最初のうち、茅は、顔を背けながら荒野の言葉を無視していたが、股間で動き回る荒野の指をすぐに無視できなくなり、すぐに「……あっ!」とか、「やっ!」とかいう小さな声を上げるようになる。それから、「駄目」とか「止めて」と、小さな声で抗議しながら、自分の上に覆いかぶさり、動こうとしない荒野の肩や背中を、ぽんぽんと軽く叩きはじめた。
「そんなこと、いっていると……本当に止めちゃうよ……」
 その抵抗も、荒野が耳元でそう囁くと、すぐに弱まる。
 茅はしばらくもぞもぞと体を震わせていたが、不意に荒野の首をに手をかけ、引き寄せようとする。しかし、荒野はその動きをいち早く察知し、上体を起こして茅の腕を逃れた。その間も、茅の中に入った指は絶え間なく動いていし、茅の両足が開いてきている。上体を起こして改めてみてみると、茅の目は潤んでいて、口を開閉させて「なにか」を耐える表情になっている。
 その茅の眼が、荒野に「なにか」を訴えていた。
「……何?
 どうしてほしいのか、ちゃんと口でいってみな……」
 荒野は、あえて茅を突き放し、指の動きをさらに加速させた。
 茅は、また、「あっ!」と小さく叫んで体を震わせ、それから、荒野を上目遣いに睨み、拗ねたような表情をして、
「……今夜の荒野……意地悪なの……」
 と、いった。
「意地悪なおれ、茅は嫌い?」
 荒野は、さらに意地悪なことを聞く。
 すると茅は、「……うぅー……」と、うなり声を上げた。
「……答えないのなら……もっと意地悪にやってやろう……」
 そういって、荒野はあっさりと茅の股間から、自分の指を抜いた。
 茅が、「あっ!」といって、反射的に身を起こし、一瞬前まで自分の中にあった荒野の手首を、掴む。
 荒野は、茅の肩に手を置き、茅が起き上がった方向に、さらに力を加える。
 茅の体は、ころん、と、あっけなかく、ベッドの上に転がった。
 荒野は、素早く茅の両手首を拘束し、背中に廻す。
 そして、茅の体をうつむけにして、軽く押さえつけた。
「今度は……このまま、やろうか?
 茅、本格的に後ろからされるの、確か、はじめてでしょ?」




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彼女はくノ一! 第五話 (248)

第五話 混戦! 乱戦! バレンタイン!!(248)

 香也の指が、孫子の中をまさぐっていた。中の形を探るように、慎重に、指先がゆっくりと壁面をたどっていく。ゆっくりと内部をかき分けられる慣れない感触に、孫子は思わず「んふっ!」っと鼻息を荒くする。
「……い、痛い?」
 孫子の背中が震えたので、香也が、おどおどした口調で尋ねた。
「い、いや……慣れてないものから……」
 孫子の方も、普段の自身に満ちた挙動とは違い、どこか自信がなさそうな声で答えた。
「……香也様が優しく触ってくれますので……痛くは、ないです……。
 その、くすぐったいというか、触ってもらっているところが、暖かくなるような……変な、感じで……
 ……あっ。
 あの……もっと、続けてください……あっ……そう……んっ……そこっ! あっ! あっ! あっ!」
 孫子はこみ上げてくる声を押し殺すために、目をつむって香也の男性を口にくわえ、むやみに舐めまわした。そうやっていても、喉の奥から「……んっ! んっ! んっ!」というくぐもった声が漏れてくる。
 一方、孫子の中を指でまさぐっていた香也は、孫子が声をあげはじめたのは苦痛のためではなかった、ということを確認し、さらに調子に乗ってかき回しはじめる。自分の動きに対して孫子がいちいち反応を返すのが、面白くなってきている。そもそも、香也は、それまで「他人」というものに対する関心が、極度に乏しかった少年であり……それが、こういう形で「他者とのコミュニケーション」に興味を覚え、積極的になりはじめている……というのも、問題があるのだが……香也と孫子は、この時点ですでにスイッチが入っており、もっと動物的な性衝動に従うばかりである。
 二人とも、「おぼえたて」、だった。
 香也の指が動くに従って、孫子の秘処からじゅぷじゅぷぷと透明な液体がしみ出してきて、泡を含んで下にあった香也の顔に落ちてくる。そうした孫子の分泌物を香也は特に汚い、とは思わず、むしろ、何故か、「……直に、舐めてみたい……」という衝動に駆られた。みれば、孫子は、抜けるように白い肌の持ち主であり、なんとなく、「……触るだけでは、もったいない……」と、香也は思うようになってきている。
「……あの……もっと、いろいろ……触ったり、舐めたりしても……」
 香也は、相変わらず気弱な調子で孫子にお伺いを立てた。
「……ふぁっ!」
 香也の逸物から口を離し、孫子が、切なそうな声をだした。
 他ならぬ香也が、「自分から、求めてきている」事実は、それまでだってそれなりにヒートアップしていた孫子の昂揚をさらに加速させた。
「あっ……いいっ! いいです、いいですっ!
 もっと、もっとぉ……」
 言葉を聞くと同時に、もはや辛抱できない、といった感じで、香也は、孫子の股間に直接口をつけ、舌で舐め回しはじめた。
 最初のうちは秘裂にそって表面に舌を這わせる。ざらざらと陰毛の感触。その中心部の、盛り上がった性器の、しめった感触。
 孫子は、
「……うひぃっ!」
 と、声をあげて背を仰け反らせ、全身の力を抜いた。
 結果、手足の力も抜けて、下にいる香也の上にどうっと体を降ろすことになったが、香也の方はそれにもかまわず、夢中になって孫子の性器に舌を這わせている。ぶちゃぶちゃっと夢中になってそこに口をつけているうちに、いつしか鼻とか顎、舌や口で孫子の襞をかき分け、内部へと、舌を進入させた。
「……ひゃっ!
 あっ! あっ! あっ! ……」
 孫子は、上下逆さのまま香也の胴体に絡めた手足に力を込め、抱きすくめる。
 それまで、一方的に香也に奉仕したことはあるが、香也からの愛撫をまともに受け止めたのは、孫子にしてもこれがはじめてのことであり、なおかつ、それまでの経験やシルヴィとのレッスンで、なまじ中途半端に体感が開発されているので、孫子が感じる部分は多かった。
「……ああっ!」
 孫子はすぐに昇り詰め、小さくそう叫んだかと思うと全身をぷるぷると震わせ、ついで、ぐったりと脱力して布団の上に身を投げ出した。
 孫子はそのまま、布団の上に身を投げ出して、目を閉じ、はぁはぁと荒い息をついていた。
 が、すぐに香也が、
「……あ、あの……」
 といいながら、ぐったりとした孫子の上に、覆い被さってきた。
「ごめんっ!
 もう、我慢できない!」
 孫子の上に覆い被さってきた香也は、そのまま一気に孫子の中央を刺し貫く。
 にゅるん、と香也の硬直が入っていく感触だけで、孫子は、背筋がぞくぞくと震えるような歓喜に包まれた。
「……一緒になっている香也様と一体になっている今一緒になっている……」
 と、孫子は実感し、根本まで差し込まれた段階で、主としてメンタルな要因で、二度目の絶頂を瞬時に迎えた。
 香也の方は、孫子の反応を気にする余裕もなく、従って孫子の体が相変わらず細かい痙攣を続けているのにも気づかず、中の感触を楽しむのに夢中で、最初はゆっくりと、慣れてくると、徐々に早いピッチで、孫子の上で腰を振りはじめた。ぶちゃずちゃずちゃ、と、結合している部分から音がしはじめ、最初のうち、痙攣するばかりで無反応だった孫子も、徐々に意識を回復し、汗だくになって孫子の上で動いている香也の肩や背中に手足を絡ませてしがみつき、目を閉じて、「香也が与えてくれるもの全て」を受け入れた。
「……犯されてる犯されてるわたくし今香也様に犯されている……」
 とか、そんな単純な思考しか、今の孫子にはできない。
 肉体的に受ける快感もあった。
 それに、今この瞬間は、香也を独占している、という快感もある。
 基本的に冷静で状況判断能力に秀でた孫子は、香也が我に返れば、この行為自体は今後の人間関係に深い影を落とすことはないだろう……と察知していた。が、例え一時的に、であっても、薬の力を借りずとも、香也を夢中にさせることができた……ということが、今回のことで証明されたわけで……今の段階では、それで満足するべきだろう……と、頭の隅で冷静に判断している。後は、こまめにこういうチャンスをみつけ、香也との絆を深めていけばいい……と、孫子は思った。
 プライドの高い孫子は、「既成事実を作って香也をものにしたい」のではなく、あくまで、「自分の魅力をアピールして、香也に自分を選択して貰いたい」のだった。
 不器用、かつ力強い動きでピストン運動を繰り返す香也を受け入れながら、孫子は、油断すれば自分の喉から漏れてしまう歓喜の声を飲み込むのに、精神を集中しなければならなかった。





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「髪長姫は最後に笑う。」 第六章(164)

第六章 「血と技」(164)

 今日の茅の反応は異常だ、ということで二人の意見は一致した。茅の体は、どうやら、茅自身の意識的無意識的な願望を反映して、日々変化を続けているらしい……。
 何よりも、完璧な記憶力と測定能力を持つ茅自身が、そう断言している。
「……今まで、そうした変化に気づかなかったのは……茅自身が、極端な変化を好まなかったからだと思うの……」
 茅は、そう説明する。
 現在の茅は、一般人に紛れて暮らすことを望んでいる。だから、目立つような変化は、していない。
「……それに……そうした変化、といっても……標準的な代謝速度に準じた変化だから、そんなに、目立たない……」
 ここに住むようになってから……茅は、背が伸びた。髪も二度ばかり、鋏をいれている。胸も、大きくなった。体重は、あまり変わっていない……。
 どれも、茅くらいの年齢の女の子なら、誰にでも起こりうる程度の「変化」であり、とりたてて、騒ぐことでもなかった。
「……でも……」
 茅は、胸の前で腕を組み、自分の体を抱く仕草をする。
 内側から……荒野の快楽に供するため、茅が、茅自身を改良している……と悟り……怖く、なったのだろう。
「……茅……。
 このままだと、どんどん荒野を、縛る……。
 それだけなら、まだしも……もし、この先、荒野に、何かあったら……」
 ……茅……自分を制御できるかどうか、自信がないの……と、続けた。
 荒野は、茅がいったことを咀嚼し、
「でも……それ、全部、たった今、茅が思いついた仮説だろ?」
 と、指摘した。
「それでも……」
 鏡の中の茅は、毅然とした表情で、頷く。
「……かなり、蓋然性の高い仮説なの。
 それに、今までに茅のような存在は、いない。だから、その仮説を検証することも、現時点では、不可能。前例というサンプルが皆無なの……」
 茅は……平然とした顔と態度を保っているが、これで、常に「自分が有害な怪物」に変化する可能性を考慮し、警戒している……というのが、これまで茅とともに過ごし、観察してきた荒野の所感だった。だから、茅の口からそうした言葉がでること自体は、さほど意外ではない。
 意外なのは……。
『……茅が、そうした変化のトリガーになりうる要因として……』
 荒野の存在、を上げ、荒野が物理的心理的に茅から遠ざかっていく時に、茅が変貌する……と、予測したことだった。
 茅は……自分という存在の危うさを、あるいは荒野以上にシビアに、認識している。茅の、荒野への心理的な依存傾向は、荒野自身も以前から気にかけていたところだが……。
 いや、客観的にみても、場合により、茅の方が荒野よりも偏見に捕らわれない観察眼を持つことがある……ということは、今までの経緯からも観測されているところで、別に、茅が自分のそうした傾向を自覚していても、不思議ではないか……と、荒野は、思い直した。
 荒野が気にかけているのは……その明晰な観察力と知性を持つ茅が、
『……おれに何かあったら、暴走する可能性がある……』
 と、わざわざ公言したことだった。
 その根拠は、荒野も容易に頷けるところなのだが……。
『結果として……死傷する可能性が高い前線にでるな……と、釘を刺された……』
 ことを、意味する。
 茅のいうことは、理解できる。
 現在の能力でさえ……茅が姿をくらましてどこかに潜伏、反社会的、あるいは非合法な行為に全力で及んだたとしたら……荒野自身はもとより、一族の総力を結集したとしても、茅の居場所を捕らえ、あるいは、茅の意志を挫くことが、はたして可能かどうか……。
 自分の肉体を使用しての戦闘行為、などよりも……この複雑な現代社会では、直接的な破壊工作よりも、情報的な攪乱行為の方が、現実の被害や破壊力ということでは、数倍の威力がある……と、荒野は思っている。
 しかも、茅は……。
『……隠形、ということでは、すでに、一族の上級者並だ……』
 その茅が……荒野との間に、「もしも」のことがあったら……暴走する可能性が高い……と、自己申告している。その時の、破壊の対象は……この世の中全体かも知れないし、一族そのものかも知れない。あるいは、荒野個人化も、知れない……。
 そういった標的は……その時の状況により、異なってくるだろう。
「……そうか……」
 そこまで、短時間のうちに思考を巡らした荒野は、ぽん、と茅の頭に掌を置いた。
「……楓にしろ、茅にしろ……あるいは、あの三人組にしろ……みんな、暴発すれば危険きわまりない、強力な不発弾なんだな……。
 せいぜい、取り扱いに気をつけるよ……」
 冗談めかして、そういうのが、精一杯の虚勢だった。
 ともかく、ここで取り乱すのは、やばい……と、本能が告げている。
「みんな、フラジャイル……取り扱い注意、だ……」
 茅の頭を撫でながら、荒野はさらに考える。
 危険物、ということなら……そもそも、荒野たち一族の者だって、本来は、相当に危険な連中なのである。それが多少スケールアップしたところで……。
『……今更、だよなぁ……』
 当面、荒野の役割は、茅や三人組、さらには、すでに有害な存在として育っている「悪餓鬼ども」も含めて、潜在的に危険な存在から、無害な存在へと変換すること……だった。
 今更……。
『……ビビっている、場合じゃねーし……』
 そこまで考えて、荒野は無意識に撫でていた茅の頭から、手をどけようとする。
 と、……。
「……駄目……」
 茅が、荒野の手首を掴んだ。
「もう少し……頭、撫でて……」
 そういう茅は、拗ねたような、恥ずかしがっているような、複雑な表情をしていた。
「……はいはい」
 荒野はそういって、茅の気が済むまで頭を撫で続ける。
 結局、それから、そのまま三十分近く、茅の頭を撫で続けたわけだが……。
『……これで、茅の機嫌が直るなら……』
 安いもんだ……と、荒野は思った。

 茅の髪の手入れが終わると、
「……だっこ……」
 と、茅がいいだしたので、荒野は素直に茅の体を抱き抱え、ベッドへと運ぶ。とはいえ、鏡台からベッドまでは、わずか数歩の距離なのだが……茅の気分、の、問題なのだろう。




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彼女はくノ一! 第五話 (247)

第五話 混戦! 乱戦! バレンタイン!!(247)

『……これが、香也様の……』
 香也が抱き返してきたのをいいことに、孫子は、香也の口に舌を差し入れ、香也の口の中を長々と蹂躙した。唾液をかき混ぜ、香也の歯茎や舌の裏を舌の先でまさぐる。香也の口内は、寝起きで水分が不足して粘性が高かったが、孫子の唾液といりまじるとねとねとした感触が若干緩和される。口臭は、していたのかもしれないが、孫子は気にならなかった。すでに孫子は、香也のものならすべてが受け入れられる、という心境にあり、事実、今感じてる香也の体温、香也の体臭、香也の感触など、五感で感じる香也の「」すべて」が、孫子を高揚させていく。抱き合い、口の中をむさぼっているだけで孫子の乳首は硬く張り、股間からじんわりと水分がにじむのを、孫子は感じた。乳房は香也の胸板に押しつけられてひしゃげている状態だし、みじろぎすると、香也と陰毛がすれるさい、そこが湿っている。孫子でさえそんな状態だったのだから、香也のモノは当然いきりたって、孫子の腹部を圧迫している。完全に勃起した状態で、剥き出しになった亀頭が孫子の下腹部をつきあげていた。
『……こんなに、大きいのが……』
 自分の内部に収納されるのだ、と思うと、それだけで孫子は、頭の奥がかっと熱をおびてくる。
『いつもより、おっきい……』
 香也から口を放し、孫子は、いきりたった香也のモノを指で、つかむ。
「……これ……どうすると、気持ちいいんですか?」
 潤んだ瞳で香也の顔をみながら、孫子は尋ねる。
 わざわざそんなことを聞いたのは、今日の香也は今までとは違い、いやむやのうちにそういうことになっている、という受動的な状態ではないからだ。先ほど、香也から抱きついてきた、ということは香也の主体的な意志によって孫子との関係を望んだ、ということである。今回は薬物などを使用していないし、今この場かぎりのことなのかもしれないが、それでも孫子にとっては、香也が自分から求めてくれた、という事実が、嬉しい。
 もっとも、「朝起きたら、裸の美少女が抱きついて自分の服を脱がしていた」などという珍事を体験し、なおかつ、理性を保てる年頃の男子がどれだけいるか、といったら……これは、香也でなくとも、かなり怪しいものだが、そうした異性の性的な欲求の存り様は、孫子の理解の外にある。
「口でするのと、いきなり、わたくしの中にいれるのと……どちらがいいですか?」
 ともあれ、孫子が重ねてそう尋ねると、香也は掠れた声で、
「……く、口で……」
 とそういった。
 孫子と結合したことはことはあったが、口で奉仕してもらった覚えは、香也にはない。あるいは、意識が朦朧とした状態ではあったのかも知れないが、香也ははっきり記憶していない。
「わかりました」
 孫子は毅然と頷くと、さっそく頭を香也の下の方に持っていこうとし……そこで、固まった。
「……あ、あの……」
 孫子は、珍しく狼狽した様子で、上目遣いに香也をみながら、尋ねる。
「このままの格好で、するのと……香也様の方にお尻を向けて、するのと……どちらが、よろしいでしょうか?」
 孫子は、ビデオやシルヴィからの講義で、男性が女性器をみたり弄んだりするのを好む時があることも、知識としては知っている。
「……えっ、と……」
 香也は、少し考えて、孫子が提案している格好を想像する。
「……その……そんな格好になると……才賀さんの……丸見えに……」
「わざわざいわないでください!」
 孫子は、少し鋭い声を出す。
 孫子にしてみれば、顔から火がでるほど恥ずかしい。
「香也様が望むなら、します。それに、その……い、痛くしなければ、見る以上のことを、してくださってもいいです……」
 孫子は羞恥のせいで前以上に真っ赤になりながらも、そういう。
 そうした孫子の様子をみた後、香也は、固唾を呑んで、返答した。
「……じゃ、じゃあ……その……こっちにお尻を向けて……お願いします……」
「では……失礼します」
 そういうと、孫子は、体の向きを変え、再度、香也の上に跨った。
「あの……その気になったら、見る以上のことも、してください。
 わたくしは……これほどのことで、香也様を縛ろうとは、思っていません……」
 ここに至っても敬語、というのが、第三者的にはなんかおかしいのだが、当人たちはあまり違和感を感じていない。
 孫子と香也との距離は、ここに至っても、近いようで遠い。生まれ育った環境や、それまでに培ってきた価値観があまりにも違いすぎる。いわば、互いに異質な精神同士という関係になるわけだが、それ故に惹かれる、という部分もある。ことに、孫子の方にとっては。
 孫子はお尻を香也の顔に向けた形で、香也の上に馬乗りになる。いわゆる「シックスナイン」の格好である。
 その格好で香也のいきり立った逸物を手にし、顔を近づける。
『……香也様、の……』
 別に、見るのが初めてというわけではないが、こうして落ち着いた状況で間近にみる機会も少ない。すぐ鼻先にあるせいか、そこから立ち上ってくる匂いや熱気を、孫子はいまさらながらに実感する。
「……いきます」
 短くそういって、孫子は、まずは香也の先端を、口に含んだ。
 口の中で、鈴口、雁首、裏筋……など、予習してきた知識を総動員して、香也の亀頭を舌先で転がした。一通りやってみて、香也の反応が強かった鈴口と雁の根本の部分を、さらに念入りに責め立てる。孫子は舌先に神経を集中していたせいで、自分の全身が舌になって、香也の先端にとりついて責め立てている錯覚さえ、覚えたほどだ。もともと、狙撃、という、よく単に集中力を必要とする作業に習熟する孫子は、一度何事かに没頭すると、周囲がみえなくなる。孫子がそうして全身で香也を愛撫していると、不意に、孫子の腰とお尻に香也が触れてきたので、孫子の集中力が少し削がれた。
 香也は、孫子の股間をまじまじとのぞき込み、女性器の形状などを目に焼き付けた後、孫子の腰に手を添えて、割れ目に指をそっと添えてみた。少し、湿っている。そこに香也の指を感じると、孫子の臀部が身震いした。
「……痛い?」
 香也は、遠慮がちに聞いた。
「大丈夫です」
 孫子は、即答する。
「遠慮なさらずに、もっと」
 実際、孫子としては香也にもっと触れて、孫子を感じて欲しかったのだが、そうした微妙なニュアンスをうまく伝える能力を持たなかった。一見、たいていのことは器用にこなす孫子は、対人的なコミュニケーションの面で少し不器用な面もある。ことに、香也と直接対峙すると、妙に硬くなって思うように闊達な態度が取れなくなる。
 孫子の言葉を受けて、香也は、陰毛の中に見える、てらてらと濡れる秘裂にそっと手を伸ばし、触れる。人によって「グロテスク」と呼ぶこともあるその部分は、確かに美少女然とした孫子の一部とは思えないような複雑な形状をしている。
『……この……どこに……』
 入ったんだろう……とか思いながら、香也は陰毛をかき分けて、孫子のその部分をもっと見れるようにしてから、さらに入り口の襞の部分を指で広げて、中身の形状を確かめようとする。
 画家としての好奇心と、若い男性としての卑猥な欲望がない混ぜになって、香也を突き動かしていた。
 香也が孫子自身をつぶさに観察している時、孫子は香也自身を口に含んで懸命に奉仕していた訳だが、その最中も香也が自分の大事な部分を押し広げる感触は、当然の事ながら意識している。中の奥深い、今まで誰の目に触れていない部分まで、香也が見ている……と、そう思うと、孫子の香也が広げている部分の奥が、じゅん、と熱くなっていくような錯覚を覚えるだった。




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「髪長姫は最後に笑う。」 第六章(163)

第六章 「血と技」(163)

 一度荒野が射精したことで満足したのか、茅はその後、おとなしく体を洗い、いつものように荒野に手伝わせて丁寧に髪も洗う。
 風呂からあがり、体を拭いて茅の頭にバスタオルを巻いてから、二人でベッドルームに移動、そこで茅を鏡台の前に座らせ、頭のバスタオルを解き、改めて髪を拭いながら、時間をかけてドライヤーをかけ、ブラッシングを行う。
 これまでにも何度も繰り返し行っている作業なので、この頃には荒野も、かなり手慣れてきていた。
「荒野……」
 ブラシとドライヤーを手にして茅の髪と格闘している荒野に、茅が声をかける。
「さっきの茅……シルヴィよりも、よかった?」
「よかった」
 荒野は手を休めず、しかし、即答した。
「すっげぇ、よかった。
 やばいくらいに、よかった」
 おおげさな言い方だったが、荒野が本気でそういっていることが伝わったのか、茅は無言で頷く。
「気をつけないと……溺れて骨抜きにな。るな、と、思った……」
 荒野は、茅の髪をすきながらそういい、鏡越しに茅の目をみる。
「茅は……おれにとっては、麻薬みたいなもんだ……」
「そんなの……」
 茅は、すました顔をして、答える。
「茅も、ずっと前から、同じ……。
 荒野は、茅にとっての麻薬なの。とても……」
「頼むから、その先はいわないでくれ」
 荒野は慌てて茅を制止する。
「恥ずかしいこというの、禁止」
 放置しておくと、とどめもなく聞いていて気恥ずかしくなるようことを、言い出しそうな気がした。
「……荒野の吝嗇……」
 途中で言葉を遮られたことには不満そうな顔はしたが、それでも、茅は荒野の言葉には従い、その話題を中断する。
「でもな……マジな話し……こんなことばっかりやっていると、嵌りそうで怖いよ。
 茅の感触は、体は……おれには、刺激が強すぎる」
 荒野は、真顔で続ける。
「茅の体は……気持ちよすぎる。歯止めをかけずにやりはじめたら……おれ、猿になってやりっぱなしで、他のことが手につかなくなる。
 だから、当分は……やっぱり週末だけに限定するとか、自主規制は必要だと思う」
「……そんなに、なの?」
 鏡の中で、茅が首を傾げた。
 荒野の表情から、深刻さを感じたらしく、茅も真剣な面持ちに変わっている。
「そんなに、なんだ」
 荒野は、真面目な顔をして頷いた。
「この前、やったときは普通に気持ちよかっただけだけど……今日のは、なんかレベルが違ってた……。
 肌が触れあう感触からして、全然違うし……中に入ったら、もう、それだけで……理性が蕩けそうになる……」
 荒野は、先ほどの感触を思い出しながら、茅にも分かりやすい説明の仕方を考えつつ、ゆっくりと説明する。
「前とはレベルが違う、っていうか……その、茅は茅なんだけど……前の茅とは、少し違ってきているような……」
 荒野の話しを聞くうちに、茅は、なにやら考え込む表情になった。
「……わかったの」
 数十秒、無言のままなにやら考え込んで、茅は、ようやく口を開く。
「今、自分の体を計測した。
 確かに……数日前とは、体臭、汗の成分、肌の皮質など……が、微妙に、異なっているようなの……。
 体のサイズは大きく変わっていないから、今まで気づかなかったけど……」
 荒野は、鏡越しに、茅の顔をまじまじと見る。
「……どういう……ことだ?」
 結局、茅の言葉の意味を図りかねた荒野は、素直に聞き返すことにした。
「一見しただけでは、そうとは分からない……微妙な、生化学的な変化が、ここ数日で、茅に起こったの」
 茅は、訥々と語り出す。
「具体的にいうと、体表部や汗腺から分泌する成分が……記憶にあるものより、微妙に、変化している……。
 荒野の、今の反応から推測すると……この変化は、荒野のみを誘惑し、性的な興奮を示すための変化……ひどく俗っぽい言い方をあえてするなら……荒野個人に最適化された、性的な誘導効果持ったフェロモンを茅の体表部から、壜筆するように、変化している……」
 荒野は、茅の言葉をゆっくりと咀嚼する。
 それが茅の冗談ではないとすると……比喩ではなく文字通り、荒野に効果を限定した、麻薬、みたいなものではないか……。
「その変化の原因も……推測が、つくの。
 荒野が、シルヴィと寝たから。
 茅の深層心理は……荒野が、茅から離れていく可能性を警戒し……より一層、荒野を捕らえておくために都合のいい方向に……茅自身の体を、作り替えたの……」
「……そんなことが……」
 しばらく動きを止めていた荒野は、呆然と呟く。
「原理的には……可能なの。生化学的な変化、といっても……ごく微量の変化ですむ筈だから……体内の代謝系に、ほんの少し、変化を与えるだけで、いい……。
 荒野。
 さっき、茅とした時、他にも何かおかしなことに気づいた?」
「……いや……」
 荒野は、懸命に先ほどの狂態を思い返す。
「……ええっと……別に、ないと……。
 ちょ、ちょっとまって!
 いや、あることには、あるか……でも、あれも、そんなに異常なことではないといえばそうだし……」
 ぶつぶつと独り言のように呟きだす荒野。
「……些細な変化でも、いってくれるとありがたいの」
 鏡の中で、茅は寂しげに笑った。
「今後、茅がどんな変化を起こすのか……推測する材料になるし……」
「……そうか……」
 茅にそういわれて、荒野は、不承不承、といった感じで、頷く。
「じゃあ、参考になるかどうか分からないけど、念の為にいわせて貰う……」
 と、前置きし、荒野は、
「……さっきの茅のアソコ……前にした時よりも、ずっと締まりがよくなってた。
 おれのをぎゅうっと柔らかく包み込んで、優しく締めあげる感触で……すっげぇ、気持ちよかった……」




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彼女はくノ一! 第五話 (246)

第五話 混戦! 乱戦! バレンタイン!!(246)

 香也は、なにやら体をまさぐられる気配を感じて目を覚ました。
「……んっ……
 ……んんっ!」
 と、低く呻くと、自分の上に覆い被さった、何かいい匂いのする熱い塊がピクリと震える。
 ……「自分の上に覆い被さった、何かいい匂いのする熱い塊」?
 …………何、それ?
 寝起きで朦朧としたまま起きあがろうとすると、
「しっ! お静かに!」
 と、誰かに口を手で塞がれ、再び布団の中に押した倒される。その誰かは、抱きついてきて、体を押しつけるように香也の体を押し倒したので、結果として香也の体にその人の乳房がぐにゃりと押しつけられ、押しつぶされる感触がした。その人の体は、熱くて、いい匂いがして……、って!
「……才賀……さん?」
 ようやく、自分を押し倒した人物の正体に気づいた香也は、小声で尋ねる。気づけば、自分はパジャマの前をはだけており、パジャマの下も、下着ごと膝下までずらされ、性器を丸だしにした半裸、その上、香也の膝を割るようにして、何故か一糸も纏わぬ孫子が、香也に抱きついて、口を塞いでいる……。
 目線を落とした拍子に孫子の真っ白い肌と、対照的に黒々とした茂みが目に入り、香也は、慌てて視線を天井に逸らした。
「……騒がないでください……」
 間近で、孫子の声が聞こえた。吐息が頬にかかってくるくらいだから、孫子は、すっごく「間近」にいることになる。
「……いや、あの、その……」
 香也は、予想外の事態におののき、慌てている。
「……んー……。
 その……なんで?」
 万感の思いを込めて、シンプルにそう尋ねた。
 香也にしてみれば、まるで訳がわからない……。
「……香也様が、いけないのです……」
 孫子は、ボソボソと小声でいった。
「あの子ばかり、贔屓するから……」
 そういって、孫子は、香也にますます体を密着させてくる。
 孫子の体温と体臭をことさらに意識した香也は、くらくらっと自制心が揺らぐのを感じた。
「……いや、でも……その……」
 香也は、懸命に孫子の「感触」を意識の外に追い払おうと努めながら、懸命に言葉を紡ぐ。
「……なんで?
 こういうの……よくいえないけど、あまり、よくないと思う……」
 寝起きということと、それにひどく動揺していたこともあり、その時の香也にいえたのは、それが精一杯だった。
「わかってます。わかっているのです、わたくしも……」
 孫子は、俯いて、囁くように答える。
「でも……その……堪えられませんでした。
 香也様の寝顔を見ていたら、ずるずるとこうなってしまって……香也様が、いけないのです……わ、わたくしを、こんな気持ちにさせるから……」
 ……孫子の方も、一見冷静にみえて、これでかなり興奮しているようだ。いいていることが、支離滅裂。しかも、さりげに、責任転換。
 しかし、そういった孫子の、俯いた頬が、真っ赤だった。……それと……耳も。
「……んー……」
 気分を落ち着かせようとして、香也は、いつもより長くうなった。とはいっても、落ち着こうとすればするほど、自分に密着している熱くていい匂いのする塊を意識してしまう……。
「……あっ……」
 孫子が、小さな声を発して、顔をあげた。
「今……ピクっと、動きました……」
 ……なんで彼女は、自分のモノを握りしめているのだろう……と、香也はぼんやりと考える。
「男の方って……その、いやらしいことを考えたり感じたりすると、ここが反応するのですよね?」
 どこか悪戯っ子めいた表情を浮かべて、孫子は香也の目を至近距離からまともにのぞき込んだ。
「……それって……わたくしのことを意識して、反応してくれた、ということなのですの?」
 ……天然か? 天然で、裸で抱きついておいて、そういうこと聞くのか?!
 と、香也は心中で絶叫する。
 が、そんなことを口にできる性分でもなく、実際に口にしたのは、例の、
「……んー……」
 という、芸のないうめきだった。
 それをどう誤解したのか、孫子は再び顔を下に向ける。
「わたくし……そんなに、女としての魅力がありませんか……」
 がっくりと肩を落とし、雰囲気を出してそんなことをいうものだから、香也は、慌てて孫子の肩に手を置き、
「……そ、そんなこと……」
 ない……っと、いおうとしたら、孫子ががっしりと抱きついてきて、再び、香也の体を押し倒した。
「……え?
 な、何を……」
 少し間を置いて、香也がそんなことを呟く間にも、孫子は香也の上に完全に体を乗せ、のしかかっている。
「……こうまでしても……何も、してくださりませんの……」
 ねっとりと湿った声を出して、孫子は香也の胸板に、顔をつけた。
「……こんなに……ドキドキしていますのに……。
 それと、わたくし……香也様になら、なにをされても……いいえっ! むしろ、何でもしてくださって……」
 孫子らしくもなく、熱を帯びて混乱した口調でそういって、ずりずりと香也の上に密着したまま、這いあがってくる。孫子の乳房と陰毛が、自分の腹や胸の上を通過していく感触。
「……わたくし……」
 孫子がそういった時、孫子の顔は、香也の顔の直前にあった。三センチも、離れていない。
「……わたくしも……もう、こんなになっていますのに……」
 熱い息を吹きかけるようにして、囁きながら、孫子は、自分の陰毛がある場所に、香也の手を導く。
「……んんっ!」
 さらに、香也の指で自分の陰毛をかき分け、湿った感触のある部分にまで、到達させた。
「……ほら、動かして、ください……。
 わたくしの、もう……香也様のせいで……こんなに、なっているのですから……」
 孫子の裂け目にそって、香也の指をゆっくりと動かす。最初のうちは、孫子が香也の指を動かしていたが、その触れている部分が湿潤になる頃には、香也が自分の意志で指を動かしていた。
 ……女性のこの部分は……こう、なっているのか……と、香也は実感する。
 香也の指が孫子のそこを探るようになると、孫子は、香也のいきりたっている部分に手を伸ばす。
「……こんなに、硬くなさって……」
 香也自身を握りしめた孫子がそういうと、香也がまさぐっている孫子の部分が、じわり、と、一層湿潤になる。
 香也の上にのしかかっている孫子の柔らかい体が、一層熱を帯びたように感じた。
「……香也様……」
 孫子は、ねっとりとした声を出す。
「……もっと、好きに、なさって……。もっと乱暴に動かしても……んんっ!」
 孫子の声に即され、香也が孫子に当たっている指を動かすと、孫子は、体全体を震わせて声をあげそうになる。その声を慌てて無理に呑み込み、深呼吸をして気をおちつかせてから、
「……いえ、そのまま……。
 その……わたくし、どうも……少し乱暴なくらいの方が、好きなようですから……香也様の、やりたいようになさってくださって……」
 頬を染めながら、自分の性癖を告白する。
 その後、
「あの……もし、よろしければ……キスしても……」
 孫子がいいおわる前に、香也は下から腕を回し、孫子の首を乱暴にかき抱いた。
 流石に、ここまでされると……香也の理性も保たなかった。




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「髪長姫は最後に笑う。」 第六章(162)

第六章 「血と技」(162)

 結局、このままお湯の中に浸かっていてはのぼせる、ということになって、浴槽の縁に荒野が腰掛け、その上に茅が座る、という体位になった。荒野としてはさっさと体を洗って風呂をあがってから、快適なベッドで改めて楽しみたい所だったが、茅がそれを承知しない。どうやら、自分は何回も行かされているに、荒野は一度も射精していない、というのが、茅のお気に召さないらしい。
 かといって、適当なところでお茶を濁そうとしても……妙なところで敏感に荒野の心理を見抜いてしまう茅を誤魔化しきる自信は、荒野にはなかった。
 その茅は、荒野に背を向けて荒野のものを掴み、自分の箇所にあてがっている所だった。
「……んっ……」
 と、吐息を漏らしながら体重をかけ、にゅるん、と、荒野の膝の上にすっかり腰を降ろす。
『……確かに……』
 少し前より、脂肪がついてきているよな、と、荒野は冷静に思う。
 茅のお尻がクッションになって、この体位だと荒野のものが根本まで入りきらない。それは、とりもなおさず、茅の体が女性らしくなってきている、ということなのだが……。
「……それじゃあ……」
 荒野はそういって、茅の腿を両手で掴み、持ち上げ、力を抜いて茅を自分の膝の上に落とした。
「……はぁっ!」
 と、茅が、小さな悲鳴を上げる。
「……大丈夫? 茅……」
 ……これでは、さっきの二の舞ではないか……と、そう思った荒野は、そう声をかけた。
「……だい、じょうぶ……なの……」
 茅が、鼻にかかった声で返答する。
「大丈夫だから、荒野の好きなように、続けて……」
 それを聞いた荒野は、わざと荒っぽい動きで、茅の体を上下に揺さぶった。多少、胸や腰回りに脂肪がついたとはいっても、茅の体はまだまだ軽い。荒野の腕の力なら、存分に動かすことが可能だった。
 荒野に貫かれたまま、茅の白い背中が踊る。
 茅は、以前のように矯正をあげまくったが、荒野の動きを制止する、ということはなかった。それどころか、びくびく全身を震わせ、甘い声をあげながらも、きゅうきゅうと荒野自身を締めあげてくる。それが意識的な動きなのか、それとも、無意識的な収縮なのかは、経験の浅い荒野には、何とも判断できない。
 最初のうち、ただ嬌声をあげるだけだった茅は、そのうちに「こうや、こうや……」と荒野の名を連呼するようになった。
「……荒野っ!
 ……荒野の顔を、見ながら……」
 と苦しそうな息の下で、切れ切れに茅がいうので、荒野は一度手を休め、茅の体の向きを変える。
 向かい合わせになった格好で、結合したまま茅の腿を抱え、上下に揺さぶる。
「……んっ! んっ!」
 耳まで真っ赤にした茅が、何かを耐えるような吐息を漏らし続けるのを、荒野は比較的冷静に見下ろした。
 こうして茅を抱きかかえて揺さぶっていると、茅の顔は、すぐそこだ。
「茅、気持ち、いい?」
 荒野が、尋ねる。
「……いいっ!」
 少し間をおいて、茅が答える。
「この格好だと……違うところが、擦れて……」
 そう答えた後、茅は、とろんとした目で荒野を見上げ、
「……荒野は?」
 と、聞き返してきた。
「……すっげぇ……気持ち、いい……」
 荒野は、素直に答える。
「茅のアソコ……きゅうきゅう締まってきて……激しく揺らしても、ぴったりとくっついて……」
 荒野が答える間にも、茅は「……あっ。あっ。あっ……」と、声を漏らしている。
「荒野の……また……大きく、硬く……」
 茅がいうとおり、荒野の奥底からぐらぐらと沸いてくる感触がある。
 今までの性交で感じたような、瞬時に上り詰める感触ではなく……体のそこから、ゆったりと満ちてくる感触を、荒野は感じた。
「……茅……おれ……もう少しで……」
 荒野が掠れた声でそういうと、茅はその意味を察して、「来て!」と叫んで、荒野の体にしがみついた。
「荒野の熱いの……出して!」
 荒野にしがみついた茅が叫んだ瞬間、荒野の中心から、熱いものが噴出する。一度解き放たれたそれは、いつまでも出て続ける……ような錯覚を覚えるほど、長々と出続けた。
「……はぁ……わぁ……わぁ……」
 茅は、荒野にしがみつきながらも、背筋をピンと硬直させて、目を見開いた。
「……熱い……荒野の……どくどく、でてる……」
 茅の中に出してしまったな……と、荒野は、ぼんやりとそんなことを考えていた。
 射精に伴う快感が、今までになく強烈だったので、荒野の思考も半ば麻痺している。
 なんで、茅の中は……こんなにも、気持ちよいのだろう……と、荒野は、そんあことをぼんやりと思った。
 シルヴィとした時も、やはり快楽はあったわけだが……茅の中で出した今、この時の気持ちよさとは、ぜんぜん、レベルが違う……。
 荒野は、しばらくぼんやりと茅を抱きかかえたまま、動かないでいた。
 茅が口唇を求めてきたので、のろのろと茅を床に降ろす。
 茅は、足に力が入らなかったので、ふらふらとよろけ、荒野は反射的に茅の体を支え、そのまま抱擁し合って長々と接吻した。
 結合していた時も、そうだったが……茅とやっていると、時間の感覚が、なくなるよな……と、荒野の醒めた部分が、そんなことを思う。
 抱き合っているうちに、茅が息を整え、足にも力がはいってきたので、荒野は腕を放し、まだ茅の中に挿入したままだった自分の分身を抜く。
 どろ、とした、驚くほど濃い白濁液が、茅の中からしたたり落ち、茅の股間から腿に伝わった。
「……きれいに、しないとな……」
 荒野はぼんやりとそういって、シャワーのノズルを手に取り、お湯を出して温度を調節する。茅は、荒野の肩に手をかけて、荒野のするがままになっていた。
 少し熱めのお湯をかけながら、茅の中に指を入れて、中をきれいにする。できるだけ丁寧に、ゆっくりと動かしたつもりだが、それでも茅は、時々呻いた。
 自分が放出したものを茅の中から掻き出しながら、荒野は、
『……歯止めをかけなかったら……おれ、ずっと茅とやりまくるかも……』
 とか、そんなことを思いはじめている。
 やはり……茅との関係は、数日に一度の割合くらいで、ちょうどいいのかも、知れない……。
 と、荒野は、思った。
 茅の体は……荒野には、気持ちよすぎた。





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彼女はくノ一! 第五話 (245)

第五話 混戦! 乱戦! バレンタイン!!(245)

「……起きません……わね……」
 そろそろと手を伸ばし、香也の頬をつんつん、と指で軽く押して確かめた後、孫子は小さな声で独りごちる。
 そして、何かにはっと気づいた表情になり、落ちつきなく左右を見渡す。
 証明もつけていない薄暗い部屋に、自分と布団の中で寝息をたてている香也がいるだけである。
「……ふたりきり……」
 ぽつりと呟く。
 そして、顔を赤くしたり青くしたり、と、すっかり挙動不審になってくる。
「……い、いいわよね……。
 あの子も、何度もやっていますし……」
 孫子は、誰にともなくそんないい訳をしながら、そっと香也の掛布団をまくって、素早くその中に体をいれた。
 ここでいう「あの子」とは、もちろん楓のことである。
 孫子からみれば、楓は、香也と何度も二人きりでこーんなことやあーんなことをしているわけで……それなのに、孫子には、一度も「二人きり」になる機会が、なかなか巡ってこない……。
 これは不公平だ、と、孫子は考える。
「ただ、ちょっと……」
 ぬくもりを、感じるだけだから……と、自分に言い訳しながら孫子は、もぞもぞろ布団の中で蠢いて、香也の体にぴったりと密着した。
 パジャマに上着を引っかけただけで動いていた孫子は、思っていたよりも体が冷えていたらしく、薄い布越しに感じる香也の体は、とても暖かかった。
 体をつけた時、香也の体がぴくりと震えたので目を醒ましたか、と、孫子は身構えたが、結局、香也はそのまま静かな寝息をたてて目を醒ますことはなかった。
 冷静になって考えてみると、この段階でわざわざ香也の布団の中に入っている、という事実はうち消しようもない。だから、いくら孫子が身構えても、目を醒ました香也に騒がれれば終わりなわけだが、この時の孫子はいつもの冷静さを失っている。
 香也が目を醒まさなかった、ということに安堵した孫子は、ますます大胆に香也の体を、そっとまさぐる。
 どうしよう、という意図も特になかったが、孫子がこうしてゆっくり香也の体に触れる機会は、実は今までには、皆無だった。香也と関係を持った二度の体験でさえ、楓が側にいたわけだし。何より、どちらの場合も、どさぐさまぎれの感がある。
 もちろん、香也が自分の意志によって孫子とそういうことをしてくれるのが一番いいわけだが、今の時点でそれが無理なら、せめても、香也が目を醒ますまで、服の上からでも香也の感触を楽しもう……と、孫子は思った。
 一応、この時点では、孫子は香也に添い寝する以上ことは、するつもりはない。また、以前、香也が風邪を引いた時も添い寝した経験があるので、心理的な抵抗もあまり感じなかった。
『……あっ……』
 孫子が、添い寝以上のことをする気になってきたのは、もぞもぞと香也の体をまさぐっている途中で、偶然、香也のモノに手が触れ、そこが硬くなっているのに気づいてからのことだ。
 ……そういえば……男性のここは、性的な刺激や興奮によらず、こうなることもある……とかいう知識を、孫子は思い出す。睡眠時に、周期的に勃起するとか、そういう記述を以前、何かの本で読んだことを思い出しながら、孫子は、そこにそっと指を這わせた。
 思ったよりも、硬くて……大きい……と、孫子は思う。
 これまで、香也のそれを直に触ったり挿入されたりした経験はあったもの、そういう時は孫子もたいがいにイッパイイッパイだったりするので、こうして理性的に検分した経験はこれが初めてであった。
『……これ……。
 こんなのが……わたくしの中に……』
 孫子は、自分でも気づかないうちに固唾を飲んで、指先で香也のものをまさぐり続けた。
 香也は、目を醒まさない。
『……触るくらいなら……構いませんわよね……』
 少々触っても、香也は目を醒まさない……ということに気づいた孫子は、ますます大胆になり、そろぉ……っと、香也のズボンに手を差し込む。パジャマのズボンはゴムでウェストをしめるタイプだったので、そうすることを容易だった。
『……あっ……』
 指先が、香也の分身に触れると、孫子は思わず手を引っ込めそうになり、慌ててその衝動を自制する。今、香也が起きたら、あまりにもきまりが悪い。
 孫子は心臓をばくばくさせながら、頭の中で香也の体に対する好奇心とこれから行おうとしていることのリスクを天秤にかけ、結局、そのまま続行することにした。
『……あの子だって……』
 楓だって、何度も香也とやっているのだから……自分だって、機会がありさえすれば、積極的に求めていくべきだ、というのが、この時の孫子の言い分である。少しでも強烈な印象を香也に与えておかなければ、あまた居る競争相手に取り残される、と。
 孫子自身の命名の元になった古代の兵法家の口述記録を愛読していた孫子には、「勝つためには、手段を選ばない」というテーゼが心理の奥深くに刷り込まれている。
 孫子は、まずは指先で香也の砲身を軽くたどり、
『……ゴムみたいな感触ですわね……』
 と、そこの皮膚について感じた後、まだ香也が目覚める様子を見せないのをいいことに、逆手に香也の分身を握る。
『硬くて……熱い。脈打っている……』
 と、そう感じた。
 こうして冷静に異性の性器を握るのは、孫子にしてもこれが初めてのことだ。これまでの香也との行為中は、孫子自身もかなりの興奮状態にあり、何が何だか分からないうちにはじまって終わっている、という感じだったから、「冷静に観察する」という精神的余裕はなかった。
 逆手に握って、いろいろ弄っているうちに、竿を握ったまま下の方に持って行くと、余った皮膚が移動し、先端が露出する、ということに気づいた。孫子にとっては、その「先端が露出した」姿の方が、どちらかとういうと、馴染みがある姿だ。過去、孫子と行為に及んだ時の香也の形状は、確かに先端が露出していた。
『……ふむ……』
 ここまでくると、孫子は、持ち前の冷静さを取り戻している。
 これは……香也のその部分に対して、ちゃんと検証をする必要がある……と、そのように感じた。
『……その為には……』
 香也に、服を脱いで完全に、全裸になって貰うのが……一番、望ましい……。




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「髪長姫は最後に笑う。」 第六章(161)

第六章 「血と技」(161)

 荒野はなおも茅のスリットに自分の分身を擦りつけてから、亀頭を、徐々に襞の中にのめり込ませていく。 とどめなく中から濡れてくる割に、茅の中の抵抗はいつもよりもむしろきつい。押し戻すような感触が強く、挿入するのにいつもよりも手間取った。荒野は、「茅のアソコって、こんなんだったっけ?」と疑問に思いながらも、指で、茅の入り口を横にそっと広げ、そこに亀頭を当て、ゆっくりと押し込んでいく。
茅は、壁に手をついて体重を預けながら、「……あっ。あああああっ……」と低く呻く。荒野からは、茅の後頭部と背中がうち震えているのが、見える。荒野は、茅の肩を下に押すようにしながら、ゆっくりと下から上へ向けて、茅の中を貫いていく。
 身震いしながら、
「……あっ。あっ。あっ……」
 と、切なそうな声を上げている。
「茅……きつい? 苦しい? 痛いの?」
 荒野は、そう尋ねる。
 と、茅は、
「……違うの……」
 と、首を振った。
「荒野が……前よりも、いっぱい……入ってくる……。
 みしみしって……茅を、押し広げて……んんっ!」
 荒野が根本まで挿入し終わると、茅はひときわ太い吐息をついて、がっくりと肩を落とす。その肩を、手でなでながら、
「茅のが、狭くなったんじゃないのか?」
 荒野は、そういった。
「……そんな……。
 何日かで……」
 茅の呼吸は、まだ荒い。肩で呼吸をしている。
「……荒野の方が……前より大きくなっているの……」
「……いや、そんな短い間にサイズ、変わるわけないし……」
 荒野は苦笑いしながら、そういう。
 荒野のが一回り大きくなるよりは、茅の収縮がきつくなる方が、構造的にもありうると思う。実際、根元まで埋めてから結合部を密着させているだけで、まるで動いていないのに……荒野のものをぴったりと包んだ茅の襞は、複雑な顫動を繰り返している。
 以前なら単調に締め付けるだけだった茅のものは、明らかにより複雑な反応をするようになっている。
「……そう……だな……」
 茅もそれは理解しているのだろうが、それを素直に認めるのが恥ずかしいのだろう……と、荒野は解釈した。
「痛くないんなら……。
 茅、動いていい?」
 荒野がそう尋ねると、茅はふるふると首を横に振る。
「もうちょっと……ぎゅっと、してて……」
 そういわれてみれば……確かに、荒野は背後から茅の背中に密着して抱きついている形だ。
「……いい……けど……」
 茅の要求は、理解できるのだが……いざ、挿入したまま動かない、ということになると、荒野は少し手持ち不沙汰なのだった。
 そこで、下半身は動かさずに、腕を茅の前に廻して、茅の前面をまさぐってみる。ウエストからあばらにかけて、指や掌で輪郭をたどり、形を確認していく。臍の回りはほとんど脂肪がないのに、腰回りはやけに弾力がある。痩せてみえるように見えて、腰から腿にかけては、茅も女性らしい曲線を持っている。
 お尻が大きい、というほどではないけど……。
『……前の時よりも……』
 後ろから挿入した時に、クッションになる厚みが増えている……と、荒野は実感した。
 荒野が体の前面をなでていると、くすぐったいのか、茅は身じろぎをするのだが。しかし、止めろ、とまではいわれない。
 荒野は、茅の乳房を両手の掌でそっと包み、感触を確かめる。
「……なぁ、茅……」
 荒野は、確認した。
「胸、一回り、大きくなっていないか?」
「少しづつ、育っているの」
 茅は、誇らしげな口調で即答する。
 荒野の方は、「育っている」という言い方がおかしくて、笑いをこらえるのに苦労した。
「そっか……お尻も大きくなっているようだし……」
 茅がばしゃばしゃとお湯を跳ね上げて荒野の足を踏もうとするが、当然、その程度の攻撃くらい、荒野は楽にかわせる。
「……ほら、そんなに暴れるなら……」
 荒野は、茅の中に深々と刺さっている部分を素早く引き抜いて、また突き刺す。
 すると、茅は、「ふわぁっ!」と声をあげて、全身を振るわせる。
 荒野は、茅の背中を抱きすくめて固定し、
「動くよ……」
 と、一方的に宣言して、実際に、激しく動かしはじめた。
 できるだけ大きな、直線的な動きで、茅の中を往復すると、そのたびに、茅は鳴き声をあげ、体から力を抜いていった。それまでの愛撫で敏感になっている、というよりも……。
『なんか……やっぱり、前より、感じやすくなっているよな……』
 荒野が動くたびに、大げさに見える反応を示す茅を、荒野は、比較的冷静にみている。快楽はあるのだが、それ以上に、茅の方が先に反応してしまったので、置いてけぼりになった気分だった。
 荒野が動くたびに茅は全身を振るわせ、すぐに足に力が入らなくなり、その場にへたり込む。
 当然、荒野も、茅の中から分身を引き抜いて、行為を中断しなければならなかった。
 湯船の中にへたり込んだ茅は、浴槽の縁に腕と首を乗せて、霞がかかったような顔をして、ぐったりしている。当然、腰まで届く髪もすっかりお湯につかっているわけだが、どうせすぐに丁寧に洗うことになっているので、茅も荒野も髪のことは気にしていない。
「……こう、や……」
 しばらく休んだ後、茅は、焦点の定まっていない目で、荒野を見上げた。
「凄い……の。
 今日の荒野……気持ちよすぎて……」
「茅の方が、敏感すぎるんだよ……」
 荒野は、苦笑いをしながら湯船に浸かり、ぐったりと力の抜けた茅の体を、自分の胸元に抱き寄せる。
 茅は何度か達したようだが、荒野はまだ一度も放出していない。荒野は別に、それが不満だとも思わなかったが。
「茅がその調子だと……少し休まないと、駄目だな……。
 このまま体と髪を洗って、続きはベッドでしよう。疲れたようだったら、そのまま寝てもいいし……」
「……いや、なの……」
 茅は腕を回し、さらに荒野に密着する。
「ちゃんと、しないと……ひさしぶり、だから……」
 そういって、茅は荒野の口唇を奪い、長々とキスをした。




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彼女はくノ一! 第五話 (244)

第五話 混戦! 乱戦! バレンタイン!!(244)

 翌朝、テンとガクはいつもの時間に目を覚ますと、真っ先にカーテンを開け、窓の外を確認した。
そして、「……わぁ……」と、歓声をあげかけたまま、途中で絶句してしまう。
窓の外は一面の銀世界、二人がはじめて目にした積雪だった。昨夜、降るだけ降ったおかげか、上を見上げれば見事に晴れ上がって、雲一つない抜けるような青空が広がっている。
 テンとガクは、顔を見合わせ、次の瞬間には窓を閉め、パジャマを脱ぎ散らかして、外出の準備をはじめている。
 着替えて、足音を忍ばせながら廊下にでると、パジャマ姿の楓と鉢合わせになった。
「そんなに急いで、どうしたんです?
 こんなに朝、早く……」
 楓はそういって、首を傾げる。
眠りの浅い楓は、ざわついた空気を感じて、いつもより数分早く布団から出て、様子を見に来た所だ。テンとガクが起きているのは別に不思議ではない。が、二人がスポーツウェアではなく、普段着であること、それに、妙に興奮した様子であることについては、不審に思った。
「……雪だよ、雪!」
ガクが、勢い込んで楓に訴える。まだ早朝、といっていい時間であることは失念していないらしく、興奮は隠せないものの、声は潜めている。
「……雪?」
「確かに、積もっていますわね……」
楓が怪訝な声をあげるのと、背後から孫子の声がするのとは、ほぼ同時だった。
「……五センチ以上、積もっているようですから……今朝のトレーニングは中止ですわね……」
 孫子がいい終わらないうちに、テンとガクのポケットの中が震動して、メールが着信したことを告げる。
「……本当だ……」
 ポケットから携帯を取り出し、液晶画面を覗きこんで、テンとガクは頷く。
「茅さんから。
 雪が降ったから、朝のランニングは中止だって……」
 茅から、その旨の同報メールが着信していた。
 楓と孫子はパジャマ姿だから、流石に今は携帯を持っていないようだが、それぞれの部屋に帰れば、同じ文面のメールが着信していることを確認できるだろう。
「……ぼくたち、朝ご飯の時間まで、近くで遊ぶつもりだけど……」
 テンは、楓と孫子に向かって、そういう。
「雪なんて、話しに聞いたことがあるだけで、実際にみるのは初めてだし……」
「わたくしは……簡単に朝食の下拵えをしてから、少し休みます……」
 孫子は、すかさず答える。
 これで、最近の孫子は何かと多忙だ。睡眠時間も、とれる時に取っておいた方がいい。
 朝食の時間までには、まだ少し猶予があった。
「……えっとぉ……」
 楓は、少し考え……。
「着替えてから、外に行きます……」
 ……結局、テンやガクと同じく、外に出ることにした。
 どのみち、この時間には目を醒ますような習慣になっているし、体にもそのリズムが刻まれている。今から無理に横になっても、さほど深く眠れるわけでもない。
 テンとガクはそのまま外に出て行き、孫子は台所へ、楓は自室へと向かう。「朝食の下拵え」といったところで、いつも簡単にすましていることを反復するだけだから、と、孫子は楓の協力をやんわりと拒んだ。
 それで、いちど自室に帰った楓が着替えて外に出ると、玄関から一歩踏み出したと同時に、顔に雪玉をぶつけられた。
 二月になってからようやく初雪が降るような地方だから、ベタ雪ではない。楓は、顔の前にとっさに腕をかざし、そこに、雪玉は当たってくだけた。あるいは、雪に慣れていないテンとガクが、強く握って固めなかったせいもあったかも知れないが、楓の腕に遮られた雪玉は、さらりと崩れる。
「……当たった、当たった!」
 とか騒ぎながら、テンとガクが、少し離れた場所で、飛び跳ねてはしゃいでいた。
「……こ……のぉ……」
 楓は身をかがめ、足下にある雪を集めはじめる。もちろん、テンとガクに投げ返すためだ。
 日曜の朝、早い時間……雪の上には、新聞配達の原付がつけたらしい、轍の跡、それに、テンとガクの足跡以外に、踏みつけられた形跡がなく、ほとんどまっさらの状態で十センチ近く積もっていた。
 三人は、笑いざわめきながら、雪合戦をはじめる。

 孫子は冷蔵庫にある食材を手早く切り分けて、水を張った鍋に入れ、後は火にかけるだけ、という状態にする。作り置きの総菜類をチェックし、香の物も包丁を入れて皿にもった状態で、ラップをかけて冷蔵庫に入れておく。炊飯器は昨夜のうちにタイマーをセットしているので、時間が来ればひとりでに炊きあがっている筈だった。
 一通りの仕度を終え、手を洗って自室へと引き上げる途中、香也の部屋の前を通りかかって、孫子はふと足を止める。
『……顔を、みるくらいなら……』
「別に……かまいませんわよね……」
 小声で独り言を呟きながら、何故か、孫子はきょときょとと周囲を念入りに見渡す。
 いうまでもなく、挙動不審だった。
 楓たち三人は外に出ているし、香也と羽生は、まだ熟睡している時間だから、当然のことながら、孫子自身以外に、家の中で起きている人間の気配ない。
「……お邪魔しちゃいますわよぉ……」
 やはり、小声で誰にともなく断って、孫子は、香也の部屋と廊下を隔てる障子に手をかけた。何故か、ほんのりと頬を染めている。
 すっ、っと、ほとんど音を立てずに障子を開き、素早く香也の部屋に入り、障子を閉める。
 何故こんなに「他人に見つかること」を警戒しているのか、孫子自身もよく分かっていない。
 孫子は、灯りもつけずに寝ている香也の上から、顔を覗き込む。カーテンを引いた窓越しに外から明かりが入ってくるので、薄暗いが香也の顔は判別できる。
 ……よく寝ている、と、孫子は思った。
『……あっ……寝癖……』
 反射的に手を伸ばし、香也の髪に触れる。
 そこで孫子は、ばっ、と伸ばした手を引っ込めた。
 別に、香也が身じろぎしたとか、目を醒ましそうな兆候があった、というわけではない。
 寝ている香也があまりにも無防備で……簡単に触ることが出来る、ということを意識した途端……何か、孫子は怖くなった。
 香也の方は、孫子の不審な行動に気づくことなく、相変わらず熟睡している。
『そう……少し、くらいなら……』
 しばらく香也の寝顔を覗き込んでいた孫子は、ごくり、と、固唾を飲んで、再び手を伸ばした。




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